第2話 モンスターを召喚しよう
さあ、防衛戦のためのモンスターを召喚しよう。
命がかかってるからね。
あははは……
「くそ、寝て起きたらダンジョンマスターになってたなんて嘘だろ。あっ、ひょっとして俺の夢か?」
「もう、アスカちゃんったらまだクヨクヨしてるのう? だったら、あたしとエッチなことして現実逃避しちゃう?」
よし、頑張ろう。俺の補佐官ペトラさんからの声が俺に力を与える。このオッサンダークエルフと一緒に朽果てるとか絶対に嫌だからな。
スタイル抜群で美人過ぎるダークエルフなら喜んで受け入れるけど、オッサンでオカマのダークエルフは対象外です。
だいたい、何でこの人は黒と銀のビキニアーマー着てるんだ?
股間がはち切れんばかりに膨らんでるんだよ。キモさ倍増なんですけど!
「いやん、アスカちゃんったらあたしの大事なところガン見してるう。うふふ、触ってみる?」
「いえ、結構です! 本題に入りましょう。防衛はどうすりゃいいの?」
「ううん、いけずう。でも、分かったわ。補佐官として教えてあげる。まずね、メニュー画面を開こうか。メニューオープンって言ってみてえ。そうすれば目の前に画面が現れるはずよう」
おお、ゲームっぽくなってきた。いや、異世界っぽくと言った方がいいのかな。
「メニューオープン!」
そう言うと俺の眼前にゲームでよく見るメニュー画面が出てきたよ。
画面の大きさはノートパソコンくらい。
「おほー、スゲーなこれ」
「うふふ、アスカちゃんったら喜んじゃってえ。可愛いんだからあ。じゃあね、上からアイテム、スキル、装備、ステータスとなってるか確認してみてえ」
「えっ……うん、なってる」
一瞬、吐きそうになったが、なんとかこらえる俺えらい。
「これが、メニュー画面の基礎。ホームページ的なスタート部分よう。じゃあ、次に行くわね。最初だからステータスを見てみようか。ステータスを押してみてえ」
俺は空中に浮かぶ画面のステータスという部分を指で押してみた。
一瞬で画面が切り替わりゲームで見慣れた情報が出てくる。
上から、Lv、HP、力、守、魔、精、速、技、運だ。
「こちらは基本ステータスよう。今のアスカちゃんの素の能力が出てる状態。これから武器や防具をつけると能力も上がっていくのう」
「へえ、これが俺の素のステータスか」
俺は画面をよく見る。
Lv 1
HP 22
力 7
魔 0
守 2
精 3
速 6
技 8
運 4
こんな感じだ。まあ、レベル1ならこんなもんかね。
「やだあ、アスカちゃんの基礎能力ってお子ちゃまみたいでかわいい! 池〇めだか師匠かと思っちゃったあ」
「かわいいってなんだよ。何か失礼だな。俺と池野めだ〇師匠に謝れ」
俺はオカマのダークエルフを睨んだ。
「ごめんなさい、め〇か師匠。あなたは背は低いけど尊敬できる大物芸人よん。そして、アスカちゃんはかわいいマイハニー」
「いや、違う。いや、め〇か師匠はそうだけども! ていうか、何でめだ〇師匠を知ってるんだ?」
「ダメよう。乙女の秘密に踏み込んじゃ。さて、それじゃあメニュー画面の使い方は良いわね? 次はいよいよモンスター召喚よう。画面を最初に戻してスキルって所を押してみてえ」
このオカマダークエルフ、話を逸らしやがったな。
まあ、いい。
今は命が大事。
「ええっと、画面を戻すのはこれか。そして、スキルを押すと」
お、出てきた。
なになに、召喚可能モンスターって書いてあるな。
あれ、でもこれって……
「ペトラさん、ここにあるのゴーレムだけなんだけど?」
「あ、本当だ。やだ、もう、アスカちゃんったらかわいい! 普通ダンマスなら、レベル1でも低級モンスターくらい選べるのにい。それなのにアスカちゃんったらゴーレムのみ。ゴブリンやスライムは基本と思ってたけど違うのねえ。勉強になるわあ。よっ、意外性の男! お礼にフェラしてあげるねえ」
