第328話 触ると危険な猛毒娘

 大きな反応がしていたゲートの中には大きな生命体が存在していた。それを調べていたら、怪物の触手がその場にいる全員を捕まえようとしてきた。他の二人が交わす中で、私だけは捕らえられて宙吊りの目に遭い、特に抵抗しないせずにいると、丸呑みされる形で食べられた。


「紫音、なに喰われとんねん!」

 

 触手を交わしながらマリアがそう叫んでいたが、

 

「ああ、あんな毒物を食べたら…、お腹を壊すじゃ済まないよ。」

 

 岡崎さんは抵抗しない私の行動を理解していたのか、食べた物は毒物だと言って、未確認生物の事を心配していた。


 彼の予想は的中して、私を食べた怪物が苦しみ始めて、耐えられなくなったのか、すぐに私を外へ吐き出した。怪物に勢いよく吐き出された私は受け身を取りながら、着地したあと、

 

「溶かして獲物の身体を食べる訳じゃ無いから、唾液的な物は無いのね。そうすると、魂を同化させる融合に近いって事かしら?なら、あなた達の天敵の存在、猛毒の魂の摂取しようとしたから、触れた部分は焼けるように苦しいでしょ?」


 東京で瑠奈の生命エネルギーを奪おうとしたクラゲに似た未確認生物は逆に奪い取られそうになり、慌てて自分の世界から追い出した。瑠奈は私の血を正統に受け継ぎ、私が産んだ子供だ。蓮の体は能力が無い一般人なので、瑠奈の力は私から引き継いだ能力。そんな娘よりも上質な能力を持つ人間の生命エネルギーを摂取しようとすれば…、当然、猛毒を食した形になって苦しみ、こうなる。


「紫音、コイツって生け捕りちゃうの。えらい苦しんどるし、そのうち死んでまいよるで。」


 マリアはあまりに苦しそうな未確認生物を見て、今にも死にそうな感じだと話して来たので、


「大丈夫よ。毒の量は致死量にしなかったし、内部の核を焼いたから、かなりの苦しみを味わったあとに力を失うはずよ。でも、コイツは死なない。それくらい多くの人命と融合したんだから…。」


 今はこんなに苦しいんでいるが、生命エネルギーを蓄えすぎて丸々と太ってしまっているこの生物が死ぬ事は無いと話して、


「わざと飲み込まれて、この生命体の体内にある、動力機関を焼いて破壊したし、この生物はもう、ただ生きているだけで、なにも出来なくなる。あとは岡崎さんが本部に連れ帰って、幹部の昇進手柄にしなよ。」


 生け捕りは達成した。この生物に似たクラゲを解剖した恵麻は、もういらないって言うだろうし、本部に連れて行って処断して欲しいと彼に告げた。



 生物の動きが止まると、不思議生命体は脱皮したみたいに小さくなり、


「しっかし、こないに小さなるもんなん?」


 マリアは完全に力を失って何もしてこない、クラゲみたいな未確認生物をツンツンしていた。


 体内の核を破壊されて、融合が溶けたこの生物は、体長50㎝くらいの前に見たことあるクラゲ型に姿が戻っていて、何でも捕食していた頃に比べるとおとなしく、私たちの近くをプカプカと浮いているだけの存在へと変わっていた。


「無害化したら、人によっては可愛いとか言って、ペット化しそうなサイズだけど…、そもそも、霊が見えない人には何も見えない生き物だし、霊が見えない人間には、存在を確認出来ないから、世間で飼う人間はいないはず…。」


 見ようによっては可愛い見た目のため、騙されるが…、コイツに侵食された途端、かなり激ヤバ生物になる。人の欲や望みをエサに成長する生き物だから、もし、何らかの形で核が再生した場合、再び、生命エネルギーを求めて人を取り込もうとする。



「なあ、紫音。小春の力を解除して人間に戻ったんは分かるけど、あんた…若返ってへん?」


 マリアが今の私の姿を見て、少し若返っていないかと聞かれたので、


「マリア、私はまだ20代前半なの。若いから、若返って無いのかを聞くのは適切じゃないよ。」


 まだまだ、現役世代で22歳になったばかりの私だったが、


「あっ、ホントだ…。胸が縮んでるし、お尻も小さくなってる…。生命エネルギーに触れてしまったからあの頃の姿に戻ったのかな?」


 忘れもしない…高校一年生のあの夏、私がこの体になってしまった頃に若返ってしまったらしい。それを見ていた岡崎さんがアゴに手を当てながら、


「やっぱ、化け物は紫音ちゃんって事だよね。もしかして…その体って、数百年ぐらい生きているんじゃない?橘 紫音って言うのも偽名かもよ。案外、前の体の主が老けずに死ねないその体の事で悩んでいて、死ねる体への移動を望んでいた。彼女は恵令奈さんの体なら、その天寿を全う出来ると思い、君と体を入れ替えた。現に君の魂はあの6年前からまったく変わらずに若いままだよ?いや…むしろ、恵令奈ちゃんの体にいた時よりも若返っているよ。」


 魂の色を見る能力が長けている彼は老いるはずの魂まで、その体の影響を受けて若返ってしまっている事を言い出した。


「ホンマやで、愛華姉さんでさえ、悪霊の生命エネルギーを摂取してるから、見た目は老けへんけど、魂は老けてきとる。今が50やから、人生の半分はちゃんと折り返しとる。せやけど、紫音は体も魂も若いままやん。


 橘のオカン達は紫音の本当の両親やのうて、何らかの事が起こって、赤ん坊まで若返ってしもて、記憶を無くしていた紫音を育てただけなんちゃうか?実際、紫音のオカン、過去の事はなんも語ってくれへんもん。紫音のオトンとも仮面夫婦やし、そのオトンは娘を愛そうともせえへん。それは…、自分の本当の娘やないって知っとるからやで。」


 紫音の母親と仲の良いマリアは、紫音の母親が過去の事を一つも話してくれない事を語り、ずっと疑問を感じていた。紫音との関係も疎遠だった両親にも何やら、深い訳がある…そんな話をしていたが、


「まあ、今はそんな話をしていないで、調査完了報告を白河家と本部、それぞれにしたいし、ゲートから出て解散しよっか?」


 仕事の報告をしようと言って、真相は後回しにして、出生の秘密の話を終えた。



 岡崎さんはフワフワと浮いているクラゲ生物を連れて本部へ報告をするために帰っていき、私とマリアは白河の家に戻り、今回の結果報告をする事にした。


(まあ、年を取って人生を長く生きていると、知らない真実も色々と分かってくる。紫音は記憶を取り戻したって言っていたけど、どの辺りまで思い出したのかな?色々と聞きたいけど、私は離婚協議の話し合いの結果、神里家に近寄れないし…。もしかして、母さんはそこまで理解して、恵令奈を囲ったって事?)


 私の周りで起こっている現実の出来事に、この後に大きな流れがやってくる…そんな気がしてならなかった。

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