第346話 夕食後はやっぱり女子トーク

「ひなちゃん、起きて。ご飯食べないと、夜にお腹が空くよ?」


 夕食を食べる前に日向を起こそうと擦っていると、


「はっ!ケモミミの先生!好きです。」


 目覚めの言葉は愛の告白?日向は飛び起きるなり、作ったご飯を食べずにずっと私に生えた耳をイヤらしい手つきで触っていた。


(ひなちゃんが、何度も小春を拐おうとしていた意味が分かったよ…。知り合いじゃなきゃ、通報する変質者レベルだよ。)


「分かったから、早くご飯を食べなよ。」


 私が食事を促しても、一向に食べる事をしないため、放置して三人で食事をすることにした。


「お母さんが狐モードになったから、ひなちゃんが壊れた~。」


 瑠奈は私を責めてきたが、


「仕方ないじゃない。この姿で今、怪しい霊気が近くに無いかを探っているんだから…。」


 そう言って、変身した理由を話すと、


「えっ?お母さんは瑠奈の可愛さに嫉妬して、張り合ったんじゃないの?」


 アホの子、瑠奈は私が何も考えずにこの姿でいると思っていたようだ…。


(恵麻が連れて帰らなかったのは、やっぱり…事務仕事の邪魔になるからだよね?ウルサイ瑠奈を大阪にいる私へ押し付けたよね?)


 よくよく考えるとシェリちゃん捕獲作戦に瑠奈はいらなかった。シェリの中にいたアイツは瑠奈より強かったし、シャチロボもいたし…。


 5人も娘がいるとそれぞれの相性やいつも一緒にいる相手が決まってくる。我が家の人気者の小春は家族全員と仲良し、いつも誰かといる。美南と恵麻は互いがクールでサバサバしているから、その程よい距離感が心地良いみたいで白河家で遅くまで、二人きりで話している所をよく見る。


 言葉を話せないメグは年の近い小春や猫のマリアと一緒にいる事が多い。どうやら、耳が良いマリアは声を出さない静かなメグを気に入っていて、娘を可愛がる母親のように面倒を見てくれている。


 瑠奈を除く四人の相性は問題ないが、瑠奈は大人の美南とは嫌みの言い合いをしたり、無抵抗のメグを着せ替え人形のように遊んでいる所が見つかり、マリアと揉めたり、恵麻に対しては、大好きな姉弄りをして怒らせている。


 我が家の嫌われ者の瑠奈は普段は未央の娘、美空と一緒にいるのだが…、習い事の日は美空がいないため、姉の仕事場に乗り込んでは、イタズラや私の真似をしながら、姉を子供扱いするらしい…。


(美空の習い事を瑠奈にもさせたいんだけど…。)


 来年は幼稚園の年長になる瑠奈へ習い事をさせたいのだが、すぐに飽きるため、すべて長続きしない。熱中出来ないのは、そつなくこなす天才肌ゆえの悩みだろう。


 もちろん、小春とは別のアプローチで誰とでもすぐに仲良くなれるが、若干ウザいため、人によっては嫌いになる。でも、日向とは何故か…、


「ひなちゃんの彼って、超イケメンだよね?Hは上手なの?」


 瑠奈は日向に性的事情を聞いてしまうのだが、


「恵麻ちゃんからもらった薬のお陰で、バッチリだよ~。あの薬を飲んだら、野獣の目付きになって、目の前の女を妊娠させたくなるみたい。私も今年で30歳だから…、子供が欲しいもん。」


 日向は質問に対して、包み隠さずに何でも話すバカな子なのだ。


「そんなに子供って欲しいですか?他所の子まで育てる紫音さんの所は特殊だとしても、生理だけでも辛いし、妊娠した自分の姿を想像できません。」


 まだ二十歳になったばかりのエミリは缶ビールを飲みながら、本音を漏らしていた。


(エミリちゃん…、何でもう、お酒を飲む姿が様になってるの?そんな姿を見たら、アイドルファンが泣いちゃうよ?)


 体が変われど、私は昔からお酒を飲まない。未成年の子供たちにそんなダメ姿を見せたくないからだ。だからと言って、お酒を飲む人に不快な気持ちも持たないし、人それぞれだと考えているため、普通にしている。しかし、日向もお酒を飲まないのに、常にアクセル全開のため、話せば、本音がポロポロ出てくる。


「何となくだけど…、お腹の子供はまた女の子の気がするんだよね~。この体は女性の遺伝子が相当強いから、女の子が生まれやすいのかもって、恵麻も言ってたし…。」


 とにかく、この体は女性を引き寄せる。今もアイドルの先生って言われてるし、再会したあとの日向はこう言う風にちょくちょく私へ会いに来る。エミリにだって、「私の家に泊まって下さい」って言われて、こうしてお邪魔している。


「私は男の子がいいな~。いつまでも若くて可愛いお母さんが好きって、言われたいもん。」


 日向は見た目の若さを自分の子供に認めて貰いたいから、男の子が欲しいと言っていた。


「でも、本当はケモミミっ子が産みたいです。先生のお腹の子供は恐らくケモミミっ子だろうって恵麻ちゃんが言ってました。狐に乗っ取られた蓮さんとHしたから、ケモミミの子供で間違いないですよ。」


 日向が私から離れない理由は私のお腹の子供が狐の子供だと思っているからだった。


(痛みに耐えて、苦労して産んだ子供に尻尾が生えていたら、絶対に驚くよね?立派な耳と尻尾ですねって産婦人科のお医者さんや看護師さんに言われる可能性があるって事だよね?)


 私が産む予定の次の子は、狐に乗っ取られた時の蓮さんとの子供だ。普通の人間の子を産みたい私には、取っておきの作戦がある。お腹の子供の産まれる寸前に狐要素を私がお腹の子から奪うって言う作戦だ。これなら、母親の私に狐耳と尻尾が生えてしまうが、恐らく…人間の子供は、ほぼ確定で産まれてくれるだろう。


「男になって、ケモミミの先生に子供を生んでもらうのも良いですね~。男になりたいな~、先生とHして、妊娠させたいな~。」


 日向はかなり歪んだ思考を私たちへ明かしてきた。所が、そんな気味の悪い思考を暴露した瞬間に、身の毛立つ感覚に襲われて、霊が見えずに耐性の無い日向とエミリが一瞬で眠るように気絶してしまった。


(ヤバい奴が来る!瑠奈には催眠効果が無いみたいだけど…、)


「瑠奈!感じる?何かが起こっているわ。」


 私はすぐに瑠奈へ呼び掛けると、


「うん!お母さん。たぶん、幽霊騒動の元凶が近くに現れたんだ。」


 思わぬ形で元凶と出くわす形になりそうな私は瑠奈に警戒をするように告げたあと、


 瑠奈も察知したため、すぐに九尾の術を使い、その場にいる三人が悪霊の能力に掛からないようにしたあと、スカートのファスナーから尻尾が出るように取り出し、悪寒がした相手が来るのを待ち構えた。

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