第42話 守りたい女性
「グガー!」
「ウガー!」
エイリアンの唸り声から、少なくとも二体はシェルター内で接近していると感じた
「ここに隠れていたら、見付からないでしょうか?」
ヒソヒソ話をするくらいの声音で颯天が話した。
「その保証は出来ないわ。視界に入っていないはずだけど、もしも、このエイリアン達が壁を透過させるような視力を持っていたら、見透かされてしまうし。あと、嗅覚が鋭い場合も見付かってしまうかも知れない。こんな風に小声で話しているのも、聴力が特化されているようなエイリアンだったら、漏らさず聴こえてしまっているかも知れない……」
可能性を上げながら、透子の腕の脈動が、先刻よりも早くなっている事に気付いた颯天。
(暗闇も狭い場所に閉じ込められるのも、平気と言っていた透子さんが怖がっている……けど、怖くても当然なんだ! これまでに無かった事態なんだから! 龍体に変身していた隊員達だって、皆、こいつらに
「この場から、生き延びる事が出来たら、僕は、今まで以上に真剣にトレーニングして、早く龍体に変身出来るようになって、皆の
「そうね。そうしなかったら、殉死してしまったかも知れない隊員達に面目無いわ。もしも、2人だけが生き残る事が出来たら、必ず、私達でそれを実行しましょう」
「はいっ、約束します」
暗闇の中、微かに見えている透子の顔の輪郭の方を見つめながら強く誓った颯天。
「こんなに話していても、エイリアン達が、ここに僕らが隠れている事に気付いていないという事は、少なくとも地獄耳のエイリアンではないという事なんですね」
「分からないわ。もしかしたら、もう見当は付いたから、私達には油断させておいて、自分達に都合の良いタイミングで、襲撃をしかけようとしているだけなのかも知れない」
安堵している颯天に対し、警戒心の強そうな透子。
(透子さんの言う通りだ! 僕はつい、自分に都合良く楽観的な解釈ばかりになってしまうのに、透子さんは、スゴイな! いつだって、冷静に判断出来て! 呻き声とか足音がしないからって、あのエイリアン達がどこかへ行ったわけでもないのだから、安心出来ないんだ! 第一、あいつらは、飛んでいたじゃないか! 最初に遭遇した時だって、足音や振動が有るわけではなくて、あの羽によって起きる強風が有ったからだった! こんな風に壁の内側に潜んでいると、あの時みたいな風なんかは感じられないし……)
「あんな翼の威力の強そうなビースト型エイリアンが現れた事って、今まで有りましたか?」
透子なら、これまでに似たような形状のエイリアンに、遭遇して来た経験が有るのかも知れないと思い、尋ねてみた。
「攻撃を仕掛けて来るエイリアンには、ヒューマノイド型は見られなくて、
「そうですか……それじゃあ、しばらく、このまま様子を観た方が良さそうですね」
「窮屈だけど、仕方ないわね。見付かって殺される事に比べたら……」
仕方ないという透子の言葉が、颯天の心に何度も
(透子さんにとって、この状況は、仕方ないけど、エイリアン達に殺される事に比べたらマシな感じに受け止められているんだ……僕は、こんな状況に透子さんと二人でなれた事に、今までの人生上のどんな時よりも幸せを感じられているのに! だけど、それは、僕だけの一方的な片想いって事を証明されている状態なのかも知れない……透子さんは、こんな状況になるとしたら、僕なんかより、目白さんと一緒の方が良かったと思っていそうだ。そんなの当然だろうけど……あんな風に、透子さんの口から、その言葉を出されてしまうと、やっぱり、かなり
「何とか、あの強風をおこす羽ばたきの音を聴き取れると、大まかにでも敵の位置が分かるのだけど……」
颯天の気持ちなどお構いなしに、エイリアン達の動向を気にかけている透子。
(……そうだ、今は、透子さんの言葉の裏をいちいち気にして、落ち込んでいる暇なんて無いんだ! 他の隊員達の生存も分からなくなっている今、僕なんかでも、もっとしっかりしなくては! 透子さんを不安がらせないように、私情じゃなくて、モンスターの方を気にかけてなくてはならなかったのに!)
「僕は、左方向を気にしますので、新見さんは右方向をお願いします!」
(透子さんの方が先輩だからって、全てオンブに抱っこではダメだ! 僕にだって出来そうな事を発言して、透子さんに協力しなくては!)
「ありがとう、そうしてもらえると助かるわ!」
颯天の指示に、頼もしさを覚えたような声音の透子。
(良かった! 目白さんだって、もう生き延びているかどうか分からないんだ! 生き延びていたとしても、重傷を負って、僕らを助けに来られない可能性の方が強い。だから、目白さんに変わって、僕が透子さんを守らないと!)
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