第3話 準備中

(オリジナル鉄道弁当販売中~あなたの希望する駅弁作っちゃいます!~)


俺が再度旗を見ていると。これ――弁当販売中と書いてあるのだが――実際には今テントと机しかない。いや、今日は申込日なんでね。お弁当は無いというか。うん。いろいろ言いたいが。もうなんか面倒というか。話し相手が居ないから何も言わない事にした。


なんやかんやと決まったことを話すと。

お弁当の受け渡しは日曜日のみ。うん。準備の関係でね。

そして都市部の方の始発駅を12時ちょうどに発車する電車があったので、その電車乗車しながら食べてもらう。うん。自宅へのお持ち帰りは実質禁止ですね。あとお弁当代以外に別途普通運賃。乗車券が必要となります。はい。言い方は悪いが。渡す。乗れ。食え。である。社長がそんなことを言っていたから俺も言っておく。


そして限定1組。俺的にちょっと怖いのは1組になったのだが――数十人の集団で来られたら――なのだが――うん。社長がそう決めちゃったのでね。

値段は――要相談。いや、お客さんが希望したものを作る。なんでね。何を頼まれるか全くわからないので、要相談となった。

いやだって500円とかで決めていて……松阪牛のステーキ弁当!大盛!とか言われたら――ですからね。うん。要相談です。

そうそう、そして予約日は水曜日のみ。都市部の方の始発駅で――となっている。うん。ってかまあほとんど社長がポンポン決めちゃったからね。

俺がすることと言えば、予約日。今だな。駅の改札内で――ってそういえばさらっと予約も乗車券。または入場券を買わないとできないというね。まあ――いいか。社長が決めたんだし。俺は――言われたことをしている。というか。何も言わせてくれなかったからね。


そして後はお客さんが希望したものを日曜日の12時発の電車に間に合うように作る。うん。俺1人なんだが――大丈夫だろうか。一応実家にヘルプやらやらで料理は大丈夫にしてきたが……。

ってか社長週に1回しか使わないかもしれないのに。この駅舎にある休憩室の一角に調理場作っちゃったんだが――完全にその時点で大赤字というか――この企画ズッコケたらどうするのだろうか……と俺は思っていたり……いや、さすがにそれは言ったんだがね。もう社長は動いていた。だった。うん。もう知らない。どうにでもなれ。という感じである。


ってか俺が改札内で立ちだしてから――既に数時間。うん。朝9時から立っているのだが――前をちょっと興味ありげにお客さんが通過するだけで――誰もテントまでは来ていません。はい。一応2週間くらい前からチラシの配布を社長がしていたんだがね。これズッコケた説あるんじゃないか?と思い出している俺だったりする。

ってか――俺これがズッコケた場合。保線に戻れますよね?であるのだが――最近調理関係ばかりで忘れかけている――でもある。うん。ってか、ここでさすがに1人も来ないと――俺のこの数か月何なの?なんだったの?になりそうなんだが……ってか発起人の社長どこ行った?朝は居たのだが――少し前から姿が無いのだが?どこ行った?である。


まあ社長の居場所に関しては、このあとなんか新たな計画が必要とか言いながら部屋に籠っている。と、俺は他の職員、駅担当の人から聞いたのだが――うん。何か俺――既に捨てられた?と思いつつも一応朝の9時からお昼に1時間休憩のち18時までは受付中。となっているのでテントで待機をしていた。うん。暇だった。

途中でチラシ配りなどをしていたが――暇だった。平日の日中は人少ないんでね。


ってか――普通にお弁当売ればよかったのでは?なのだが――「それは普通」「面白くない」「話題性がない」と社長が許可しなかった。である。


まあいろいろと俺が思いつつ15時過ぎ。

学生の人が増えてきたな。と思っていた時。俺はふと。改札の外からある視線に気が付いた。


俺が何か感じる方を見ると――小学生くらいの女の子が真っすぐこちらを見ていた。


「……?」


何だろうと。思いつつ。はじめはそこまで気にしてなかったのだが――いや、駅にはね。電車っを見に来たりする子供はよく居るので。こうやってみられることはまあまああるんだよ。

そんなことをはじめは思っていた俺だが――5分経ってもそのまま。さらに5分――と続いたため。さすがに改札に居た他の職員も気が付いて、声をかけようとしたら逃げられていた。うん。逃げたのだが――少しするとまた戻ってきていた。


これは――明らかに俺を――では?とまあ駅員の職員からもアイコンタクトが届いていたんでね。俺は小学生の子の方へと移動した。まあ普段は接客はしないからどうやって声を――だったのだが。


俺が近寄ると――。


「あ、あの!お願いしたお弁当を作ってくれるって本当ですか!」


折りたたまれていて、少し破れかけていたが。女の子はポケットから見覚えのあるチラシを出して、俺に見せながら言ってきたのだった。

うん。そのチラシ俺少し前まで配っていた。である。


この子が社長の思いつき。オリジナル鉄道弁当とやらの記念すべき1人目のお客さんだった。

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