専属メイドさんまでついてくる至れり尽くせり系異世界の目覚め
朝です。乗り物酔いからの寝落ちで起きたらめちゃくちゃすっきりしてます、異世界生活二日目突入でございます。
昨日はイケメン騎士団ともふもふ竜に遭遇しただけで終わったね。普通もっと色々あった末に、ドキドキして眠れないとかそういう感じになるだろうところ、まさかの乗り物酔い落ちというね。
しかもグロッキー由来でぶっ倒れた割に、気持ち悪いほどの気分爽快っぷりである。
どのぐらいすっきりしているかというと、寝起きに見慣れない天井を見上げて、「そうだ、私異世界来て、あやうくゲロ女になるところだったんだ」と瞬時に思い出せる程度に、頭の冴えも絶好調なのである。
昨日の醜態的には二日酔いとか無計画な徹夜の翌日感なんだけど、体はピンピンしてるってのがまた……どういう顔をしておけばいいのかわからないコンディションだな。
「まあ、訪問者様、お目覚めですか?」
私が「うーわやらかしたー……」と目を遠くしていると、ちょうど部屋に入ってきた女性が声を上げた。そうか、この人の入室前のノック音で目が覚めたんだ。
体を起こして見てみれば、いかにもメイドさんという格好の美女が頭を下げてくれる。
「お初にお目にかかります。訪問者様の当面のお世話を担当させていただきます、マイアと申します」
「あ、ご丁寧にどうも……私、サヤと申しますので、そのように呼んでいただければ……」
「ではサヤ様とお呼びしても?」
「はい、よろしくお願いします、マイアさん」
マイアさんは、外国人顔の人って正直年齢わからないところあるけど、私と同年代か、もう少し下ってところかな?
いかにもしっかりしていそうな美人のメイドさん(もしくは侍女さんって呼ぶのかな?)をつけてくれるだなんて、相変わらずこの異世界は初級者向けイージーモード感が半端ない。
マイアさんは簡単な自己紹介を済ませてから、じっと私の顔を見て、微笑んでくれる。おう、いかにも真面目な仕事人という見た目のお方ですが、自然な笑顔もよくお似合いですね!
「顔色が随分よくなられたようですね。ようございました。昨晩は本当に、真っ青でいらっしゃいましたから」
「あっ……その節は本当に、ご迷惑をおかけしました……」
私にはいささか都合の悪いことをちょっと思い出してしまった。
そうだ、昨日、竜騎士団の皆さんが地上に降りてから、慌てて呼びに行って連れてきたのが、確かこのマイアさんだった。
それで、いかにも高級そうな寝室に担ぎ込まれた後、背中をさすってくれたり白湯なのか薬湯なのかよくわからないものを飲ませていただいたり、それはもう手厚く色々とお世話いただいたような記憶が……。
イケメン騎士の皆さんよりは、メイドさんにしていただいた方がまだ心理的ダメージが少ないかな。いやどっちにしろ心が泣いてるわ。辛い。空の旅を舐めすぎていた。乗り物酔い船酔い、あんまりない方だったしなあ……。
「いえいえ! こちらこそ申し訳ございません。訪問者様がいらっしゃるのは久しぶりですから、こちらも不手際が多いかと思われます。ご気分が悪くなったら、我慢せずすぐにおっしゃってくださいね」
マイアさんは明るくそう言ってくれた。優しさが染みる。部屋のカーテンが引かれたせいか、朝日のまぶしさも染みる。
この世界、季節とか気候は、どんな感じなんだろう? 空の旅はめちゃくちゃ寒かったけど、そういえば今は割と適温状態に感じる。
あれこれと疑問が浮かぶけど、まずは朝の支度だろう。マイアさんがてきぱき朝の準備を進めながら教えてくれることには、どうも朝食後に、改めて色々異世界の説明をしてもらえるらしい。そうと決まれば、きびきび起きねば!
まずは洗面所のご案内をいただいて、水回りの用事を済ませる。
おう、異世界、水回りも綺麗だな……というかトイレの構造も、知ってるものとそんな大差ないな。水洗式でレバー下ろせばじゃーって流れるあれ。マジか。現代日本基準の衛生面すらクリアしてくる異世界。
でもやっぱり置いてあるものがいちいち高そうで、そこはちょっと庶民的の心臓に悪い。鏡とか、うっかり触って手の痕とかつけたら、めちゃくちゃ怒られる奴じゃん、これ……。
そういえば私の装備、ダサTシャツとジーンズからネグリジェみたいな格好に変わっている。これもグロッキーで意識朦朧している間に、マイアさんが変えてくれたような記憶がほんのりあるな。その時は他にも何人かメイドさんがいたような気もする。この後また、会えたりするのだろうか。
……あ、今更だけど、コンタクトないのに、めちゃくちゃ見えてる。これも転移者特典なのかな? なんかここまで来ると逆に怖くなってくるぞ、手厚さが!
「サヤ様、こちらにお着替えをご用意しております」
水回りの用事を済ませてベッドのある部屋に戻ってくると、マイアさんがにっこり笑みを向けて聞いてくる。
……ハッ! そうだ異世界初着衣イベントじゃん! これはもしかして、アラサーのコルセットドレスデビューですか!?
ドキドキする私に手渡されたのは、上等なワンピースって感じのお洋服でした。
ほう。なるほどね。動きやすいし、たぶんこれぐらいなら自分でも着れるな。
……うん。いや、全然いいよ。さすが私の担当神、衣食住の衣も外さないなって感心してますよ。デザインも色合いもね、若すぎず年上過ぎず、まあこのぐらいかなって感じで、もう本当完璧です。
でもちょっとだけ、ほんのちょっとだけね。がっつりばっちりドレスをご用意いただいて、姫プレイを強要されてもよかったような……。
なんだろう。やっぱり異世界に来たせいで、テンションおかしくなってるんだな、私。乗り物酔い継続中か? しっかりしようね。うむ。
所々マイアさんに手伝ってもらいつつ、無事着替えとお化粧も済ませられた。
これも今更感半端ないけど、やっぱりできるのであれば、すっぴんはね! 日焼け止めぐらいはほしいよね。この世界に紫外線の概念あるのか、よくわからないけど。
さて、異世界の衣と住の本気っぷりは見せつけていただいた。
次はいよいよ食事情に挑もうじゃないの……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます