第2話  恋は盲目からの・・・

“この間はありがとう!若いのに頑張ってる絶坊主ちゃんをナツコは応援してるよ!


寂しくなったらいつでもナツコに会いに来て!絶坊主ちゃんにはお姉さんがついてるよ!”


渡されたハガキにはナツコさんの綺麗な字でそう書かれていた。そして、店の名前が最後に書かれていた。


今だったらホステスさんの営業って思えるんだけれど、女に免疫のないウブな16才にとっては天にも昇るほどの嬉しさ。


Kさんに怒られる怖さとナツコさんから励まされた嬉しさと相反する感情がない交ぜになり訳がわからなくなった。


現実に戻った私は、恐る恐るKさんを見た。


「・・・ほどほどにしとけよ!」


Kさんは微笑んでいた。私はホッとして、ナツコさんからの文章を改めて読み返し、嬉しさに浸った。


後で聞いたら、あの日、ひどく酔っ払っていた私はナツコさんに寂しいと愚痴っていたそうだ。


そして、住所も何故か教えていたらしい。


あんなにつまらない、苦しいと思ってた日々も、ナツコさんのお陰でその日から薔薇色に変わった。


私は家賃、食費、光熱費などはかからなかったので、給料がまるまる使えていた。


とはいってもナツコさんの店は安くはなかったので、気軽には行けなかった。


5回目くらいに店に行った時。


その日は店も混んでいて、1人で行っていた私はボックス席ではなく、カウンターに座っていた。ナツコさんも忙しく動き回っていて、私の相手ばかりもしてられなかった。


タバコを吸いながら1人で飲んでいた。


「ただいま!」


客も帰っていき、ナツコさんが私の元に帰ってきた。


「オレも帰るわ。」


嬉しかったんだけれど、素直じゃなかった私は不機嫌を装っていた。そして、吸っていたタバコを自分の手の甲に押し付けて消した。


気を引こうとした事なんだけど、今思い出しても恥ずかしくなる。


「ちょっと、バカっ!何してるの!」


ナツコさんはオシボリで私の手の甲を押さえて、アイスペールの氷を取りだし冷やしてくれた。


23時30分・・・


ナツコさんの店は24時まで。


少し落ち着き飲んでいた私にナツコさんが2つ折りにした1枚の紙を手渡してきた。私は興味なさそうなフリをして、その紙を受け取った。





“店もうちょっとで終わるから、どっか行こ!”





ナツコさんの顔を見た。


今まで見てきた中で最高に可愛い笑顔だった。クールに決めようとしていた私だったけれど、我慢出来ずにニヤケ顔になっていた。


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