私……何かやらかしたな?(確信)
さて、振り返ってみれば、赤さんもふもふというレアもふに続き、巨もふ様という超絶レアもふとまでエンカウントしてしまった。
しかもただ一瞬すれ違ったなんてものではない。我々は一夜を共にしたのだ。
……いや、語弊ある言い方だけど、一緒に寝るなんて、普通出会ってその日にやっていい親密イベントじゃないですよね的なね、こう、ニュアンスをね、受け取っていただければ。
私の異世界生活、大体常に楽しいことばっかなんだけど、今回特にこの世の幸せの頂点極めてて、この後の転落が怖くなってきた今日この頃。
基本楽天家なのにどうしても後半の落ちを警戒するのは、芸人魂というより、私が自分自身の幸運を微妙に信じていない所があるからなのだな。幸運があまりに続きすぎると、ほどよいバランスを求めたくなってくる系。一般人だからね。
……で。なんで今、幻想的な竜達の帰還を見送った直後に、こんなことを述べだしたかというとですね。
「そういえば寝落ちしたせいで、本来寝る前にやるべきあれこれをやってないな……」と気がつき、とりあえず自室に戻ろうかなーと、くるっと振り返ってみましたところ。
なんかこう、見てはいけないものを見ている目の竜騎士の皆さんのお姿がね。視界に入ってきましたよね。
はい深呼吸ー! おさらいしよう!
私は赤様のお世話をしていたところ、言葉はわからんがなんか外に連れて行けと言っていそうな気配を感じ取り、言われるがまま竜舎にやってきた。
そして我々は、すんげーでっけー巨もふ様と会った。そしてわたしは巨もふ様の声なき声を感じて、登り……うん。あれ、たぶん同意だったよ? というか同意じゃなかったら、わたし振り落とされてたはずだよ? 何なら頭下げて、「さあお乗り」ってやってくれたのは向こうよ!?
でもさ。諸々状況整理して察するに、あの巨もふ様、赤様の保護者様なんですよね。何ならお母さまだったのかもしれない。
そしてそれ以上に、たぶん竜の中でもかなりのVIPだったのだな。赤様が人前に出てくることも珍しかろうが、きっと巨もふ様はそれ以上に人前に出てこない方だったのだ。
と、いうことなんだろう? このいたたまれない空気と距離感から察するにさあ!
いや、今までもね。異世界人だしなって感じで、敬いつつ遠慮しつつって感じの空気――一言でまとめれば、お客さん扱い? まあそういうのはね、竜騎士の皆様から感じていましたとも。
そうじゃないんよ。向けられる視線の種類が違うんよ。あれ、ほぼほぼ確実にドン引きしてるんよ。やらかした人間に対する目なんよ。
そして何をやらかしましたかって、心当たりしかねーのですわよコンチクショー。もう完全に人目を忘れて巨もふ様のもふみを堪能していたからね。
でも本人(本竜?)はたぶん、いいよって言ってたし、その後竜の皆さんだって全然何も言わなかったよ……!
いや、サヤ。冷静に考えてみ。
例えば現代日本でさ、大統領と急に会う機会があったとして、大統領が「ヘーイジャパニーズガール、私のことハグしていいYO!」って言ったとするじゃん。
そこで素直に「わーい!」ってハグしに行ったら、どうよ。幼女とかならまだ許されるかもしれないが、アラサーがやったらどうなるよ。だからたぶん、そういうことだよな。
というか、まあ見た目の時点でね? 普通じゃないのは充分わかってたんだけどね? でも竜の皆さん的には「よきにはからえ」空気だったからね、郷に入っては郷に従え状態だったのだけども。人間世界のルール的にはよきにはからえない人だったんだなって、今静かに実感が湧いてきて、結果私の足は震えています。これが本当の意味怖体験記って奴かな? 体験したくなかった。
見てよほら、イツメンことバンデス氏とショウ君も視界内にいらっしゃるのだけど、「こういうときどういう顔をすればいいのかわからないの」って表情だよ。あの全体的に親切な竜騎士の皆さんの中でも、特にフレンドリーで何かとフォローしまくってくれてたお二人ですら、なんか気まずさ全開な空気なんよ。
フッ……しかしね、もう事は起こった後、どうしようもないんだな。
え、でもこれ私どうなるの。死ぬの? 処刑されるの?
「…………」
そして周囲の「この空気なんとかしてくださいよ」の視線が送られた先、無言でざっざと足音を立てながら歩いてくるのは……困った時の我らがアーロン団長!
うん。まあ、ね。責任者案件なんだね。わかるわかる。どうしよう。手元に赤さんもふもふがいれば今猛然と撫で繰り回した所なのだが、あいにく手ぶらである。
土下座か? やはり原初の命乞いイズジャスティスか? 学生時代ならローリング土下座できたはずだけど、今のアラサーの運動能力ではどうかな……いやでも異世界来てから大分体の調子いいし、ワンチャン……!
しかしやはり判断が早いのは仕事のできる団長の方、彼は私が意を決して空中に飛び出す前に私の前までやってきて、片膝をつき。
「――
ヘイ、ジーザス。確実にまたやらかしたがゆえの囚人案件かと覚悟していたら、訪問者殿からまさかのランクアップを果たしたらしいんだが。
これ、どういうことなんだい!?
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