第5話 1人より2人の方がアイデアは出る

俺が試作品を作っていると入り口の方から声がしてきた。


「大羽根さん――仕事してます?」

「社長が代わってくれてる」

「—―いいのかそれ。ってか社長むしろこっちを見に来なくていいのか。全く来ないんだが……」


俺がつぶやいていると大羽根さんが覗き込んできて――。


「おお、松本君器用だね。普通にかわいいお弁当が出来てる。苦労しているのかと思ったけど。すごいね。さすが。あっ。タコさんウインナーいいよねー。私好きだよ」

「まあ女の子がイラスト描いてくれてましたから。でもなんか普通ってか――予算的はOKなんですが――お父さんがびっくりする見た目ってのが――」

「あー、びっくりするもの。って書いてあるね。これだと――かわいい!お弁当だよね」

「です」

「でもこれでも十分いいと思うけど――あっ。いっその事。時限爆弾式とかにしてみたら?お父さん食べたかったら赤か青どちらかのコードを切れって」

「……」


この人は――何を言っているのだろうか。と俺が見ていると――。


「松本君黙らないですよ」

「すみません。付いていけませんでした。って爆発はダメでしょってか。しませんけど」

「まあ冗談で言ったんだけどねー。でもびっくりかー。あっ。食べてみたら激辛とか?」

「まあそれはびっくりするかもですが――女の子も同じもの食べますから」

「あー、それもそうか」

「って、いろいろ言ってますが。美味しくないとだめですからね?さっきから爆発とか激辛とか大羽根さん言ってますが……」

「そうなの?」

「そうですよ!?」


うん。大丈夫か。ホントと俺が思っていると――。


「じゃあさ。びっくり箱とかでいいんじゃない?お弁当を入れる袋にびっくりでも。お弁当入れる袋にびっくりとか」

「それ――落とさない?」

「あー……私なら投げるかも」

「……却下だね……あーでも、びっくり箱か」


大羽根さんと無駄な会話を少ししていると――ってそんな会話の中俺は一つ思いついた。


「—―開いてみて――びっくり。か」

「うん?松本君どうしたの?」

「いや、何となくなんですが。今蓋を開けたら――これじゃないですか」


俺はそうい言いながら目の前に出来上がってるお弁当を――って待て!


「—―大羽根さんイカリング1つと。タコウインナーどこ行きました?」

「私の胃袋?」


隣でピースサインの大羽根さん……社長以上の大物がいたかもしれない。と俺は思いつつ……。


「……つまみ食いは後でお願いします。ってか。食べたいなら終わったら上げますから」

「ホント?このイカリング美味しかったからもう少し食べたいんだよ。ってこれホントに松本君作ってるの?料理人?」

「いや――少し前までは保線員だったんですがね」

「絶対香り的にご飯も美味しそうだし。って――何話していたっけ?」

「いや、その――蓋を開けて、ワンクッションってか。そういうのがあってからさっきのってか。大羽根さんが食べちゃったから、イカリング一つと魚だけになってますが――さっきのが見えたら――玉手箱みたいで驚くかな。と」

「あー、じゃあさ。オムライスみたいにしたらいいんじゃない?」

「オムライス?」

「うん。たまごでさっきのを包んでおくの。で。そのままだとぐさりと、箸とか差し込んじゃうかもだから。切り込み入れてさ。ほら。封筒。手紙みたいな感じでさ。折りたたむって言うの?で、食べる時にめくると――あらびっくり海の中?ってね」


大羽根さんは近くにあったアルミホイルで実演しつつそんなことを言った。

それを聞いていた俺は――そのアイデアは何か面白いかも。だった。

お弁当の蓋を開けたら――前面たまご。うん。あっ、でもそれだと大羽根さんが言ったみたいに箸を差し込むから――切り目か。なら手紙の封をするみたいな感じで――そうか。星だ。ヒトデの形に人参とか何かで作って――うんうん。


それから俺は再度検討して――無事にかわいくて、生き物も居て。キラキラしており。驚きの要素のあるお弁当を完成させたのだった。

そして最後は蓋をして――お弁当箱に紙を巻く。


そうそうお弁当に巻く紙だけは早々に作ってあった。うん。これはね。社長が宣伝だ!とかで自身が撮った写真で印刷をお願いして――うん。いち早く作られていたな。そんなに使うのかよ……と、はじめ束を見た時俺は思っていたのは――秘密だが――うん。ちゃんと使いきれるだろうかがめっちゃ不安な俺だったりする。いや1組限定とか言っていたのに――100枚?どころかうん。数百枚ドン。って机の上に置いていったからな。どうなることか。だよ。


ちなみに――1回目の試作弁当は大羽根さんが全て食べた。うん。まあそんなに大きなものじゃないからね。あっという間に完食してくれた。

でもまあよかった。大きなトラブルなく。何とか形が出来て――ってか。その後の事を言うと。日曜日当日までにとあることが起きた。オリジナル弁当以外の事でね。


「ふむふむ。松本君の料理がおいしいと評判でな。松本君。お弁当作りに影響がない程度に社員食堂頼む。まかせたぞ」

「……」

「よかったねー。松本君。私の宣伝効果抜群じゃん」

「……俺――何しにこの会社入ったんだっけ?」


俺が作っていた試作品を試食していた大羽根さんがその後――。


「イカリング美味しかったー」

「松本君が作っていた。ミックスベジタブルのごはん美味しかったんだよ」

「あれは何を作らせても美味しいよ」


みたいなことをどんどん周りに言いまくったらしく――社長の耳にまで届いて……俺。食堂担当となった――うん。マジか!?だったな。


なお。食堂のオープンはお弁当を作る前の日だったのだが。ってすぐだよ。うん。何で社長そんなこと即決しちゃうかな?だよ。俺に何も言わず。ホント何も聞いてなかったのに。朝行ったら、今日から食堂理だったからね。

まあ食堂は俺が適当に考えたメニューで日替わりでいい。だったので楽と言えば楽ってか――うん。社員数もそこまで多くないのでね。

でもさ。作り出すと――健康的にとか。俺こだわっちゃうわけ。うん。やっぱりそういう家庭だからか。なかなか忙しい日々になりそうだったんだよ。ってこれは別の話か。うん。今は食堂で俺が大変な日々――ではなく。お弁当の方だ。

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