「バカにしてる?」
「バカになんかしてないわよう。むしろ尊敬してるわあ。この能力でダンマスしようとか無茶にもほどがあるもん」
「いや、俺が望んだわけじゃねえし。てか、やっぱりバカにしてるだろ!」
まったく、このダークエルフは……
まあ、今は命が大事。
つまり、俺のダンジョンの防衛戦力はゴーレムのみってことか。
「それでアスカちゃん、今のダンジョンポイント(DP)が画面右上に出てると思うの。そしてゴーレムの横に必要DPがあるはずよう。教えてもらえるう?」
確かにある。
「今のDPは105だね。そして、ゴーレムは90だ」
「つまり、一体しか召喚できないってことね。おめでとう、アスカちゃん。完全に詰みよ。さあ、残りの時間は愛する二人の営みに決定したわあ」
「めでたくねえよ! そして、やらねえよ!」
オカマの誘惑に心が折れそうだ。もちろん、気持ち悪くて吐きそうって意味でね。
「ああん、いけずなアスカちゃんも素敵ねえ。じゃあ、仕方ないから召喚してみましょうか。画面のゴーレム部分を押してくれるう?」
「あ、ああ」
ポチっとな。
「アスカちゃん、押す時はどんなゴーレムが良いか頭の中で想像すると、ある程度は聞き届けられるわよう。だから、体が大きくて力の強いゴーレムを思い浮かべて押してみてえ」
「もう押したよ!」
「あらあ、もしかしてアスカちゃんったら早漏? 大丈夫よう、お姉さんは遅漏も早漏もドンと来いだからあ」
ダメだ、このオッサン秘書。もうヤル気ねえ。いや、別方面へのヤル気しかねえ。
なんかすげえ笑顔だな。こいつ、もしかして俺をいじって楽しんでねえか?
その時、地面にピンク色の光を放つ魔法陣が現れた。
そして、タケノコのように地面からにょきっと出てきたのは看護婦さん。
違った。女性タイプのゴーレムだ。
素材は木製っぽい。パッと見は人間なんだけどね。ナース服も着てるし。
でも、よく見ればゴーレムだと気付く。肌に木目があるからさ。いや、この場合はマリオネットって言った方が良いのかもな。
「もう、やだあ。アスカちゃんったら酷いわあ。頭の中で想像したのが、戦闘力ゼロのエロナースなんてえ! これって、浮気じゃなーい? まあ、あたしは正妻としてアスカちゃんの浮気には寛大だけどう。でも、時と場所と場合は選ばなきゃダメよう。今は戦力増強しなきゃいけないのにい。はっ、もしかしてアスカちゃん。防衛は早々に諦めて思い出作りにシフトチェンジしたの? あたしと二人っきりのエッチより、3Pを選んだってこと? もう、やだあ、アスカちゃんのエッチー」
言い返したいけど何も言えねえ。
だって、このゴーレムが着ているナース服、胸元おっぴろげで超ミニスカートなんだもん。
はい、大好物です。
ああ、俺の性癖がさらけ出されていく。そして、オカマが調子に乗っていく……
「じゃあ、エロアスカちゃん。せっかくだからあ、名前を付けましょうよう。名前がついたダンジョン産のモンスターはねえ、ネームドって呼ばれて能力が飛躍的に高まるの。DPが10必要だけどう、やる価値は絶対にあるわあ」
「おい、言い方! エロを付けるな! 俺はペトラさんのマスターなんだよな? 言ってみれば上司でしょ? もう少し言葉使いを気を付けてよ」
「ごめんねえ、アスカちゃん。お姉さんったら、アスカちゃんの気持ちも考えずに酷いこと言っちゃったみたーい。お詫びにい、あたしの初めてをア・ゲ・ル・ぐふっ」
最後の笑い。俺の上司の部長の笑い方そっくりだった。だいたい、お前の初めてってなんだ? いや、考えたくもないけどさ。
でも、ゴーレムの能力向上は魅力があるね。名付けか……
「じゃあ、響子でいこう」
初恋の女性の名前だ。なんか照れる。
「ブーブー! いやよ、そんな名前わあ。エロくなーい。それにい、ここは日本じゃないのよん。異世界なのよう。もっとエロくてマトモな名前をお願い」
言い方!
