第53話 青白い炎
イメージしながら念じ続けると、白龍の喉の辺りに、何か痛いほどの熱い流れを感じた颯天。
(今なら、出来る!! 僕の身体から作り出すのは、高温の青白い炎だ! この炎は、そこのエイリアンを目がけて放たれる!)
その流れは口元まで来ると、メラメラと揺れる青白い炎となり、一体のエイリアン目がけ大きく長く伸びた。
(そうだ、エイリアンの身体を覆うまでは、炎は尽きる事無い!)
その炎は、エイリアンの巨体のどこのパーツも漏れる事無く包み込んだ。
(この高温の炎は、瞬時にエイリアンの身体を
「グガガガガガガガー」
体表を覆い尽くす炎の熱さに、もがき苦しみ、颯天達が聴いた事の無い悲痛な声を上げたエイリアン。
(そして、その浸食した部位を瞬く間に灰と化す!)
だが、そのエイリアンの呻き声も長くは続かず、炎に包まれ十秒も経過しないうちに、あれほどの巨体が灰と化していたのだった。
「凄いわ、宇佐田君……!」
(出来た!! 僕に、白龍の得意技を操る事が出来たんだ!!)
「だけど、灰が、ゴホッゴホッ……」
「吸い込んでしまったら良くない、ゴホッゴホッ……」
エイリアンを焼却した灰がシェルター内で舞い上がり、龍体となっている透子と颯天の呼吸時に入り込んだ。
「ゴホッゴホッ……エイリアンの灰なら、多分、有害なはずです! ここから逃れないと、危険です!」
息苦しかったが、透子に伝え、この場を離れようとした颯天。
「いいえ、待って! ゴホッゴホッ……多分、何とかなりそうな気がする!」
透子は、それまで透明化していた黒龍の身体を現わした。
「何とか……って、ゴホッゴホッ……透子さん?」
「黒龍の技は、確か、浄化というのも有ったはずだから……」
透子は心の中で、灰が、このシェルターから消え去り、地球から離れた宇宙空間に移動するよう念じた。
「あれっ、灰が……どこに……?」
透子が念じるや否や、シェルター内に舞い上がっていた灰が一瞬にして消え去り、澄んだ空気が戻った。
「浄化出来ている……? もう大丈夫そうです! 透子さん、さっきの灰はどうしたのですか?」
「存在していた物をこの世から、全く消え去らせる事は出来ないの。よく分からないけど、私の予想通りなら、灰を原子の状態に分解して、エイリアンの星に戻したような状態かも?」
(あの灰を原子の状態に戻すとは……その状態になってしまったら、あのエイリアンでも、すぐに再生なんて出来ないはずだ! 大丈夫だ! 僕が炎で焼いて、透子さんが分解して移動させる! 僕と透子さん、この二体の龍の技を合わせたら、もう、どんな敵が迫って来ても、負ける気がしない!)
自分達の龍体が為せる技に、陶酔している颯天。
「黒龍の浄化って、そういう事なんですね! 本当に陰陽みたいで、僕ら二体が揃えば、鬼に金棒ですね! 」
「本当に、私に、こんな技が使えるなんて……嬉しい! これなら、例え私達だけだとしても、生き延びる事が出来るわね!」
長年抱き続け、叶わなかった夢をやっと手に出来た透子も、感無量な想いを味わっていた。
(透子さん、すっかり能力が開花して、良かった~! 隊員達が皆いなくなって、今更だけど……もしも、まだ無事な隊員達がいたとして、それが、仕切るような荒田さんがだったとしても、もう、透子さんが左遷させられる話なんて、帳消しになるに違いない!)
「透子さん、本当に良かったです! でも、僕らが生き延びる為には、あともう一体のエイリアンも始末しないと!」
相方が灰にされて消えたのを目の当たりにしていた、もう一体のエイリアンは、恐れをなした様子で、先刻のように、自ら攻めて来ようとはしなかった。
「どうしたんだ~? へっぴり腰のエイリアン!」
立場が逆転し、面白がって颯天が挑発したが、エイリアンは、もう挑発に乗る事無く、尻尾を見せて退散しようとした。
「なんだ? さっきまでとは随分違うな! やっぱり仲間を失ったから、弱気になっているのか?」
「でも、エイリアン達に情けを見せてはダメよ! 私達だって、大切な仲間達を沢山失ったのだから!」
「そうですね、シェルターの外や特殊フィールド内にだって、まだエイリアンの仲間達が沢山いるかも知れないですし、取り敢えず、このへっぴり腰から何とかしないと!」
颯天がエイリアンの方に白龍の身体を移動し、もう一体にしたようにイメージしながら、青白い炎の発火を念じようとした時だった。
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