第353話 小春と瑠奈の能力共有
メグに新たな感情を芽生えさせるため、小春の体の私とメグ、そして瑠奈は歩きながら、どこに行こうかを悩んだが、瑠奈がたまにはファミレスで外食したいと言われたため、
「今の私、小春だし、お金持ってないよ?」
今の私は4歳児、当然、母親の紫音は私にお金など渡すわけが無い。
「瑠奈はコハるんのお姉だし、奢ってあげるよ~、恵麻お姉ちゃんの仕事を手伝うと全収入の2割を日割りにしてくれるもん。ほら。」
そう言って、ぶら下げた子供が持っているような可愛いポーチから大量の一万円札を見せてきた。
(絶対に白河家の仕事以外も請け負ってるよね?これ…。)
仲が悪いようで、仲良し姉妹の恵麻と瑠奈。気になる仕事内容を聞くと、
「わりと誰でも出来る仕事が多いかな~、恵麻お姉ちゃんは白河家の事務が忙しいから、そのお姉ちゃんの代わりにパソコンでこの株が上がりきった所で売却してとか、一千万で○○の株を買って、タイミングは任せるから売ってとか、主に株式売買がほとんどかな~。
お姉ちゃんは仕事をした実感の湧かない、つまらないお金の稼ぎ方だから、バカのあんたに任せてるって言ってくるけど、本当はお姉ちゃんは瑠奈に失敗させて、損失を出させたそうだけど、天才瑠奈様に負けると言う事は存在しないのだよ。我が妹、コハるんよ。」
そう言って、株式売買では負け無しだと小春の姿の私に自慢してきた。
(それで、恵麻と瑠奈は母親の年収を軽く数日で越えてくるのね…。さては、3億円のあのシャチを母親にナイショで買ったな…、この子。じゃないと、シャチロボの管理を瑠奈に譲るなんて…あり得ないもん。)
一般人の私の裏でお金を難なく稼ぐ激ヤバ姉妹に、私は紫音と言う母親を続ける意欲を失いかけた。でも、私の魂は元々、昭和生まれでお金持ちの家に生まれた人間のため、程よく、お金に困って、それをやりくりする生活が好きだった。
「瑠奈、一万円だけ持って、あとの大金は恵まれない人たちに募金して来なさい。瑠奈は才能に恵まれた人間だから、弱き人を助ける使命があるのよ?分かった?」
今は小春の体だが、母親らしく、優れた神里家の血を引くのなら、必ず、行わなければならない行為、ノブレスオブリージュの精神を娘の瑠奈に伝えた。
「しょうがないな~、可愛い妹にカッコいい姉の姿を見せないといけないもんね。でも、コハるんは私の妹だから、今日はその一万円で奢るよ。」
4歳児でお金への執念が無いため、瑠奈は素直に聞いてくれた。
(他の人にバレないようにしなきゃ。まあ、恵麻から出てるお小遣いだから、税務的には親権を持っている神里家の管轄だし…。お金の行き先は募金で良いよね…。)
こうして、忙しい母親の体では、知り得ない情報が次々と出てくる。
「瑠奈の能力って便利だよね~、体が大人になれるんだもん。」
私は大人の小春の姿でメグと瑠奈を連れて、ファミレスに行き、席で大人になれる瑠奈の能力についての談笑をしていた。
「そのせいで、瑠奈は今、使えないんだけどね。」
瑠奈は通常の4歳児の姿で私へ文句を言っていた。
「そっか~、能力共有している間は双子の片方側は能力を奪われている形になるんだね…。」
小春側が瑠奈の能力を使っていると、瑠奈は成長変型能力を使えない、反対に瑠奈が小春の九尾の力を使うと、小春から狐耳と尻尾が消える。繋がる双子ならではのデメリットが発生するらしい…。
「あっ、だから、瑠奈は狐耳を生やしたりしなくなったんだね…。小春側に狐耳が無くなるとどうなるの?」
瑠奈に尋ねると、
「力を失うみたいだよ?コハるんの体が疲れやすくなったり、精神的に弱くなるみたいだよ?瑠奈とコハるんは優劣が決まっていて、繋がっている時はコハるんの方にデメリットが大きくなるの。」
瑠奈側が自分の能力を奪われても、ダメージは無いが、小春側には相当な疲労ダメージと精神ダメージが来るらしい。
(それで瑠奈は九尾への変身を止めたのか…。)
「でもね、お母さんの体でコハるんの能力を使うと、反対に力が増すらしいよ?元々、妖力しか無いコハるんにお母さんの魂が繋がって、霊力を与える形になるんだよ。つまり、お母さんの魂を持ったコハるんが人類最強って事だって、能力計測をしていた恵麻お姉ちゃんが説明してくれた。」
大阪で出会った本物の九尾の狐を圧倒したのは、私が小春の体を使う事で紫音の体の時よりもパワーアップしたかららしい…。
「元に戻れない理由はそこだね…。小春の魂は妖力しか持たないのに、狐の体じゃない紫音の体じゃあ、妖力が使えないから、今は普通の一般人の体に近くなった。すると、小春の体は九尾の妖力と瑠奈の遺伝子で作られた体って所かしら?」
一般と変わらない体になった紫音と、半分が妖怪の体である小春。その事を会話内容で理解した私に、
「元に戻れないのなら、今は大人しく、瑠奈と恵麻お姉ちゃんの妹として、可愛がられていれば良いと思うよ。万が一、戻った時に環境が変わっていたら、辛い事も増えちゃうだろうし。」
瑠奈は本人のためにも、小春らしくしている事が必要な事だと話していた。
「うん、でも、今はメグちゃんの事をどうにかしてあげたいんだ。小春の体に困難な経験を積ませるって言うのも、母親として出来る事のような気がするから…。」
私は紫音の体の小春が意外にも何でもこなせる万能な点に驚いた。料理も瑠奈や美空よりかは断然に上手だし、母親らしく子供の面倒見も良い。仕事も難なくこなせている。私が紫音の体で六年間、真面目に生きてきた経験が小春の魂でも、問題なく通用する結果になっていた。
なら、今の私が小春の体で取り組んで来なかった事を考えたり、困難に立ち向かう事をしていけば、元に戻った時に小春は瑠奈に並ぶくらいの能力に届くようになるので無いかを考えていた。瑠奈への劣等感を拭い、自信を持って行動できる人間になれるはずだと…。
「お母さんみたいな、真面目っ子キャラは二人もいらなくない?どうせなら、大人の経験を積ませて、エロいコハるんにしてあげようよ~。幼児とエッチしたい大人もいるんだから、そこら辺の層を狙ったエロ狐路線が瑠奈は良いと思いま~す。」
瑠奈は妹を変態路線に進ませたいらしい…。
「却下。エロ路線は瑠奈がやりなよ。」
もちろん、母親として認められないため、却下した。
「瑠奈はお姫さま路線だもん。お母さんや大人コハるんみたいにエロの資質は持ってないもん。」
自分はみんなから愛されるお姫さまキャラだと言って、巨乳な母親や狐の影響で妖艶女性になる大人の姿の小春とは違う事をアピールしていた。
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