第6話 問題なく進む。いい事じゃないか。
日曜日の11時45分。俺は大羽根さんとまた改札内にあるテントに居た。
現在は1人の特別なお客さんが来るのを待っている。ってか。大羽根さんが何故居るのかは――俺は知らない。でもまあいいか。である。
お弁当はOK。イメージ通りの物が出来ており。机の上に置かれている。本当は、はじめは箸しか準備がなかったのだが、フォークがあった方が食べやすいと大羽根さんの意見が少し前に採用されて追加されたりもしている。
あと、ちょっと変わったというか。この場所に追加されたものがあった。今週の水曜日の時は――。
(オリジナル鉄道弁当販売中 ~あなたの希望する駅弁作っちゃいます!~)
そんな旗だけがあったのだが――いつの間にか社長が旗を追加していて――その旗の横には――。
(特別なお弁当受け取り場所!)
そんな旗が追加されていたので――地味にだが。この旗をセットする手間が増えた。社長は置いていくだけなのでね。今もどっか行って居ないし。などと俺が思っていると……。
「そろそろ来るかなー」
大羽根さんがそんなことをつぶやき。その直後だった。
「お兄さん!お姉さん!お弁当取りに来ました!」
女の子が改札を抜けてこちらへと小走りでやって来た。その後ろでは多分お父さんだろう。首からカメラをぶら下げている男性が――娘を追いかけようとして――改札で詰まっていた。お父さん。切符。切符を機械に入れてください。である。
俺がそんなことを思っていると女の子は俺達の前にやって来て――。
「お弁当2つ取りに来ました!」
元気にそう言いながらこの前も持っていた小銭入れから――注文時に渡した紙と――小さく折られたな。注文書。だったが。うん。ちゃんと女の子は持って来た。そして100円玉を10枚数えて俺たちの前に置いたのだった。すると――
「はい。確かに。あっ、お弁当を食べる時ゆっくりめくってあげてね?」
「—―めくる?」
――うん。俺の出番ないね。大羽根さんがニコニコ接客してくれている。ってそうだよ。俺そもそも接客は向いてないからね。大羽さんがこの場に居てくれたのは――ナイスだったりする。うん。感謝だ。また大羽根さんの好物でも聞いて作らないとだな。などと俺が思っている間も横で話は進んでいて……。
「そう。あっ、パパにも食べる時言ってあげてね?突き刺したらダメだよ?って」
「う。うん。ありがとう!パパ電車で食べよう!」
「なんだ?えっ!?」
少し遅れて娘のところへとやって来たお父さん。何が何なのかわかっていないらしく。キョロキョロしている。そして――俺たちの前にある旗を見て――娘を見て――俺達を見て。うん。キョロキョロしている。
結局女の子のお父さんが何か言う前に電車の発車時間も近づいていたため――。
「お父さん、早く行かないと。電車出ちゃうよ。お弁当も早く見たいし」
「えっ――あー、うん?」
「いってらっしゃい」
女の子がお父さんを急かして――結局お父さんは何もわからないまま俺たちに会釈だけして――女の子引っ張られていった。そして大羽根さんが2人を見送りながら俺の隣で手を振っていた。
果たして結果は――である。今はまだ渡しただけなのでね。この数時間後に戻って来た時に――である。
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