第35話 ベッドの下じゃないぞ、絶対にベッドの下じゃないからな!
強引に
あの後、キャラに似合わない宣戦布告をかました
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「
「……そう、やっぱりね」
「覚悟しておいて。私は全力でみーくんを奪いに行く、どんな手を使ってでもだよっ!」
「あなたに私を倒せるとは思えないけれど、せいぜい足元をちょこまかしているといいわ」
「ああ言えばこう言う……がるる……」
「怖い怖い、噛み付いたら即通報するから」
「ちゃんと理性働いてますよーだ!」
威嚇とばかりにべーっと舌を出す花楓へ、玲奈は無表情のまま近付いていく。
無意識に
あっさり壁際まで追い詰められると、顎クイされながら淡々とした口調で言われてしまった。
「人の彼氏にベタベタしたいなら、その舌を引っこ抜かれる覚悟をしておきなさい」
「ひゃい!」
「……なんてね、冗談よ。幼馴染なのは知っているもの、節度のある接触くらいは許してあげる」
「じょ、節度のある接触って?」
「次、キスなんてしたらどうなるか、賢いワンちゃんなら分かるわよねってことよ」
「く、くぅん……」
弱々しく鳴く幼馴染の早くも折られかけている覚悟に、まだ驚きを隠せないでいた瑞斗も先行きが不安になったことは言うまでもない。
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正直、寝て起きれば全てが夢かドッキリかになっていないかと少しは期待していた。
何せ、善意で偽彼氏を演じてあげていたはずが、いつの間にかガチモン彼氏に望まぬ昇格をさせられてしまったのだから。
もちろん二人きりになったタイミングで約束と違うとクレームは付けたし、どうしてあんなことを言ったのかとも聞いた。
それでも返ってきた答えは『臨機応変に対応しただけ』だとか、『過ぎたことは仕方ない』だとかそういう感じで――――――――――。
「みーくん、おはよっ!」
それでも、いつもお寝坊な花楓が起こしにやってきたのを見て、現実から目を背けるのはきっぱりと諦めた。やっぱり学校に行くのは憂鬱だけれど。
「……おはよ」
「愛しの花楓ちゃんが起こしに来ましたよぉ♪」
「僕にとって愛しの相手は鈴木さんだよ」
「むぅ、寝ぼけてるなら言わせられると思ったのに」
そう言いながら、背中に隠していた録音中のスマホの画面を閉じる彼女を見て、内心余計な事を言わなくてよかったと胸を撫で下ろす。
嫌々やらされているはずだと言うのに、一度助けると言ったからには……と善意が偽彼氏役として繋ぎ止めてくる自分が我ながら恐ろしい。
ただ、真っ直ぐに気持ちを向けてくれる花楓に『恋愛に興味が無い』とそっぽを向くよりかは、恋人がいるからと目に見える理由を用意しておく方が、傷つけずに済むような気がするのも事実なわけで。
ある意味助けられているのかもしれないと思うと、闇雲に玲奈のことを恨むことは出来なかった。
「ていうか、どうしてここにいるの?」
「男の子にとって幼馴染に起こしてもらうのは、叶えたくても叶えられない夢だって聞いたから!」
「誰に?」
「……りぼん」
「その少女漫画雑誌、まだ続いてたんだ。もうちゃおの独占市場だと思ってたよ」
「りぼんとなかよしは乙女の必読書だもん!」
「どうでもいいけど、少女向け雑誌に男が喜ぶシチュエーションって載ってないよね?」
「やっぱり、コミックボンボンだったかもしれない」
「いや、何歳なの」
幼馴染でクラスメイトなのだから、自分と同じ年齢のはず。なのに、生まれて間もない頃に打ち切りになった雑誌の読者だとは思えない。
きっと、この部屋にあるライトノベルでも読んで知恵を得たのだろう。瑞斗はそんなことを考えながら、花楓を横に退かせてベッドから降りた。
「あっ、もしかしてみーくんは上に乗って起こした方が嬉しい派?」
「どんな派閥があるのかは知らないけど、少なくとも花楓にされて喜んだりしないよ」
「……私、胸は小さくないよ?」
「そういう問題じゃないから」
前言撤回、見たのはラノベじゃなくてエロ本だ。隠していたはずのものをどうやって見つけたのかは気になるが……。
本人の口から事細かに説明されれば、それこそ世の男子高校生はあっさりハートブレイク。引きこもり街道まっしぐらである。
「着替えるから下に降りてて」
「見てるもん」
「変態か。いいから待ってて」
だから、今は何も言わずに花楓を部屋から追い出して、一人になった隙に隠し場所の確認へと奔走したことは彼だけの秘密。
「……全て無事。つまり、丁寧に戻したか」
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