オリジナル鉄道弁当販売中 ~あなたの希望する駅弁作っちゃいます!~

くすのきさくら

第1話 ローカル線

駅数10駅。路線距離は20キロ弱。平均所要時間30分。車両は1両編成。車内はクロスシートの座席。観光バスの車内みたいとでも思ってくれたらいいだろう。

都市部の大きな駅の隅っこ。ホント隅っこ。はじめて来る人ごめんなさい。というほど隅っこで目立たないところに改札がある。

しかし、利用客数はそこそこあるかと思う。この電車の終点の駅が観光地だからだ。基本日帰りの観光客が多い。なので土日祝日になると。朝夕は結構な乗車率となる。一方平日は通勤通学の利用がメインとなる。そんな鉄道会社に俺は現在勤めているのだが――。


ちょっとここ数か月おかしなことに巻き込まれている気がする。

現在俺は都市部の駅の方の改札近くに作られいている簡易テント?とでも言うのか。まあ屋台……ではないがそんな感じのところに居る。

何故そんなところに居るのかって?駅に駅舎はないのかって?もちろん駅舎はちゃんとあるよ。小さい建物が――隣に。

でも俺は最近なんか違うんだよ。うん。鉄道関係ってより――料理ばかりしている。

現に俺の立っているテントのところには旗がなびいていて――。


(オリジナル鉄道弁当販売中 ~あなたの希望する駅弁作っちゃいます!~)


という社長がノリノリで書いたと思われる字が風に揺れている。

うん。俺は何をしているのだろうか。


こんなことになったのは――数か月前のことか。


俺の勤めている会社は自由である。うん。自由。社長が自由。びっくりするくらい自由。何でもしちゃう人。思いついたらやってみる人である。他の社員の人は皆普通である。うん、社長がぶっ飛んでいるだけだ。


ある時は。沿線近くの保育園とコラボ。というのか。駅舎にお絵描きをしてもらったり。車内に園児の描いた絵を貼って見たり――ってまあこれはまだ普通か。うん。


他は――何があったかな?いろいろありすぎたからな……えっと。

夜の利用客が少ないからオバケ屋敷列車してみたり――巻き込まれた職員が悲鳴を上げていた。いろいろとね。怖さや忙しさもろもろでね。


逆に朝は利用客が多くなる列車があって快適に移動してもらえないとかで――車両を増やす……ではなく。いや……車両は増やしたか。うん。パノラマ車両だったか。風を感じてください。的な車両を作ってしまい。連結してみたり――。

車両増やしたのに雨の日とか使い物にならないというね。普通の車両繋げてあげてよ。だったり――。


平日の昼間はほとんど人が乗らないから――さあどうしよう。となった時は謎解き列車。乗客の人がクイズに正解しないと次の駅へと電車が進まないという――うん。運行ダイヤに大変遅延を起こした企画もあったか……。

あっ、うちの鉄道全線単線です。数駅だけ待避線があるだけです。待避線の無い駅で前に電車が止まっていると――詰まります。すべてが詰まります。謎解き列車以外の普通の電車も詰まりました。以上です。


とまあなんか思いついちゃったら社長はやるんですよ。実行するんですよ。はい。

それも1回の会議。集まりというか。話し合いで決まるというか……社長が言ったら決まるという。

まあ自由なんです。それが良いところでもあるのだが――。

まあそういうことは――のちのちというか。まあいいとして置いておこう。


本題だ。

俺は何をしているのか。再度風に揺れている旗を見る。


(オリジナル鉄道弁当販売中~あなたの希望する駅弁作っちゃいます!~)


うん。以上である。


いや、ここで駅弁販売ですね。はい。ちょっと引っかかると思うのは、あなたの希望する駅弁作っちゃいます!だと思うが……うん。作ってるんだよね。


――俺が。


何故こんなことになっているか簡単に話しておこうか。今はお客さんも居なくて暇なんでね。

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