第79話 真相は

「それは、芹田先生が話していた通りだよ」


 颯天はやてからの質問される事を予測していたかのように、スラスラと言葉を返した雅人。


「2人して遅刻した原因は、停電によるアラームの遅れのせいって事なのか?」


 芹田の言葉を思い出し、確認する颯天。


「そうだよ。荒田さんや寧子ちゃんは疑っているようだけど、颯天は、そんな事を気にしないで欲しい」


「まあ、お前が言うなら信じるよ」


 颯天の返事でホッとした反面、後ろめたさを感じる雅人。

 

「良かった。良かったといえば、颯天が変身出来た事が何よりだ! しかも、白龍とは、スゴイじゃん! おめでとう! 努力して実を結んだ颯天のような親友がいて、誇らしく思うよ!」


「ありがとう、雅人! 多分、雅人や透子さんや芹田先生に支えてもらったおかげだよ! それが無かったら、僕はとっくに逃げ出していた! 恥ずかしいけど、正直言うと、皆が龍体に変身しているって初めて知った時、もうムリだと思って、恐れをなして逃げ出したんだ。それを芹田先生が説得してくれたから、現場に戻れたんだ」


 決まり悪そうな表情で話した颯天。


「そうか、逃げ出したくなっても無理も無いさ。俺も、初めて目の当たりにした時にはビビったから! けど、戻って向き合えたおかげで、今の颯天が有るんだ!」


「ホントにそうだな! 憧れの透子さんと、対となる立場の白龍に変身出来て、もう言う事無いよ! ずっと努力して来たのが、やっと報われたと思ったよ!」


 職務で透子と行動出来る嬉しさで有頂天な颯天。


「ずっと憧れていた新見さんに、誰よりも近い位置にいる事が出来て、良かったな!」


「そうだよな~、透子さんに大接近出来たどころか、仕事上のパートナー的な立場にまでなれて、願ったり叶ったりなんだからな! こんな僕なんかで、ホントにいいのかって気になる」


「何言っているんだ! 颯天は、誰よりも努力家で、新見さんとは唯一釣り合う白龍という偉大な存在なんだから、自信持てよ!」


 颯天を褒めながら、自身は透子とは釣り合わないと、改めて認識させていた雅人。


「うん、褒められ過ぎて、なんか照れるけど、ありがとう、雅人!」


 頭を掻きながら、恥ずかしそうに笑った颯天。

 素直に喜べる立場にいる颯天が、羨ましく思えている雅人。


「ところで、ペア龍体の新見さんと颯天は、どちらが先に覚醒したんだ?」


「透子さんだと思われているかも知れないけど、実は、僕なんだ! 透子さんがエイリアンと思っていたダミーに襲われてた。助けたかったけど、もうダメかも知れないって諦めかけた時に、気が付いたら、自分の体が違う形状になっていた事に気付いたんだ。その後、僕が危なかった時に、今度は透子さんが僕を助けようとして、変身出来ていた」


「そうか……お互いがお互いを守ろうとした時に、発動したという事なのか。颯天と新見さんは、ペアだから、特にその力が強かったのかも知れない」


 雅人にそう言われて、覚醒の鍵となったのは、自分の為ではなく、相手を救おうとする気持ちなのだと確認させられた颯天。


「そう言われてみると、確かに、自分の為にいくら頑張っても覚醒出来なかったのかも知れない。透子さんを守りたい気持ちが強かったからこそ、覚醒が叶えられたのだと思う。僕には、やっぱり透子さんが必要なんだ!」


 そんな風に遠慮なく堂々と宣言出来る颯天の様子で、親友として嬉しい反面、恋敵として辛酸をなめるような思いにさせられた雅人。


「お互い必要とし合っている二人には、荒田さんでも割り込む余地無いよ!」


「そうかな? あっ、そうだ! 念の為の確認だけだから、そんなに深く考えなくていいけど……例えば、雅人は、透子さんが相手だとしたら、幕井さんとのカムフラージュ交際解消を考えたりするか?」


「新見さんか……確かに、解消したくなるくらい魅力的な人だからな」


 雅人がサラッと言った言葉の内容に、驚かずにいられない颯天。


「えっ、雅人、そうなのか!?」


「冗談だよ。あんまり颯天が幸せそうに惚気のろけて来るから、冗談の一つ二つ言いたくなった」


「な~んだ、焦ったじゃないか!」


 ホッとして、胸を撫でおろした颯天。


「あのさ、颯天、話しておきたい事が有るんだ」


「何だ? 深刻な事なのか?」


「深刻といえば、深刻かも知れない。俺が変身出来るようになってから、龍体のフェロモンなのか、名前の言霊なのか分からないけど、やたらと、エイリアンだけでなく、女性にもモテるようになったんだ。変身してない時くらい、制御出来ればいいんだけど、その方法も分からないし……」


 その話を聞いて、やっと、千加子や季代のような男に目もくれないタイプの女性にまで、雅人が好かれている理由を飲み込めた颯天。


「そうだったのか……確かに、お前、同期だけじゃなく大和撫子隊にまでモテている感じだし。本命だけならともかく、やたらとモテまくるのも困るだろうな」


 本命という言葉で、思わず透子を思い浮かべた雅人。


「こんな状態だと、本命がいても難しいだろう? だから、俺は、寧子ちゃんとのカムフラージュ交際くらいに留めておくのが無難と思っている」


「それでも、本命の人が現れた時は教えてくれよ! 僕も応援したいからさ!」


 自分と透子だけが良い雰囲気になっているのは、引け目を感じていた颯天。


「そうするよ、ありがとうな、颯天」


 颯天には、そう答えつつ、颯天に話す事は無さそうに思えた雅人だった。

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