第62話 敵対心むき出しの寧子
雅人とのやり取りがおもうように進まず、気が立っている様子で視線を雅人から移した寧子。
「それよりもね、私、さっきから無性に気になっている事が有るの! 芹田先生は恩師だから、ともかくとして、どうして、ここに私達訓練生と明らかに違うオバサンが混じっているんですか~?」
透子を煙ったそうに見てから、敵対心
(急に何を言い出すかと思ったら……どうして、そんなヒドイ言い方を透子さんに向けてするんだろう、幕井さんは?)
「オバサン……って」
寧子の口ぶりには、言われた本人の透子はもちろんの事、颯天も聞き捨てならなかった。
「幕井さん、そんな言い方は、新見さんに対して失礼じゃないか?」
「失礼かな~? だって、この人も今まで変身出来てなかったなら、別に私達にとって先輩ってわけでもないし、ただの年増女ってだけでしょう?」
透子の外見上、ライバル視せずにいられない寧子は、ズバズバと毒舌を並べた。
数日前にも、千加子にも散々悪態をつかれ、それ以前からも周囲から言われ慣れていた透子だったが、颯天だけではなく、芹田や雅人もいる前での嫌味な発言には、忍びない様子だった。
「寧子ちゃん、新見さんと俺らは三歳しか違わないし、それくらい大した差でもないから、その発言は撤回しなよ」
自身が所属する、Aグループの上司である透子を
「ううん、雅人君は何も分かっていない! 女の三歳は、感覚的には男の十歳差以上違うの! そんな人が、私達訓練生に混じってここにいるなんて、私にしてみれば、違和感しかないんだけど!」
透子と比べた時の自分の若さだけでもせめてアピールしておかなくては、自身に不利になると
「でも、新見さんは、龍体としての僕の大事なパートナーだから!」
(ホントは、龍体としてなんて言葉は付け加えたくなかったけど……でも、やっぱり、透子さんの気持ちを確認してからでないと、龍体の時以外のプライベートでもなんて事は、
「そのオバサンが、宇佐田君の大事なパートナーっていうなら、その人、荒田さんからもフラれて優柔不断そうになっているんだから、雅人君に色目使わせないように、しっかり繋ぎ止めておいてね!」
「雅人に、色目……って?」
寧子の発言の意味を把握出来ず、雅人と透子の方に視線を向けた颯天。
「それは……」
透子が弁解をしようとしたのを遮るように、寧子が言葉を重ねて来た。
「宇佐田君は知らないから、そんな
(シニア施設……? そういえば、透子さんがさっき、芹田先生に話を触れられていたけど。それに関係していたのか? 二人して夜勤明けで遅刻って、そこで何か有ったって事なのか……?)
自分の親友である雅人と、これから交際を申し込もうとしている透子の昨夜の行動が気になる颯天。
「どういう事なんだ、雅人……?」
事情を聴くにも、透子より、雅人の方が尋ねやすかった。
「心配するなよ。寧子ちゃんや颯天が勘繰っているような事は、何も無かったから」
とりたてて動揺する様子も無い雅人の言葉に、疑わしいところは無さそうに思えた颯天。
「本当にそうなのかしらね~?」
雅人の言葉を鵜吞みに出来ない様子の寧子。
「本当よ!」
寧子を納得させようと、強く言い切った透子。
(透子さんの方は、いつもより取り乱しているような感じがしないでもない。気のせいではない……? 透子さんが、好きな人は、てっきり芹田先生だと思っていたのに、この
「まあまあ、そう皆で疑心暗鬼になるでない! 昨夜は、この敷地内の一部が停電になっていたんじゃ。ちょうどシニア施設の辺り一帯が、夜間に2時間ほど停電になったのじゃからな。仮眠室のアラームは、壁に備えついておるタイプだから、二人の遅刻は、その停電のせいで、アラームが2時間遅れたせいじゃろ! 二人が悪いわけではないから、責めるのはやめたまえ!」
芹田が、二人揃っての遅刻の原因を分かりやすく伝えた。
「停電、そうだったのか……だったら、二人で遅刻しても仕方無い」
(なんだ、運悪く停電したから、たまたま二人で遅刻しただけで、別に二人には疑わしい事が無かったんだ!)
ホッとした颯天と、まだ疑わしい視線を送り続けている寧子。
「いくら芹田先生にそう言われても、私は、信用しない! だって、この人は、こんな男好きする外見している魔性の女タイプだもの! 芹田先生だって、つい庇ってしまいたくなるのよ! 宇佐田君も、そんな風に、言われた事をすぐ鵜吞みにして安心なんかしない方がいいわ!」
(こうして、ちゃんと芹田先生が状況を説明してくれたのに、まだ幕井さんは疑ってかかっている……可愛い顔をしているけど、かなり執念深そうで、カムフラージュ作戦とはいえ、幕井さんを相手にする雅人も、何だか気の毒だな~)
雅人に対し、同情の色を示した颯天。
「幕井君、わしは別に新見君じゃなくても、誰に対しても
いつもの如く、大声で愉快そうに笑った芹田。
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