エピローグ 元・お疲れアラサーは異世界で元気にモフモフしてます!

 拝啓、日本のお父さん、お母さん。お元気でお過ごしでしょうか。


 私は本日も、異世界で竜をもふもふしています。


「うぎゅん」


 おっと、力加減が弱いとのことらしい。じゃあちょっと本気出しちゃおうかな! 今まで指で押していた所を、いざ尋常に――食らえ、肘押しじゃあ!


「うきゅ~♥」


 するとたちどころに竜が溶ける溶ける……ふふふ、異世界来たばかりで撫でるしか芸のなかった私ではこの強圧オプションはできなかったのだが、今の私はひと味違うのじゃよ。ここじゃろここ。うりうりうり。


 もちろん、ソフトタッチご希望のお客様にはちゃんとそのように対応いたしますとも。


 このもふ様はどうやらお腰周りを重点的にやってほしいお方の模様。ふむ、ではいったん降りて……。


「ショウくん、あれをください」

「あれですね……はい!」


 というわけでアシスタントから受け取りたるは新兵器! 特別製ドラゴン用孫の手なりー!


「やっぱりどう見てもデッキブラシなんだよなあ」

「ちょっと、気分盛り下がること言わないでくださいませんか!? 特別製の孫の手って言ってるでしょ!」

「はいはい」


 バンデスさんの茶々入れに憤慨すると、奴は笑いながら姿を消した。しょうがないじゃん、竜の皆さんおっきーんだもん! とりあえず実用性先行で作った試作品なんだよ! この後デザインはたぶんなんとかするんだよ! あとおじさんはちゃんと竜舎の清掃に励んでなさい!


 なんであれ、これでごしごしこすってあげると竜は「そうそうそれそれ」って顔になるから正解なのだ。まあただ、これだけだと毛並みがあんまり綺麗な感じに仕上がらないので、最終的には私の手でやはりならしていくんですけどね。


「サヤ!」


 お、ブラシがけも終わってちょうど手で綺麗なもふもふを作り終えた頃、ランチのお声がけが。

 はーい終わったよー、とぽんぽん叩いてあげれば、竜は大きなあくびをして去って行った。うむ、私もお昼休憩に入ろう。


「サヤ様、今日はサンドイッチだけではないですよ」

わたくしも手伝いましたのよ!」

「そうですね、お嬢様は並べる所だけ頑張りましたね……」


 マイアさんだけだった女性陣もこうやって並ぶと随分華やかだ。まあイケメン祭りはそれはそれで眼福だけど、やっぱり美少女と美女が並ぶのも……いいね。清涼剤。エメリア嬢は竜のお世話用の簡素な装備となっているが、縦ロールポニテがとても素敵。


「サヤ、今日も励んでいるな」

「アーロンさん!」


 お、今日は団長さんもご一緒の日だ! 団長は忙しいけれど、仲直りして以来積極的に一緒にいる時間を取ってくれる。私もなんか、変な遠慮をするのはやめにした。

 まあだって、嬉しいんだもんな、結局。一緒にいて、彼が私のこと気にかけてくれると。


 ……す、少なくとも嫌われてはないと思うんだよ……? まあ、その、別にだからどうしようってわけでもないんだけど。

 友達以上――そこから積極的に進みたいって程じゃないけど、ほんの少ーしだけ夢見るぐらいなら。日々に張り合いが出るし、いいじゃない?


「無理はしていないか?」

「そちらこそ、またオーバーワークしていませんか? お昼が終わったら、ちょっと見てみましょうか」

「休憩時間なんだろう? 休んでくれ」

「休憩時間ですから、好きなことをしますとも」


 ――お父さん、お母さん。これが異世界における平和ながら充実した日々です。時々疲労を感じることもあるけど、なんていうかな……ただの徒労感じゃなくて、労働の喜びの重み的な?


 まあ、そんなこんなを、一言でまとめると。

 モフモフと美男子と美女に囲まれて、とっても幸せー!

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