第2話 連れてきた女
家を飛び出した私は、春男からの電話は全部無視していたが、ラインだけは返信しようと思っていた。仕事が終わると10数件ほどのラインが入っていたが、すべて春男からのものだった。
「少し話したい。電話に出てくれ!!」
「ちゃんと説明する。聞いてくれ」
「俺が連れてきたあの子は、後輩の友達だ」
「一度、家に帰ってきて、冷静に話を聞いてほしい」
同じ様な内容の文面が、春男から届いている。私は初めて追われる立場になったような優越感を感じたりもした。
だけど、違うのは分かってる……。
家に戻ってちゃんと話を聞けるだろうか?!冷静に話せるだろうか?!ーー無理。絶対と言っていいほど、ムリだろう。
しかし話さなければならないだろう。二人の今後の為にもーー。
私は喧嘩になるのは仕方ないと諦めて、日曜日、家に帰ると春男にラインした。
「ありがとう。ちゃんと説明する……日曜日、待ってるからな」
日曜日、私が家に戻ると春男は家にいたが、例の居候ーー(名前も聞いていない)はいなかった。二人だけで話しが出来るようにしてくれたんだろう。
「ただいま」
私の名義で借りた家のはずなのに、何か他人の家に帰ってきた様な変な気分だった。
「落ち着いて話を聞いてくれよ?!」
「ーーそう約束は出来ない……」
私は正直にそう答えた。
「この家、二人でルームシェアしてる事にしておいてくれないか?!」
突然、春男はそう言った。
「ーーは?意味わかんねーし……つき合ってる事を隠す必要があるわけ?!」
「後で俺からちゃんと話すから、とりあえず話を合わせておいてくれ!」
いつもと同じ、自己中発言。
こう言うのにも慣れたつもりでいた。
「あの子は竹本亜美(たけもとあみ)って言う高校生なんだ。俺の後輩の友達で、正直に言うと、俺と亜美はまったく関係ない。だけど、あの子は親からのDVを受けていて、精神科に通ってるんだ。亜美の親は刑務所に入っているーーだから、俺は助けただけなんだ」
「同じ助けるにしても、一言くらいあってもいいんじゃないの?ここは私の名義で借りた家だし……お前、家賃だって払ってないじゃん!?なのに、なんで女を連れてきてから説明するって順番逆じゃないの?!意味分かんないし……」
「お前が怒るのは分かるよ。だけど今回は多めに見てくれ!!亜美は躁鬱って言う心の病気で、放っておいたら自殺でもしかねないんだ」
「は?!知らねーよ!あの女が、死のうが生きようが、私には関係ねーわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます