高橋先輩からのエスコート②


「うわぁ、すごいいっぱい人がいるんですね。」


「そりゃ、イケメンコンテストを楽しみにしてる学生はいっぱいいるからね〜。」


「そんな大きなコンテストになんで私なんか出したんですか〜。緊張と罪悪感で倒れそうです…。」


「面白そうだったから‪‪?てか、ほらもう歩く番だから、終わったらまた話そう? 」


「わかりました。」



ランウェイはというと、名前を紹介されるからそれに合わせてお辞儀して、何か話したりするのは司会の人がしてくれるから私たちは歩くだけでよかった。

そもそも歩くのに必死で、司会の人が話してくれてる内容が頭に入ってこない…。

これで歩いてる時に質問なんかされたら転ぶ自信しかない。




「長祢ちゃん、ちょっと上見てみて?」


「今話しかけられると…あ、茉希先輩だ!」



ここからでも見える。

茉希先輩がめいいっぱい手を振ってくれてる。

ちょっと緊張がほぐれてきた。

ありがとうございます、茉希先輩!

ランウェイの先端まであとちょっとっ!



!?

急に高橋先輩が腰に手を回してきたと思ったら―



「ねぇ、真美ちゃん、僕と付き合ってくれない?」


「!?」


顔近っ!?!?そう思った瞬間、動揺した私はバランスを崩した…

ランウェイの先端でこけちゃうなんて最悪だ、と思ったときにはもう体が宙に浮いていて、高橋先輩にお姫さま抱っこされていた。



「え!?ちょ、何してるんですか!?」


「いや、こけちゃうと思ってついね。」


「恥ずかしいです!降ろしてください!!」


「そんな暴れると落っこちちゃうよ。ちゃんと降ろすから、大人しくしてて?」


「恥ずかしいんです…早くして下さい…。」


「わかったから、ね?」


「はい。」



観客から黄色い歓声と拍手が巻き起こってるけど、こっちは恥ずかしいよ…。

しかも、高橋先輩が私と付き合ってって言ってたけど、気のせいというか演出だよね?

うん、そうだよ。私なんかにそんなこと言うわけないもん。

冗談だとしても心臓に悪い。



その後は何事もなく、無事にお姫様抱っこから降りしてもらえて、無事戻ってきた。




「まさかお姫さまだっこされるとは思いませんでした…。」


「あはは、こけちゃうと思ってついね、でもいい感じに抱えられてよかった。」


「ありがとうございます。」


「いえいえ~。」




それから控室に戻るまでの間、さっきのランウェイで聞こえたことは何も触れてこなかったから、聞き間違えかな?

『ねぇ、真美ちゃん、僕と付き合ってくれない?』なんて、そんな都合のいい言葉は緊張をほぐそうとしてくれただけで、観客用の演出だよね。




「おい隆貴、さっきのあれはなんだ。」


「あれ、不機嫌?ただの事故だよ~。見てたでしょ?」


「事故に見えなかったが?」


「そんなことないよ、永祢ちゃんが転びそうだったのを抱えただけだよ?」


「ちっ、まぁいい。そういうことにしておいてやる。」




なんで2人はそんなバチバチしてるんですか…。

佐藤先輩はもともと無表情代表みたいな顔してるのに、今は完全に怒ってますって顔してるし、高橋先輩も笑ってるけど目が笑ってない…。

2人とも怖いんですけど。



「もいいい。次は俺の番だから、こいつ貰ってく。」



そういって佐藤先輩は私の腕をつかんで歩き出した。




-つづく-








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