第357話 再び、揃うウチの家の濃いメンツ
蓮を追っていたのにいつの間にか帰国していた麻友よりも、小鈴の子供の紹介には正直驚いた。しかも、相手は確実に外国人っぽいし…、
「小鈴、子供がいたの?お相手はどこの国の方なの?」
父親はアジア人では無さそうなため、尋ねてみると、
「う~ん、分かんない。お婆ちゃんがサッカー留学を許す代わりに良い種を持つ男性との子供を産めって、白人の外国人イケメンを用意してくれたの。まっ、一回の行為で妊娠しちゃったから、相手と実際に会ったのはその一回だけ…。理由は違うけど、紫音と一緒でシングルマザーなのよ、私。」
彼女は普通に素性も分からない男性の子を産んだらしい。
(孫が優秀じゃないからって、やり方がハード過ぎじゃない?)
小鈴の妹で普通の女の子の鈴音には、大学に進学させて、本人の望む人生を歩ませているのに、霊力のある小鈴への仕打ちはヒドイもんだった。しかし、いざ本人に聞いてみると、
「子種の選択肢はアラブ人も日本人もいたんだけど、どうせならって…、一番カッコいいイケメンを選んだの。見て、ウチの子、紫音の確か…瑠奈ちゃんって言ったかしら?その子よりも絶対にカワイイと思うの。」
おバカな姪、小鈴は見た目だけで相手を決めてしまっていた。サラちゃんと言う娘を溺愛するバカ親だと確信した私の後ろから…、
「オカン~、ルー姉が逃げてしもた。師匠もかもてくれへんし…、暇やし遊んで~な~。」
瑠奈に代わる激ヤバ娘の小春が現れた。マリアに毒された小春は関西弁に侵されていて、甘え方まで変わってしまっていた。しかし、その可愛い見た目は健在で、狐の耳と尻尾を持つ私の娘、尻尾を振ったり、耳をピクピクさせている姿はメチャクチャ可愛い。
「小春、丁度良いところに来たわね。あなたの従姉、小鈴とその娘さんのサラちゃんよ。キチンと挨拶なさい。」
私は遠回しに変な言葉使いを使わずに挨拶をしろと、言ったつもりだったが、
「あっ、この子…、お目めパチくりしてて、めっちゃカワイイやん。サラちゃんって言うんやね。ウチの妹にならへん?」
従姉の小鈴への挨拶もロクにせず、娘のサラちゃんの方へ向かって行ってしまった。その態度を見た私は、
「小春、失礼でしょ?ちゃんと挨拶をしなさい!」
当然、叱り付けると、
「あっ、ごめんなさい。え~っと、橘 小春って言います。よろしくお願いします。」
こうやって、叱ると関西弁を止めて聞いてくれる。
(私の意識が数ヶ月間入っていただけで、小春が膨大な知識を吸収しちゃったよ…。もう、姉の瑠奈は妹に勝てないだろうな…。)
私の魂の影響を受けた小春は以前とは別人になり、母親の言うことを聞く、素直さはあるが、私が突き放した事で、母親と程よい距離を取る大人になり、自らの考えで行動をする自我が芽生えてしまった。
「ねえ、紫音。この子は何故、狐のコスプレをしてるの?」
小鈴は当然、狐のコスプレだと言って反応をするが、
「これが違うんだよね~、ほら!」
日向は小春の耳を引っ張って、本物だとアピールをしたのだが、マリアの教育を受けた小春は日向のアゴにアッパーを食らわした。
「師匠が言うてたん思い出したわ。ひなちゃんに耳を触られたら、腹にパンチをして倒せって…、でも、お腹に赤ちゃんおるし、今は止めといたる。」
そう言って、腹は勘弁してやると告げたのだが、そんな事よりも…、
「ひなちゃん、妊娠してるの!」
私は小春がアッパーを繰り出した事よりも、日向の妊娠に驚いた。
「えっ?私って、妊娠しているんですか?確かに五日前にHしたけど…。でも、本当だったら、嬉しいな~。年下の先生は三人目だし、30歳の私は結婚が遅かったから、欲しかったんです!」
彼女も妊娠に気付いていなかったらしい。でも、私の妊娠している姿を見て、子供が欲しくなった事を明かしてくれた。
日向の妊娠騒動でだいぶ、話が脱線したので、私は今の夫ポジションにいる麻友に小春の相手を頼んだあと、日向たちとドラマ撮影に入り、難なくこなしていたが、
(みんな…バカなのかな?本物の妊婦を起用するなんて…。)
前編を取り終えて、放映したあとのため、私の降板はあり得ない事だと思うが、後編撮影のために半年開けて、妊娠のお腹が大きくなるのをドキュメンタリー風のノンフィクションでドラマを作ろうとする、神里 桜子とその孫で私の長女、恵麻のイカれた発想には呆れていたが、当分は産休に入れるくらいのギャラを頂いた私は、監修した人間と脚本家の二人には逆らえなかった。
私は少子化対策と妊娠して子供を産んでも、神里グループなら、手厚いサポート支援がある。その事への広告塔として利用されていた。
(妊婦用の学生服、学生妊娠を推奨する学校なんて…、随分、大胆だよね…。)
私と小鈴の母校は桜子の手によって、学生恋愛許可で妊娠したら、カップル揃って、神里グループの会社に就職内定決定だもん。完全に暇潰しの大学進学の無意味さをアピールして、スルーだ。
(それは将来は会社員が目標の中学生の進学願書が殺到するよ…。)
しかし、会社に就職したあと、離婚して親権を失うと即解雇だからな…。ほとんどの男性は10代で女性の尻に敷かれる。言い方はアレだが、男性のやり逃げを神里グループは許さないって事だ。それが保証される。もし、男がそんな事をしたら、グループが総出を上げて、地の果てまで追い回す。女性の人生の保証をする。それくらいしないと、安心して男性と性行為が出来ないし、子供を妊娠出来ない。つまり、少子化の原因の一つ、妊娠・出産の責任を男性が負わない事を防ぐためにこうして取り組んでいるらしい…。
(まあ、私は夫に不倫されて、逃げられたんですけど…。)
このギャラの高さは、不倫逃走をされた私への手厚い支援?なのかな?と考えていたが、蓮の殺害を宣言していた麻友は帰国したあとは、ずっと神里家にいたらしく、蓮は見つかったのかを聞くと、彼女は笑顔で微笑んだあと、何も答えてくれなかった。
ただ…、帰国した彼女の中には、もう一つの魂がある事だけは見えてしまったため、魂が見えないはずの小春は何故か、麻友の事をお父さんと呼び始めていた。
(蓮の体は始末された?それとも、乗っ取っていた本来の蓮に返した?)
それを聞いても、彼女は微笑むだけだった。ただ、私の知っている元夫の魂は、麻友という女性だったって…事だ。
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