第2話 それは突然決まった
あれは数か月前。
「むー。土日祝日はお客さんが多いがのー。どうしても昼間だけ観光地の方へと向かう電車のお客さんが減るの」
社長が会議。まあいろいろと話し合う日があるんだよ。ってことにしておいてくれ。説明を始めるといろいろ大変なんでね。
まあとりあえずその場でそんなことを社長が言いだした。である。
数か月前の時は――最終列車のお客さんが少ない――で、最終電車は早くするのかと思ったら……。
「人が少ないなら。余裕があるってことだな。じゃんけんで運賃決めるかの」
……。それいいの?ってことが出てきて――まあ本当に実践してましたよ――はい。それはもう過去の事。今はというと。
「お昼……お昼……」
社長は自慢のひげを触りつつそんなことを言い……ちなみに社長情報を追加しておくと。背は小さい。丸い。横に大きい。考え事をするとき手入れの行き届いているひげを触る癖がある……などと俺が思っていると。
「お昼――飯か。飯。腹減ったの。お昼――――そうか。駅弁か!でもただの駅弁じゃ面白くないな――そうじゃの……お客さんの希望する駅弁を――作る。うんうん。世界に一つの駅弁……うんうん。そういえば――確か料理屋の――――そうじゃそうじゃ松本!」
「—―はい?」
いきなり俺の名前が部屋に響く。
あっ。いや、俺松本です。はい。彼女いない歴年齢で間もなく30—―嘘です。30超えました。超えています。ってことはいいか。
「松本。お前。明日から駅弁考えろ」
「……わっと?」
俺の周りに居た他の職員たちが笑いをこらえつつと言うか――まああれだ。巻き込まれたな。ご愁傷様。という視線……うん。笑っている奴もいたわ。
「いいか。土日祝日に限定1セット。事前予約制。お客さんが食べたい駅弁を作る。まかせたぞ」
「……」
「それだと――結局1人くらいしか人来ないのでは……」
俺が意味わからん。何を言っているんだ?と思っている横から疑問を投げかけている他の職員もいたが――まあ社長の耳には届かず。物事が決まりルンルンになった社長にはもうなにも届かない。である。
そのまま社長はホワイトボードに――土日祝日限定。オリジナル駅弁発売決定。お客様が希望する駅弁作る!予算は――などとなんかいろいろ書いて――そのまま決まった。
うん。決まったのだ。
俺は今まで保線関係だったのだが――いきなり調理部門になったのだった。
いやいやいいのかよってか。なんだよそれ。だったのだが――まあ社長を止めれる者は居なかった。
というか。俺以外の職員は関わらないようにと俺からも距離を取っていた。まあ正しい判断だな。だったのだが――ホントなんでそんなことに――だった。
ちなみに俺の名前が響く前に社長がぶつぶつ言っていたと思うが―—こんな俺でも実家がお店をしていたこともあり――経験が0ではない。って――なんで社長そんなこと覚えていたんですかね。俺—―多分入社する時の面接か何かで話したっきり誰にも言ってなかったはずなんですがね。ってもう過去の事だからいいか。
そこから俺は――めっちゃ大変だった。
社長がやりたいと言ったことをするために――日々奔走。
ほとんど0からの準備だったので――もう大変。めっちゃ大変。いろいろあったのは割愛。そして――数か月後。何とか始まろうとしていた。
それが今である。
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