終章 会社に妊娠報告をすると…、
私は白河家に入ると、妊娠しているかどうかを確かめた。
(反応ありだ…、これは妊娠しているね。)
恵令奈の時は体が重くなって、死にたくなるくらい生理が辛かったけど…、この体は体力がありすぎるから、けっこう痛いけど、忙しくしている間に生理が終わっている。BMIも平均値だし、排卵日が終わると、平均的な人よりも妊娠しやすい体なんだろう。
黙っておくと後が怖いため、私は白河家の母親、未央に報告すると、
「妊娠?恵麻から報告は来ているし、そんなのもっと前から、知ってるわ。それに桜子さんが捨てたあなたに接触してきたでしょ?その時点で気付きなさい、まったく鈍感な子ね。」
未央に報告すると、7月末くらいに恵麻から報告が来ているから知ってると告げられた。
(娘とはいえ、勘が良すぎない?感知能力が高いから私の体の変化に気付いたのかな?)
恵麻がなぜ?私の体の変化に気付くのかを分からずにいると、
「恵麻が言ってたわよ。紫音の体が若返ったのは、妊娠が影響したからだって。体は最良な状態へのリセットされたって言ってたし、出産の時は痛いわよ~。孫を望む母親としては男の子がいいわ。ヨロシクね?」
私が無意識で出産するためにクラゲの生命エネルギーを奪い、若返った事を教えてくれた。それに私の母親である未央はどちらかと言えば、喜んでいる感じだった。妊娠報告を受け入れられている状態だったが仕事をどうするのか?聞いてみる事にした。
「あの~、妊娠後期の仕事は…。」
気になる仕事の話をすると、
「紫音、今のあなたはウチではまったく役に立たないじゃない…。繁忙期も過ぎるし、お腹が大きくなってきたら、大人しくウチで家事でもしてなさい。その間の給料は減るけど、仕方ないから家政婦としてちょっとは出してあげるし、ウチは恵麻があなたの代わりに働いてくれるでしょ?」
今の私は白河家の通常業務を請け負っていないため、役立たず呼ばわりされて、妊娠でお腹が大きくなったら、家の家事でもしていろと突き放された。
(未央お母さん…、私が役立たずじゃなくて、本部からのめんどくさい仕事を私に全振りして来るんでしょ?通常業務をしたら、もっと活躍できるよ?)
まったく仕事の出来ない娘扱いをされたが、言い返すと母親に口答えするなと鬼の説教が来るため、黙っていた。
(娘の私に酷い扱いだよね…。もしかして、こうなる事を予測して通常業務から私を外したのかな?)
女として、一枚も二枚も上手な未央と当初から仕事で私を当てにしないようにする努力をしていた娘の恵麻の行動に女の強さを改めて実感した。
(いつの時代も、女はしたたかさが無いと生きていけない…。家族の妊娠の一つや二つで動じないって事?)
女としても、母親としても頼りない私は、妊婦として暮らすこれからの生活を考え込んでいた。
「紫音、あなたが不安なのは分かるわ。だからこそ、あなたが模範となり、少子化の世の中で生きる、理想の女性像を世間に見せるべきじゃないの?あなたの生き方がこれからの女性としての生き方として憧れられる世の中を作るのよ。」
突然、何かに目覚めた未央が私を諭すように話すと、背後からいつものように神里の母さんが現れて、
「そうよ、紫音。世界一可愛い人気者になるの。あなたの世間での人気が上がれば、妊娠しても自分には得な事ばかりだと、考える女性が増えるの。結果…、日本の少子化問題は解決されるのよ。さあ、すべての女のために立ち上がりなさい!」
謎の母親同盟が私の妊娠を少子化ビジネスに使おうと企んでいた。
「怖いよ!二人とも何?私にいったい何をさせるつもりなの?」
訳の分からない事に巻き込まれそうな私が逃げようとすると、扉の向こうから日向が現れて、
「先生、これは旦那を姉嫁に寝とられて、離婚された悲劇のヒロインに妊娠が発覚して、それでも産んで育てようと決意するノンフィクションドラマです。これは絶対に良い賞が取れます。と言うわけで、撮影は9月より始まりますので、妊娠発覚から無事出産までの間、よろしくお願いいたします。」
看板タレント恵令奈を失ったこの芸能マネージャー日向も、ウチの母親と同様、気が狂っていた。そんな私にトドメを刺してきたのは、
「ここでの仕事で戦力外の妊娠したお母さんは体で稼ぎなよ。見た目だけの悲劇のヒロインが自分の体を身売りするまで堕ちるって言うのも…、見ている視聴者はざまぁみろって、思って喜ぶはずだよ?」
どうやら、みんなして妊娠したあとの私の使い道を考えていたらしい…。
「みんなして、私を何だと思っているの?妊婦女優なんて聞いた事が無いよ!R指定決定のクソノンフィクションドラマが完成するよ!」
さすがにこの扱いにはキレた。怒っている私に、
「分かるわ、紫音。妊娠初期の体調の変化でイライラしているのよね。ギャラの方は安心して、子供たちが生活出来る量を出すつもりよ。それにもう…あなたが日本から帰ってきてから、ずっと撮影は始まっているの。」
桜子は今ある現状のすべてがノンフィクションのため、今も撮影中の物語だと語りだした。
(もう嫌だ…。蓮さんとの離婚もその後の妊娠も計算の内に入れてくる、この母親に弄ばれて私の人生はメチャクチャだよ…。)
「先生、さすがにノンフィクションでも、セリフに一部編集を加えたいので、台本を脚本家に作ってもらってます。そちらの撮影はお腹が大きくなって目立つ前に撮るつもりなので、出来れば…お盆明けに取り直したいのですが…、スケジュール調整をお願いします。」
日向は私にその台本を渡して、桜子と未央にお礼を言ったあと、「先生の女優デビューの説得をしてくださってありがとうございます。」と握手をして帰って行った。
(私の意思は無視?ノンフィクションドラマは決定なの?)
とんでもない事に巻き込まれた私の近くに恵麻がやって来て、
「あっ、お母さん。今回の事件は私とばあばで片付けたから、それにメグちゃんもお母さんの養子とするね。年齢的には私のより年下で瑠奈よりも年上だから、見た目的には複雑だけど、養女だから…関係ないよね。ただ、お母さんの今の収入じゃあ、養女として迎え入れられないの。だから、お母さんはこの仕事を受けるしか、方法が無いよ?」
一般会社員並の年収では、養女を増やせないと告げられた私は、この仕事を断れないように仕向けられた事を理解した。
(私の人生は、常に悪女たちの手のひらの上にいるって事ね。)
桜子、未央、恵麻、年齢も立場も違う三人の悪女に踊らされる私だった。
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