第20話 デートは自分らしく
まともにパンケーキを食べることなく退店した
「
「謝るのは私の方よ。あなたがあそこまでキラキラした場所に弱いとは思ってなかったわ」
「パンケーキは好きなんだけどね。やっぱりあの雰囲気は無理みたい」
「その気持ちは分かるわよ。私だって、可愛らしい飾り付けもキャピキャピした装飾も苦手だもの」
そう言って背中を撫でてくれる彼女は、確かに以前盗み聞きしてしまった会話の中で、そんなことを言っていた気がする。
本人からすれば本心から言っているということなのだろうが、瑞斗にとってはそれが気遣いからする一時的な虚言だとしてもホッとしていた。
「まあ、あなたがもう少し我慢出来ていれば、デートの第一段階はクリア出来ていたのだけれど」
「……ごめん」
「冗談よ。私も考え直したわ、周りのカップルの真似をすることが間違いだとね」
「と言うと?」
「私たちなりのデート場所を選ぶの。例えば、ダーツなんかが出来る場所がいいわ」
「へえ、出来るの?」
「私を誰だと思っているの」
「斎藤さ――――――――」
「もう具合は平気そうね。さっさと行くわよ」
「痛い痛い、謝るから耳を引っ張らないで」
結局、引っ張るのはやめても耳を掴んだ手を離すことの無いまま目的地まで移動した二人が、思惑通りかなり目立つことが出来たことは言うまでもない。彼らは建物の中へと入ると、早速受付を済ませるべくカウンターに立つ年配のおじいさんに話しかけた。
この場所はもちろんダーツが出来る場所だが、メインは喫茶店の方らしい。
何かしらを注文する際、追加料金を払うことで一角にあるダーツの台を使わせてもらえるのだとか。
そしてここの良いところはそれだけではない。通行人の多い道側の壁に大きな窓がはめ込まれているため、ダーツをしているとちょうど顔が見えるのである。
『男と二人でいる』というところを学校の人に見られることが目的な彼女らにとって、ここは条件にピッタリというわけだ。
何より、若者向けのパンケーキ屋と違ってキラキラしていない。ダーツが出来る大人びた落ち着きのある店なのだから。
「コーヒー、それからダーツを2人分」
「僕は紅茶で」
「かしこまりました。一番左の台をお使い下さい、お飲み物は出来上がり次第お席へお運び致します」
先に会計を済ませてから道具を受け取り、台から近い席に荷物を置いて早速ゲームスタート。
とは言っても、瑞斗はダーツが初めてということで、とりあえず投げ方の指導と練習からさせてもらうことになった。
「慣れれば感覚を頼る方がいいと思うけれど、今は基本的な構え方を覚えるといいわね」
「基本的な構え方?」
「ドラマとかで銃を構えるシーンは見たことがあるでしょう? ダーツもあれと同じで、目・ダーツ・的が一直線になるようにするの」
その説明を受けて、試しにこんな感じかとやってみるが、すぐに「ダーツが傾いてるわ」とダメ出しを食らってしまった。
口で言っても上手く直せないことが分かると、今度は直接手を掴んで「こうよ」と指導してくれる。
ただ、距離が近いことに気がついたのか、「自分でやれるようにならないとね」なんて言って離れてしまった。
「今のがセットアップ。次は投げる前の振り被る動作のセットバックよ」
「そこも気を付けることがあるの?」
「ええ。肘は固定して、ダーツを持つ手が綺麗な弧を描くように動かすといいわ」
「こんな感じ?」
「……誰がソフトボールの投げ方をしろって言ったのかしら」
「ユーモアだよ、ユーモア」
「真面目にやらないのなら、あなたを的へ
遊びとは言えど、教える立場として真剣に取り組んでくれていたらしい。
割と本気のトーンで言われた瑞斗は、大人しく指導通りの持ち方をすると、その後は大人しくダーツのルール説明まで
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