第378話 気が合う姉妹と合わない親戚

 愛娘がいとおしくなった私は未央の所に行って、瑠奈を連れて帰ると話すと、

 

「私はこの家に居ろって、強制してないわ。美空がウチにいないから、しばらくは瑠奈がお婆ちゃんの側にいるねって、自分で言ってただけよ。」

 

 と言われて、瑠奈に聞くと、

 

「うん、そ~だよ~。だって…美空ちゃんがいないと未央お婆ちゃんは寂しいもん。だから、瑠奈が一緒にいてあげるの。ご飯は作ってくれないけど…。」

 

 瑠奈が未央のため、自発的に白河の家にいた事を明かしてくれた。

 

「義理の祖母に気を使うなんて、紫音に似てて、バカな子…。でも、働かざるもの食うべからずよ。例え、孫でも何も仕事もしないのに居候をさせるつもりは私にはないの。当然、美空にも同じ事を伝えてあるわ。」

 

 孫だろうと、娘だろうといずれは一人で生きていかないとダメなため、子供の時から働かせると言うのが、厳しい指導をする未央の子育てらしい。


「瑠奈はお母さんと違って、お料理作ると味がダメって言われるの。でも、未央お婆ちゃんは食べてくれるの。本当は優しいの。」


 文句は言われるが食べてくれる事に瑠奈が感謝を述べると、


「まあ、紫音に比べたら、美味しくないだけで、及第点は達してると思うわ。人は褒めると満足しちゃう生き物だし、お婆ちゃんの立場から言うと、母親を上回る目標をずっと持っていて欲しいの。」


 この子は褒めて伸びるタイプでは無いからと言って、気遣いをする孫の瑠奈を膝に乗せると、


「この程よい、おバカさ加減が紫音みたいで良いわ。これで仕事の邪魔さえしなければもっと、嬉しいんだけどね。」


 少し文句を言いながらも、母親似の孫を撫でていた。


(瑠奈は相手の懐に入るのが誰よりも上手いよね。きっと、恵麻が腹立つ部分はこう言う楽に人の心を掴める所、なんだろうな。)


 瑠奈はご飯を作ってくれとは言っていたが、家に帰りたいとは一言も言わなかった。この子はあまり寂しいと言う気持ちに陥る事が無い。母親に会いたいとか、誰かと遊びたいとかを言わない。姉にウザがられて部屋を追い出されても、遊び相手がいなくても、気にもせず家で家事をやってみたり、突然、一人でどこかへ出掛けてしまう。


(警察にお世話になるのを防ぐため、出歩いても、恵麻の鷹や黒子川さんに見つかり、すぐ保護されて連れ戻されるけど…。)


「瑠奈、お母さんの所に帰って来なさい。そこは美空の場所だよ。美空が帰りやすいようにしてくれるのはありがたいけど、瑠奈がその場所を守る必要は無いのよ?未央お婆ちゃんや美空がどうしたいのかは、自分で決める事。返って、手伝わない方が良い場合もあるの…。ね?」


 そう言って、娘に手を差し伸べると、


「うん、分かった~、未央お婆ちゃん。楽しかったよ~。今度は美空ちゃんがいる時にお泊まりするね。それにもうすぐ、帰って来るよ?美空ちゃんは意外と寂しがり屋さんだもん。恵麻お姉ちゃんといい、美空ちゃんもコハるんも寂しがり屋さんばっかりな姉妹を持つと、瑠奈は大変なのだ。」


 瑠奈は未央に楽しかったと告げて、恵麻たちが寂しがり屋だと言っていると、


「へぇ~、あんたはよっぽど…優等生に人格改造されたいのね…。」


 地獄耳の恵麻が殺気を放ちながら、こっちに来ると、瑠奈は慌てて私の後ろに隠れた。


「マッドガールめ、今の瑠奈には最強のゴリラの母親がいるんだぞ~。全然、怖くないもん。」


 私の後ろに隠れながら、何かをしてきそうな姉へ抗議していた。


(プライドが高い姉を煽ったのは、瑠奈だよ?揉めるなら、私抜きで話しなよ。)


「まあ、お母さんにタネはバレちゃったし、あんたには何もしないわよ。」


 恵麻はそう言うと、急須にお湯を入れた。温かいお茶を飲もうとしたため、


「お姉ちゃん、瑠奈も飲みたい。」


 姉と争っていた事を忘れて、すぐに恵麻の隣に行き、自分の分も入れてと要求していた。恵麻も「しょうがないわね」と言って、湯呑みをもう一つ準備し始めた。


(恵麻は自分でやれとは言わないのね。この姉妹は似てない所で馬が合うのだろう、いつもこう言う時は、仲良しだ。)


 小言が多くて上から目線の姉、切り替えが早くて気にしない妹。恵麻と瑠奈は二人でいるといつもこうなのだろう。それにこの姉は茶菓子を妹へ少し多めにいつも渡している。無意識の好意が無ければ、こんな事をしない。それだけ、恵麻は手の掛かる妹の瑠奈が大好きなんだろう。


「確かにこんな仲良し姉妹の姿を目の前で見せられると、美空も年の近い家族を欲しがるわね。」


 未央は私を見て、代わりに産んで貰おうかしら?と言い出した。


(えっ?どういう事?代わりに産むって何?)


 その後は未央も加わって、四人でお茶会を始めた。未央は娘の私へ、変わらない見た目の若さの事をネチネチと言い出し、恵麻と瑠奈は、


「お姉ちゃん、晃也くんは元気?」


 神里 光の息子で恵麻以外の女性が苦手な3歳の晃也くんの事を聞いていた。


「元気よ。私との子供が欲しくなるように教育してるから、ほぼ毎日、子供を作る練習してるわ。」


 晃也くんは美人の母親似のため、他の女に気持ちが向かないように、恵麻が結婚相手として、すでに抑えていた。


(性的な洗脳?この子は本気で低年齢での子作りを狙ってるよ…。)


 娘の性的な事にとやかく言いたくない私が黙って聞いていると、


「その女は下品で淫乱な女なのよ。神里家の後継者として相応しく無いですわ。」


 サラが美空を連れて白河家に戻って来たのだが、天敵の恵麻の話を聞いた彼女が淫乱な女と罵倒した。それを聞いても、サラの事は眼中に無い恵麻は、


「あなたはどうなの?早く子供を作った方が、大好きな桜子さんは喜ぶと思うわよ?安いプライドなんか持ってないで、異性との性的な接触をもっとした方が家のためには、良いんじゃない?」


 将来の相手が決まっている恵麻がサラにマウントを取り出した。それを聞いたサラは「う~ん、う~ん。」と怒りを我慢したあと、私の元へ歩いて来て、


「紫音様、今日の借りを早速、返してもらいますわ。わたくしへの態度の悪い、あなたの娘を叱り付けなさい。痛い目に遭わせなさい!今すぐ!」


 キレたサラは私へ今すぐに借りを返して、恵麻を叱り付けろと頼んで来た。


(気が合わない二人が、私を巻き込んで、ケンカし始めちゃったよ…。)


 恵麻の暮らす神里家でも、プライドの高い二人は会えば、言い争いを始めるらしいが、天才少女のケンカに巻き込まれる人たちは、かなり大変だと言う事が分かった。


 

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