佐藤先輩からのエスコート①


「あ、あの、そんな引っ張らないでください。転んじゃいます。」


「転びそうになったらあいつを呼べばいいんじゃないか?」


「なんでわざわざ高橋先輩呼ばなきゃいけないんですか!ここに佐藤先輩がいるのにっ、きゃあ!」


「はぁ。」


「あ、あの、ごめんなさい。」



低いとはいえ、ヒールをはいている私は先輩の歩く速さについていけず、転びそうになって思いっきり先輩の服をつかんでしまった。

まだ着替えてないから制服だけど、ワイシャツがクシャって、しかもため息つかれてしまった…。



「ご、ごめんなさい・・・。」


「いや、謝らなくていい。俺が悪い。頭に血が上ってた。」


「え?」


「でも衣装チェンジするんだ、早く歩いてもらわないと困る。」


「はい。できる限り頑張って歩きます…。」



いつも高橋先輩と言い合いしてるときとかは謝らないのに。

先輩もしかして、なにか悪いものでも食べた?それとも先輩の空似…なわけないよね。



「茉希、こいつのメイク頼む。」


「はーい。せっかく可愛くできたのに~。化粧落としちゃうのもったいないなぁ~。まぁ、次も可愛くなるからいいけどね!さぁ、まずはメイク落とさないと…。」


「あ、あの、さすがに自分でメイク落とします。」


「いいの、今回は私に任せて!これで化粧乗りとか決まるから!!」


「あ、はい。」



茉希さんの圧に前けて”はい”しか言えなかった。

そしてあれよあれよという間にメイクとヘアセット、そして着替えまでもが終わった。

あれ?さっきの赤ドレスの時とは違って、今回はおとなしい…?

そんな訳なかった。

メイクはゴールドがメインで今度は刺し色で赤がある感じ。

口紅がほんのり赤だったりチークも赤っぽい。

髪の毛はさっきとは違ってハーフアップにして、留め具がティアラみたいなやつがついてる。なんか髪の毛がキラキラしてるんですけど!?ナニコレ???

でもすごい、なんかお姫様みたい。



「完成!あ、また靴忘れてた~。これ履いてね。」


「ありがとうございます。」



今度の靴は、シルバーっぽい。てっきり白かと思った。ヒールはさっきより高めかな、転びませんように。

茉希さん曰く、白にすると見えないからシルバーで存在感出すんだって。

確かにパンプスだけだと派手に見えるけど、ドレスと合わせるとそんなに派手じゃない。



「どう?力作2個目~!!」


「さっきのとまた違ってすごく可愛いです!」


「でしょでしょ?」


「あの、髪の毛これキラキラしてるのって」


「あー、これ?これはね、マスカラのラメだけのやつを塗ったんだよ☆」


「へ?」


「髪の毛をキラキラさせた方が可愛いでしょ?これに光が当たるともっとキラキラするんだよ。ほら、ランウェイだし、いいでしょ~!」


「なるほど。」




さっきのランウェイで髪の毛がいまいちだったのかな?

ここでもすごいキラキラだから、ランウェイいいたらもっとキラキラしちゃうの?

大丈夫かな。




「終わったか?」


「終わったから入っていいよ~!」



タキシードを身にまとった佐藤先輩が入ってくる。

先輩は黒いタキシード。蝶ネクタイじゃなくてネクタイタイプのもあるんだね。

いつも制服を着崩してるせいなのかちゃんと来てるタキシード姿がかっこよく見える。髪の毛は高橋先輩と同じでオールバックだけど、あんまり固めてないから少しラフ?って感じがしてこれもまたかっこいい。



「いい。」


「でしょ?でしょ?でしょーーー!」


「うるさい。永祢、行くぞ。」


「え、あ、はい!」


「頑張ってね!」


「茉希さんありがとうございます!!」




さっさと歩き始めた佐藤先輩に頑張って追い付いて、聞きたかったことを直接きいてみる。




「あの、佐藤先輩。」


「ん?」


「相手役、私でよかったんですか?」


「あぁ。」


「そう、デスカ。」


「自分で聞いておいて固まるなよ。」


「だって…」




先輩の反応が薄すぎるけど、間を開けずに即答だったしでどう反応したらいいのかわからない…。

相手役が私でよかったってことと、ドレスはよかったってことはわかっただけでも嬉しいし、いいかな。




「そろそろ出番だ。」


「はい。」


「緊張するか?」


「緊張しますよ。こんな人の前に出ることなんてないですもん。」


「大丈夫だ。」


「…はい。」




佐藤先輩から差し出された手を握ってランウェイへと歩き出した。




-つづく-








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