第6話 ガス停止
「なんだよ?!うるせーな!」
春男はイヤそうに体を起こすと、布団の上で座り込んだ。
「おい、お前ーーこれ、どーゆー事だよ?!」
私は亜美を指さして、どうしてこの女がまた来ているのかと問いただした。
「家族が一緒にいるのは、普通の事でしょ?!」
こともなげに、春男が言った。
「ーーは?家族?!ーーじゃ、これはお前の子供なのか?血が繫がってるのか?!」
もう既に亜美は、モノであるかのような表現ではある。家族でもない第三者の介入で、私にとってこの家は住みにくい場所になっているのは明確な事実だった。
「そんな事ばっか言ってるなら、お前はもうこの家から出て行け!!」
考えてみればおかしな事だ……。
私の名義で借りている家で、家賃を払っているのも私ーーそれなのに出て行け、はおかしい。
「分かった。こんな家、二度と帰ってくるか!!」
私は吐き捨てる様にそう言って、再び家を飛び出した。私にはまだ実家や、パパの家がある。行き先には困らない。
私が出て行けば困るのは、アイツらだ。
ーーもー知らない。
私が家を飛び出したその次の日……。
相変わらず仕事に追われている私のスマホが着信を知らせる。
その着信は春男からだった。
当然だが、仕事中は電話に出れる訳がない……。
私はその着信を無視した。仕事が終わったら電話をかけてみよう。
仕事が終わるとすぐに、私は春男に電話をした。
春男にしては珍しく、コール音が一度鳴るか、鳴らないか、ってくらいで春男が、電話に出た。
「電話、なんだよ?!仕事中だってわかってるだろ?」
いつものようにそう言った。
頭の悪い春男にも私が苛立っている事は分かっているだろう。
「昨日は悪かった……。亜美の事を、勝手に連れ戻したりして……お前に一言話すべきだったよな……頼む!帰ってきてくれ!!」
ようやく私の事を理解したのだろうか?
私が怒っている理由と、春男が謝っている理由が珍しく重なる。
こんな風に謝られると私は……。
「わかった。とりあえず今日は帰る……」
私は春男を愛している。
きっとこの先、何があろうが別れられない。一緒に暮らしていながら、給料を家に入れない事も目をつぶってきた。
どれだけ約束を裏切られてもこうして側にいた。きっとこれからも……。
こうして家に帰った私はまたしても、ドタバタ劇の中に足を踏み入れたのだった……。
ーー春男なんて男と、簡単に縁を切れたら楽なんだけどなぁ……。
「おかえり。どーしよ??」
春男が私を見つめる……。
「なに?」
「ガス……止まっちゃった」
ーーはぁ?!何それ?!
「しょうがないから、みんなで温泉でもいきましょーか?!」
亜美はそう言った。
が、しかし、それをすべて私が払う事になるのだとは思いもしなかった。
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