どこの世界でも美味しい食べ物を作ればみんな喜んでくれる。

くすのきさくら

第1話 見た目は重要ではないのだろうか?

一応大丈夫と思われる俺の感覚。五感のうち……聴覚、嗅覚からの情報を頭の中で整理すると――今俺の居る調理場はいい香りがしている。


グツグツという煮込んでいる音がしていたり。ジュージューという焼き音が聞こえていたりとなかなかにぎやかな状態だ。香りも問題ない。香ばしい香りなど幸せな雰囲気にこの空間。調理場はなっている。


のだが――本当にここで作っているのは――食べて大丈夫なのだろうか……一応長年料理を作ってきたと言っている俺の恩人が作っているので――大丈夫だとは思うのだが……うん。先ほども言ったが香りや音から判断するとめっちゃ美味しそうだからね。


でもさ……視覚をプラスするとマジで大丈夫なのか?だった。


俺が目を開けてみると――。


まず目に飛び込んできたのは、何かおかしな色をしているスープ――あれは何なのだろうか?何の一部?というのがまず浮かんでいる。

紫というか黒というか。でもなんか青に見えるところもあるし――見ているとおかしくなりそうだ。というのがある。


でも――不思議なことに香りは大丈夫そう。美味しそうな香りがしているのである。

謎過ぎる状況だ。何をどうしたらこんなに美味しそうな香りがしているのに、見た目がやばいのか。色がヤバイ。うん。ヤバすぎる。


そして少し視線を横へと移動させると――鉄板で焼かれている物もあるのだが――多分あれは……肉。肉だと思う。肉だな――うん。ちょっと自信が無いな。肉と言い切れない。もしかしたら肉に近い別のものかもしれないからな。

確か――どこかに保存していたのか。少し前におっちゃんが持って来て――そのまま鉄板に乗せたんだよな。うん。


いや、俺が少し前まで居た世界の肉では――まあなんか形的には見たことがあるのだが――黄色い肉は見たことないから――うん。あれはなんだ?なんだよな。もしかしたら――俺の居た世界でも探せばあるのかもしれないが――ってか。普通にそのまま焼かれているが――うん。そのままでいいのだろうか?と全く知らない俺が心配になっている――と思ったら。

おっちゃん先ほどのスープにその黄色い肉。まあ……ちょっと黒く焦げたから黒いところも出来たが――うん。投げ入れた。得体のしれない色の中に黄色い肉が投入された。


香りはめっちゃいい感じなのに、見た目が――おかしい。

紫や黒……青?みたいな液体の中に黄色い塊が浮いている。

何かの実験中?こっちの世界ではこれが普通?ともうわけがわからなくなっていた。


俺がちょっと引いている間もおっちゃんは慣れた手つきで料理をしている。


その時俺の横にあった台の上には、先ほど鉄板の上で焼かれていて、今は謎なスープの中に浮かんでいる肉?のあまりが置いてあった。

ちょっとだけ興味があった俺は――恐る恐るちょっと触ってみる。


……。

……。

……。


―—ブニョ……ブニョ。


……。

……。

……。


――あー、ダメだ。予想と全く違う。なんだろう。というのか……あー、あれだ。熱が出た時におでこに貼るシートあるだろ?

あれを水に濡らすとなんかブニョブニョするんだよ。膨らんで。何かジェルというか。ブヨブヨに。うん。あれに近い気がする。

――えっ?そんなの知らない?そりゃ失敬。ならまあ忘れてくれ。とりあえずブニョブニョ。ブヨブヨの肉があった。


ってブヨブヨしている横にも、肉?うん。同じような形で色は――あれだ。俺が知っている肉に近い色。鶏肉に近いか?と思いつつ突っついてみると――。


今度はブヨブヨ。ブニョブニョ。はしてなかった。が。

……ダメだ。また予想してなかった。カチカチだ。ちょっと固めとかではなく。カチカチだった。何だろう。乾燥しきったのだろうか?見た目的には、普通の肉?鶏肉?と俺は思っていたが――見た目と感触がどれも違い過ぎる。うん。さすが――異世界だ。だった。初めて見るものが多かった。というか。初めて見るものしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る