第25話 ギャルギャルトークにギャルテンション
偽彼女とデートした翌日に、別の偽彼女とデートをするというのは、人助けのためとはいえ我ながら二股をしているようで嫌な気持ちになる。
ただ、早く来すぎたのだろう。幸いにも他の3人はまだ来ていない。おかげで彼氏になりきる心の準備が出来そうだ。
(大丈夫、
何よりの心配ごとはそこなのだ。鈍感な
言葉と違って自分の目で感じ取った疑念は、否定する間も無く脳全体を覆い尽くす。それを察して弁明なんてすれば尚更だ。
だから、たとえ何があっても自分だけは平静を装い続ける必要がある。何も無いことが一番なのだが。
「みーくん、お待たせ」
そうこう考えているうちに時間が過ぎ、花楓が小走りで近付いてきて彼にドンとぶつかった。
「ちゃんとブレーキはかけて」と注意はしたが、ヘラヘラと笑う顔を見る限り、おそらく聞き入れてはくれないのだろう。
「先に聞いておきたいんだけど、家が隣なのにどうしてわざわざ別々で集合したの?」
「だって、その方がデートっぽいもん!」
「子供みたいな答えだね」
「その方がデートみたいでござる、にんにん!」
「いや、言い方の問題じゃなくて」
いかにも忍者らしいポーズを取りながら、「にん?」と首を傾げる姿は可愛らしいが、周りの目もあるのでアホっぽいことはなるべく控えてもらいたい。
瑞斗がそう伝えようとしたところで、少し遠くから「こばちーん!」と彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。
声の主である
どうやら我が幼馴染にノンブレーキタックルを教えたのはこやつらしい。さすがはキラキラJK、コミュニケーションも第三ボタンまで開いた胸元も大迫力だ。
「あ、みずっちのヘンタイ。今、真理亜の胸見てたでしょー!」
「……ミテナイヨ」
「声が震えてるしぃ♪ 別に減るもんじゃないから見るだけならいいよー?」
「本当かい? だったら――――――ぶへっ?!」
ついついギャルの言葉に釣られ、視線を戻そうとした瞬間に横からやってきた手で思いっきり顔をグイッとされた。
犯人は花楓だ。彼女は恋人になり切っているのか、「わ、私の彼氏を誘惑しちゃダメっ!」と真理亜を叱っている。
こうしてみるとなかなかに迫真の演技だ。自分もこれくらい本気でやらないとボロが出てしまうだろう。
そう考えて気を引き締め直していると、花楓の指示でボタンをもうひとつ留めていた真理亜の背後から高校生くらいの男の子がやってきた。
「真理亜、お待たせ。御手洗混んでて……あ、その子が話に聞いてた子かな?」
「そうそう!
「確かに、噂通りいい子そうだよ。俺は真理亜の方が可愛いと思うけど」
「もう、人前でそういうこと言わないでって言ってるのにぃ♪」
ギャルギャルしているJKなだけあって、彼氏との会話すらギャルギャルトークにギャルテンション。
だが、瑞斗が一言も発せていないのは、自分とは住む世界の違う人間を見て引いているからでは無い。
おそらく、彼と「そちらが彼氏さ――――――」と言いかけた真理亜のパートナーは同じ心境だろう。
「……は?」
「……え?」
だって、目の前にいるのが少し前に桜の木の下でいざこざがあった相手だったのだから。
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