第41話 ふたりで潜伏
(ダメだ! エイリアン達がやって来た時に、死角になりそうな場所なんて、ここには無い! ……いや、それは、ここが初めての僕が勝手に決め付けているだけで、実は、目立たない場所に、秘密の隠し扉のような構造が有るのかも知れない。透子さんなら、何か知っているかな……?)
「新見さん、このシェルターのどこかに、僕らが隠れられる場所は有りませんか?」
「無い事は無いのだけど……」
透子は一瞬、
「有るのでしたら、そこに案内お願いします!」
「有るに有るけど……そこは、元々、人が隠れる為に作った場所ではなくて、武器の収納スペースだから、かなり狭いのよ。二人も隠れられるような空間が有るかどうか……」
透子が
自分一人なら余裕で隠れる事が出来そうな場所だったが、二人で、特にその相手が異性となると、そのような狭い場所に潜むには、暗闇の中で、かなり身体を密着させなくてはならず、抵抗が有った。
「そんな事を考えている余裕なんて無いです! エイリアンは、もう近くまで来ているのですから! 取り敢えず、早く案内して頂けますか?」
颯天の語気に押され、透子はスタスタと小走りしてから、立ち止まった。
パッと見た感じでは、武器の収納スペースなどが有るとは全く分からないような壁面をポンと叩いた。
すると壁の一部が鈍い音を立てて持ち上がり、2組の自動式散弾銃を収納して有るケースが現れた。
そのケースごと主導で押し下げると、人が潜む事も出来そうなほどの空間が出来た。
「このシェルター内で、隠れられるとしたら、ここしか無いわ。ただ、見ての通り、一人で入るのが丁度くらいの狭い場所だから……」
「確かに、これは狭いですね……僕は何とかなりますから、新見さんが入っていて下さい!」
その狭さを目にした時点で、透子があれほど躊躇っていた意味が、やっと分かった颯天。
「いいえ! 私はこれでも一応、散弾銃を扱えます! 宇佐田君は後輩なのだから、ここは宇佐田君が隠れるべきです!」
「ダメです! 僕は男なので、レディファーストを守らないと!」
「そんな事を言っている場合じゃないわ! 私は、先輩という立場だから、後輩を守るのは当然の事です!」
「当然というのは、女性を守るのが男性の務めという事です!」
何度言い合っても
「言い争っている間に、エイリアン達が来てしまったら、一巻の終わりよ! 分かったわ、何とか身体を縮ませて一緒に入りましょう!」
「あっ、はい! この場合くらいは、レディファーストを守らせてもらって、新見さんからどうぞ」
あくまでも、男としての立場で、女性に譲る姿勢を崩さない颯天。
「ありがとう。それじゃあ、お先に」
胸の高さほど有ったが、両手を付いて身軽にひょいと身体を持ち上げ、壁の内側スペースに潜んだ透子。
(さすがは、透子さん! 日頃から鍛えているだけあって、動きがすごくスピーディだ!)
「照明は無くて、中は暗いから気を付けてね、宇佐田君」
「はい、気を付けます……」
狭いスペースなだけに、先に入った透子の身体にぶつかったり踏んだりしないよう気を付け、身体を中に入れた颯天。
そこは立っていてもきつかった。
座るには膝を曲げて上肢と下肢を付けてやっと座れたとしても、今度は、立ち上がる事さえも困難な狭さだった。
当然、右隣にいる透子の肩と腕がくっ付かずにはいられない状態に。
颯天が身体を何とか収納させると、透子の方から、フワッと優しいホワイトフローラルの香りが漂って来た。
(あ~、いいな~! 透子さんにピッタリの清潔感の有る甘い香りがしてくる! 何だか夢見心地になりそうだ! 今は、そんな場合じゃないって分かっているはずなのに、浮かれずにいられなくなってしまう! だって、今、透子さんの肩や腕が、ピッタリと僕に寄り添っている! しかも、これが夢じゃなくて、現実だっていうんだから! 例え、エイリアン達に見付かって殺されるオチだったとしても、興奮せずにいられない!)
透子が、上に上がっていた壁の一部を元通りに下げると、途端に、今まで見えていたものは全く視界から消え、暗闇になった。
「暗いですね……」
「目が慣れるまでは、特にね」
(暗いけど、大好きな透子さんが、こんなにも近くにいるなんて! こんなシチュエーションを作ってくれたエイリアンに感謝したいくらいだ! 僕の片側に付いている透子さんの肩や腕……本当に
触れている肩から腕の部分で、透子の身体についてイメージを膨らませる颯天。
「宇佐美君は、この状態、大丈夫? 苦しくない?」
「僕は、大丈夫です! 新見さんは、暗所とか閉所の恐怖症ではないですか?」
透子がここに隠れるのを躊躇ったり、自分に譲ろうとした理由のひとつに、もしかするとそれが有るのではと勘繰った颯天。
「大丈夫よ。お化け屋敷とか行っても、私は、騒いだり、相手に抱き付いたりするようなタイプじゃないわ」
そう言い切った事により、透子が颯天と二人で入るという状況について躊躇いを感じたのだと気付いた。
(それは……僕を男として意識しているから? それとも、もう目白さんとお付き合いしているから、こういう状況で、僕の隣にいるのは気が引けているのかな?)
「取り敢えず、エイリアン達がシェルター内に入って来る前に、隠れる事が出来て良かったです……」
「しっ……」
話を続けようとしていた颯天を遮った透子。
「グガー!」
エイリアン達の雄叫びの大きさからして、先刻よりもかなり接近しているのを颯天の耳にも確認出来た。
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