第20話 千加子の見解
夜の運動場で、2人で会っている
「浅谷さん、そんな風に勘違いしたら、新見さんに対して失礼だよ! 僕達は、逢引きしていたわけではなく、さっき、偶然会っただけなんだから!」
それ以上、透子に侮蔑の言葉を浴びせないよう、千加子を戒めた颯天。
「さっき、偶然会ったにしては、やけに親密そうに2人でベンチに座っているじゃない? 私に、そんな取って付けたような言い訳が通じると思っているの? こういう種類の女性はね、実力が無いのを分かっているから、生き残る為、男性に依存しようとしている寄生虫みたいな存在なのよ! 私は、新見さんとか、幕居さんとか、そういう外見だけで優遇されて、ここにいられるような感じの人種が大っ嫌いなのよ!」
千加子の吐く言葉の一つ一つが胸に突き刺さり、物憂げに俯いた透子。
「なんて事を言うんだ! 新見さんは、浅谷さんが思っている感じの男性隊員をたぶらかすような人じゃないし、男性隊員達に依存なんかしていない! とても努力家なんだ! 今だって、ここに1人でトレーニングに来ていたのだから!」
「努力家? 努力したところで、時間の無駄、所詮、未覚醒者は未覚醒者のままよ! 地球防衛隊本部も、こんな覚醒する見込みの無い隊員に、いつまで無駄にお金を払い続けるのかしらね? 私がトップ就いた
耳を塞ぎたくなるような話を千加子から一方的に聞かされ、いたたまれない様子の透子。
透子を庇おうとしても話が通じず、トップに君臨するなど豪語している千加子を異物のようにすら思えている颯天。
「いくら優秀でも、浅谷さんのような考えの人ばかりだったら、地球防衛隊は成り立たないよ! 浅谷さんは、もっと、協調性を磨くべきだと思う」
「たかが宇佐田君風情が、どうして私を諭そうなどと? 笑わせないで! 私は、第二の
彼女を目指すのみならず、追い越すと言い切った千加子。
「確かに、浅谷さんは僕と違って有能かも知れないけど、先輩隊員達に対する傲慢過ぎる態度は、改めた方が良いと思う」
同期の訓練生として、千加子の言動を見過ごせない颯天。
「宇佐田君は、何も分かってないのね! 今日の古典の授業、しっかり起きて聞いていた?」
「古典の授業? そういえば、最初はつい居眠りしていたけど……」
(浅谷さん、いきなり、古典の授業の話なんて、どうして振って来るのかな? あの授業で、1人目立って発言していた事をここで自慢したいとか?)
突然、今日の研修内容の話に飛び、頭の中が混乱した颯天。
「そうでしょうね、じゃないと、そんな反応では済まされないものね! あの龍体文字の文章は、とても大切だと言われていたのに、宇佐田君は、どうやら、まだ把握出来てないようね?」
(把握……って? 芹田先生も、あの内容がすぐに理解出来なくて当然だと、高らかに笑っていたけど。もしかして、浅谷さんは解読出来たのだろうか?)
「あの文章の意味、浅谷さんは分かったのか?」
大切な事だと授業で説明されていた事を思い出し、興味津々に尋ねた。
「当然よ! なにしろ、私なのだから!」
ますます横柄さが露見し出した千加子。
「あの5色の色の話に、浅谷さんが関係しているのか?」
「まだ分からないの、宇佐田君? ホント、呆れさせられるわね! あの5色は、オーラの色に決まっているじゃない!」
「オーラ?」
「オーラ?」
颯天のみならず、ずっと俯いて2人の話を聞いていた透子も驚いて思わず、千加子を見上げ、その言葉を口に出していた。
「えっ、もしかして、新見さんも、ご存知じゃなかった? もう、呆れた~! どこまでニブイ人達なのかしらね!」
千加子の見解に、呆気に取られていた透子を再び蔑む言葉を発した千加子。
「オーラって、あの、人の周りを漂っていて、その人のその時の感情とかによって色が変わるというあれか? えっ、浅谷さん、オーラが見えているのか?」
「何、言ってるのよ? いくら私がsup能力が覚醒しまくっているからって、まだそんな超能力的なものは無いわよ! オーラと言っても、感情とかに左右されるようなものじゃなくて、もっとその人本来が有しているような根本的なオーラの色の事よ!」
「はぁ?」
オーラ自体は分かったとして、それと古典の授業の内容との繋がりを理解出来ないでいる颯天。
「いちいち説明しないと分かってもらえないようね! だから、つまりね、古来は黒いオーラの持ち主が最強だったけど、世代交代で、その後今までは、緑のオーラの持ち主が統べていたのよ! それが、赤いオーラの持ち主が現れたのが徴候となって、白いオーラの持ち主と黒いオーラの持ち主が現れ、これからは彼らの時代になるという預言書なの!」
千加子の言わんとしている事を漠然とだが、理解出来た颯天と透子。
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