第354話 考えてる事は目を見れば、分かる
小春の体の私は完全に瑠奈から舐められていた。お母さんとは一切、呼ばないし、大人の精神があるんだったら、エロい事をしろと進めてくる。挙げ句の果てには、瑠奈は私の持っていない財力を使い、ファミレスで食べたい物を頼みまくって、私とメグに残飯処理をさせてくる始末だ。さすがに叱ろうとしたら、
「瑠奈がお金を払わずに外へ出たら、コハるんは補導されちゃうね。」
お金を払わないと言って、脅してくるため、黙ってメグと一緒に瑠奈が食べ飽きた物を食べていた。
(覚えてろ、瑠奈。体が紫音に戻ったら、メチャクチャ叱ってやる。)
母親として、瑠奈に甘かった過去の事を反省しつつ、小春の体への精神影響を与えないように、瑠奈を大好きな妹として振る舞わないといけなかった。
「ルーちゃん、お肉ばっかり食べてると、ママに叱られるよ。」
小春が言いそうな事をルーちゃんと呼びながら話すと、
「う~ん、それだよ~。やっと、私の大好きな妹が戻って来てくれたよ。はい、コハるんの大好きなお野菜だよ。いっぱい食べてね。」
瑠奈は私に野菜を差し出して、食べさせてくれた。
(中身が母親と知ってて、こんな真似をするなんて…。野菜は美味しいけど。)
瑠奈は母親の私を妹の小春として、ずっと扱ってくる。バカにしているとも考えたが、瑠奈なりの考えがあるのだろう。でも、妹の立場から見たこの姉はバカだ。恵麻がバカ妹と言っている意味が分かった。
「メグちゃんは好き嫌いが無いよね…。それに腹八分目になったら、食べるのを止めてくれるし、分かりやすいよ。」
瑠奈の残飯処理をするメグは目の前に差し出された物を無言で食べている。横に座る私は汚れた口元をたまに拭いてあげるが、触れられても気にせず、食べる事を止めたりしない。そして、食べたく無くなると手を止めて、トイレに行くか、ボーっとして、私たちが動き出すのを待ってる。
(勝手にいなくならないっていう点で言えば、私や瑠奈は好かれているのかな?)
学校に行ける状態ではないので、橘の家か、白河家の事務所にいるが、一日をマリアと一緒にいるため、紫音だった私はあまり彼女と一緒にいる事が無かった。
「ルーちゃんはメグと仲が良いの?」
我が屋の問題児に聞いてみたら、
「メグちゃんとは親友だよ?ほら、息もピッタリでしょ?」
瑠奈がスプーンに乗ったプリンをメグに差し出すと、パクって食べた。
(欲しいとも何とも言って無いのに、食べる事がなんで分かったんだろ?)
感性が鋭い瑠奈と通じ合うメグ…私には、喋らない無表情のメグの気持ちをどう理解しているかが、分からなかった。
「まだまだ修行が足りないな~、我が妹よ。年頃の娘の目を見て、喜怒哀楽が分かるようになるには、修行が必要なのだ。出直して瑠奈の事を親愛なる姉さまと呼んで崇めるといい~、フハハハハ~。」
得意気にテンション高めな瑠奈は目を見て理解するという、心の通じ合わせ方を教えてくれた。
「スッゴ~いね~、ルーちゃんは、どうしたらハルも出来るようになるかな?」
アホな瑠奈の会話に付き合って見ると、
「ふむ、では、教えてやろう我が妹よ。親友、メグの目を見るのだ。さすれば、メグが我々美人姉妹を如何に慕っているかが分かるぞ。」
そう言われたので、言われた通りにメグの目をじっと見ていると、
(プリン…もういらない。キツネの耳、メグも欲しい…。)
彼女の声が聞こえた気がしたが、プリンはいらないって言っている。
「メグちゃん、プリンはいらないって言ってるよ?ルーちゃん…偉そうに言っていたけど、全然、声が聞こえて無いよね?」
いい加減な事を言っていた、嘘つきの姉を問い詰めると、
「さすがは我が妹。これで三人の心は深く繋がったな。さあ、引き続き、美味しい物を食すと良い。」
しれっと、誤魔化したあと、瑠奈は姉妹の回線を繋いで、声が本当に聞こえるようになった妹の手柄を横取りした。
(私と心を繋いで、メグの声を聞くって…、それは盗み聞きって奴だよ?ルーちゃん…。)
メグが何を言っているかは分かった。でも、声を発する事は無かったため、まだ、問題の解決には至らない。メグは私の耳の事や、
(ルーちゃん、ウルサイけど、好き。でも、そろそろ、お家に帰りたい…。)
そう、メグは考えていたため、注文したものをすべて食べ終えたあと、私たちは帰宅する事にした。
家に帰った私は、いつもの子供服に着替えて、しれっとマリアの部屋に服を返しに行こうとした所で、紫音とマリアに捕まった。過保護な母は勝手に子供たちだけで家を出た事に、マリアは服を勝手に借りた事で狐の匂いが付いた事に激怒していた。
「小春、お母さんは心配したのよ!最近、どうしたの?お母さんが小春に嫌な思いをさせたり、悪い事をしたのかな?」
過保護な紫音が詰め寄って来たため、すかさず瑠奈が、
「お母さん、瑠奈が連れ出したんだよ~、コハるんはお母さんが恋しくて帰って来たんだよ?ほら!」
そう言って、私に小春らしく振る舞えと目配せしてきた。
「ママ、ごめんなさい。」
紫音の体に引っ付いたら、彼女は安堵したのか、私を抱き締めて部屋に連れて行こうとしたが、
「待てや、紫音。お前はこっちでも抱えてろ。ウチは小春に用があるんや。」
マリアは紫音から私を奪って、代わりに瑠奈を押し付けた。
「お前、覚悟しとけよ。今さら、ガキのフリしたからって、許される思うなよ。クソ狐。」
勝手にメグを連れ出したり、服を拝借したりしたため、色々な理由があって、メチャクチャ怒っていた。
「酷い言い方だよね、マリア。私をどうするつもりなの?」
首根っこを掴まれた私が問い掛けると、後ろにいたメグが、
(猫耳と狐耳、親子みたいで可愛い。)と声を出さずに考えていた。
「こんなんが娘やったら、この世の終わりやわ。」
とマリアがぼやいたため、
「えっ、メグの声が聞こえてるの!」と思わず声が出てしまった。
「アホか、んなもん、初めて会うた時から、分かっとるわい!お前も体が狐になったから、聞こえるようになったんやろうが!」
そう言って、猫や狐などの魂を持っていれば、目で何が言いたいかが分かる事を話してくれた。
(可愛い、小春ちゃんみたいに、メグもなりたい…。)
そう言った彼女の表情を見ると、小春への憧れを持っていた。
(なるほど…、メグの考えている事が分かったよ。)
その事を聞いた時、私にはある考えが浮かんだ。
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