人生初騎竜フライト、いえええええええい!(なおその後)
ドラゴンは、ファンタジー世界最強の動物である。単純な武力的な意味でも、魅力的な意味でも。少なくとも私の中ではそうだ。
だって竜ってかっこよくてかわいくて造形が完成されてるだろうが!
次点でペガサスも捨てがたいと思います。グリフォン等もいいですね。心が躍ります。
わかりやすくお前が四つ足両翼生物萌えなだけじゃないかとかいう突っ込みは、永遠にしまっておいてください。生物の都合上その骨格は無理です? そこをなんとかするのがファンタジーパワーだろうが!!
いかん、オタクはすぐ自分の推しジャンルを語り出す。
ともかく、ただでさえ完成されている最強生物に、この世界では更にもふもふオプションまでデフォルト装備でついてくるらしい。
「よしよし……いい子だな」
そしてそんなもふ竜達が、きゅーきゅー鳴きながらイケメン騎士達と戯れている。
なんなのだこれは? 私の転移担当神、神ってない? どうしたの? 大盤振る舞いなの? 期末で予算余ってるから、適当なモブにも惰性でポイントつぎ込んでるんじゃないの?
なんだっていい。神様の鑑は、顧客が本当に必要だったものを完全に理解している。逆に私以上に私の性癖を理解してピンポイントに撃ち抜いてきてる感がちょっと怖い。これ以上変な業に目覚めたくはないのですが。
「ええと……サヤ? と、呼べばいいのだろうか」
「ハイ、モンダイ ゴザイマセン」
「そうか。今まで竜に触れたり、乗ったりしたことは?」
「イエ、マッタク。ミケイケン デス」
「では、まずは挨拶からだな。ゆっくり近づいて、手を出してくれ」
「サー、イエッサー」
私特攻生物もふ竜様の出現に、思わず答える声がカタコトになっているが、竜騎士団長アーロン氏の指示にはちゃんと従う。
アーロン氏の担当竜? は真っ白で、なんとなく凜としたお顔立ちをしていらっしゃる気がする。アーロン氏に呼ばれて寄っていった私をじっと見下ろしてから、「きゅう」と一言のたまわれた。
は? きゅうってなんなの? かわいいじゃねえか神かよ……。
「問題ないらしい。城まで乗せていってくれるそうだ」
アーロン氏が竜の態度に補足するように言う。
これ、もしかしてあれですか。竜騎士の皆さんにはちゃんと竜の言葉が人間の言葉的な何かで聞こえてる的な。
私の担当神、今まで散々優遇してもらっておいて贅沢を言っているのは重々承知しておりますが、そこは私にもその特典が欲しかったなあ……。
いやまあきゅーきゅー言ってるのしか聞こえないの、これはこれで可愛いからいいけども。
そんなこんなで私はアーロン氏の担当竜、グリンダ様に乗せてもらうことになった。
可愛いなー美人さんだなーって思い続けてたけど、女の子だそうです。ファースト美少女やったぜ。あと毛並みが今まで触ったどのもふみよりも吸い付く滑らかさで、ちょっとこれどうしてくれるんですか、これ以上私を狂わせて何がしたいんだ異世界よ。永遠に触ってられる。実際やらかしたらたぶん怒られるので、自制心を総動員して常識的な範囲で撫で終える。
しかしそんな大興奮も、初のフライト経験で割とシュンッと引っ込んだ。
いや、最初はアドレナリン? がバンバン出てたからそうでもなかったけど、ちょっと時間が経つとね。人間って冷静になっちゃう生き物なんですよ。
「わー私ドラゴンに乗ってる、もふもふドラゴンに乗ってる、わーい!」
とか調子乗ってふと下に視線下げちゃったらね。単純に、高さが高いわけよ。「あ、今落ちたら確実に死ぬな?」ってすぐに現実がわかるわけですよ。
というかそう、乗せていただいた竜のサイズ感がね。人に比べたら全然大きいし、二人乗りぐらいであればまだまだ余裕そうではあるのです。
でもこう、ふって見下ろしたらね。足下がね。見えはするわけですよ。
高所恐怖症って、人によって駄目ポイント違うじゃないですか。私の場合、足がつかないかつ足下ふわふわ状態が目視できるって状況が揃うと、駄目だったみたいです。
現代日本のヘリコプターとか飛行機はさ。浮遊感は感じても、足下がこう、ちゃんとした地面感出てるじゃないですか。おまけにシートベルトがありますし。だから大丈夫だったんですよね。異世界に来て知った新たなる弱点。
正直、騎竜を舐めてましたね。
情熱があれば全部解決するような錯覚があったけど、怖いものは普通に怖かった。
むき出しの生身、寒すぎる上空、そして速さ。行くというかもはや逝く。
なんかたぶんある程度は魔法の保護みたいのがあったのでしょうけど、さすがの私でもちょっと死を覚悟しましたね。
実際、降りた直後、割と飛行機酔いの酷い版みたいな症状が出ちゃいまして。気持ち悪いし、足が地面についてもゆらゆら感が全然消えない。
でも根性で、ギリギリ乙女の尊厳は保ったぞ。公開リバースだけは避けた。うん。
乗る前はめっちゃ余裕そうだったのに、降りた直後から体調不良マックスで、竜騎士団の皆さんがめちゃくちゃ慌ててる気配を感じたよね。本当に申し訳ない。行けると思ってたけどそうでもなかった。
目的地に着く頃には結構余裕がなくなっていたから、正直周りがどうなっているかの観察も全然できない。バタバタ行き交う足音があって、どこかの部屋に担ぎ込まれたことは覚えてる。その後、たぶん体調不良の限界と、あ、寝ていい場所に来たって緊張が緩んだせいで、ふつっと一回意識が途絶えた。
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