響子のどこがマトモじゃないんだ。
自分は異世界らしからぬオッサンダークエルフのクセに!
ちくしょう。
でも、今は先に行くとするか。
異世界なんだから無難にヨーロッパ風が良いのかな?
「じゃあ、マリア」
「イゾルデにしましょう」
ええっ、あんたが名前つけるの?
ちょっと目付きが怖いし。
「イゾルデで良いわよねん?」
「は、はい」
圧迫面接ってこんな感じなんだろうか。
俺が了承すると、イゾルデの体がみるみる変化していく。
肌の木目が消え、どう見ても人間……
とびきりの美人エロナースになってしまった!
なにこれ?
高性能ラブドールとか比較にもならんリアルさだ。
「うふふ、成功したわねえ。じゃあ、次にダンジョンコアの引き継ぎをしましょうかあ」
俺が感動してるのに、オカマの秘書さんは冷静だよ。
見慣れてるのかね。
ええっと、何て言ったっけ……
「ダンジョンコア?」
聞いたことあるな。
「うふふ、ダンジョンコアってえ、このダンジョンの核となるものよう」
ペトラさんが見せてくれたのはピンポン玉くらいの水晶だ。
「これを持っていることでえ、ダンジョンの主人マスターとなれるわけなのう」
「へえ、それだけでマスターになれるんだ」
「じゃあ、アスカちゃん。大きく口を開けてえ!」
「え、何で?」
「ダンジョンコアを飲み込むからよう」
「飲み込めるか!」
そんなん飲み込んだら喉に詰まらせるわ。
間違いなく窒息死する。
「もう、アスカちゃんったら反抗期なんだからあ。仕方ないわねえ。イゾルデ、アスカちゃんを抑えててくれるう? あっ、抑える時はねえ、オッパイをギュッとくっつけなさあい。そうすればあ、エッチなアスカちゃんだと抵抗力が無くなるに違いないからあ」
「イエス、マスター」
「え、俺がマスターじゃねえの?」
今、イゾルデはペトラさんにマスターって言ったよね。あと、オッパイ気持ちいいからやめてください。
「ダンジョンコアを持っている者がダンジョンマスターなのよう。だからあ、今のマスターは、あ・た・し」
へ?
何、その衝撃の事実。
「じゃあ、あんたが引き続きダンジョンマスターやれよ、ペトラさん!」
俺がダンマスやる必要ないじゃん。
「問答無用よう!」
オッサンダークエルフ補佐官の無慈悲な宣告。俺は背後からナース服のマリオネットゴーレムに身動きを封じられ、ペトラさんに無理やりピンポン玉みたいなダンジョンコアを口に押し込まれる。
なに、こいつら、力つええ。
俺が弱すぎんのか?
ステータス、力は7だもんな。
「お、おええっ」
「うふふ、どうやら無事に合体したようねえ」
「あんなもん飲ませやがって。体がおかしくなったらどうすんだ!」
「大丈夫よう。ダンジョンマスターは殺されない限り死なないわあ」
嫌な死因だな、おい。
「さあ、アスカちゃん。いよいよ地上への通路が開かれるみたいよう。覚悟を決めて頑張りましょうねえ。お姉さんも戦うわあ!」
うーん、短い一生だったな。あと、お前はお姉さんじゃなくオッサンだ。
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