第322話 高齢者が抱える最大の闇
行方不明高齢者の謎を調査する私と瑠奈。一人の行方不明者の家族と会った私たちは行方不明者と家族には何かしらの問題があって、他の単身者など場合でも、それらに繋がる同様の何かがある事を感じていた。
(裕福な家庭は老人ホームで暮らせるけど、一般の年金生活者には厳しいかもしれない…。老人ホームの人間はお金に絡む、何かの事件に巻き込まれた?)
私がまず考えたのは、生活苦で死んでも構わないと考えている者たちに誰かが何かをしてて、わりと裕福な老人を拐っている可能性だ。
(でも、それでお金を動かしたら、警察もその動きを察知するはずだし、内通者みたいな人がいない限りはすぐに犯罪の匂いを感知されてしまうはずだから、その考えは違うかも…。)
誰が、なんの目的があってこんな事が起きているのを突き止めないと厳しいと考えていると瑠奈が、
「ばあばがお母さんの事を綺麗事ばかりのダメ人間っていう意味はそう言う事だよ。老いた人間ほど、この世の中に不要な人間はいないんだよ?失踪して喜ぶ者は大勢いるの。国は高齢者がいなくなると年金問題を解決せずに逃げ勝ちできる。地方自治体も住んで貰うなら、高齢者よりも税金を払う世代の方が絶対に喜ばれる。人は人権の傘に守られているだけで、人権はすべての人間に平等をもたらす万能な権利じゃ無いの。」
激ムズな高齢者問題の真理を理解している4歳児になんでそんなに人権とか、法律に詳しいのかを尋ねると、
「恵麻お姉ちゃんが買ってくれた本に全部書いてあったよ?法律の中身は全部覚えたし、お姉ちゃんにもう少し詳しい事を教えてって言ったら、今度はこれを買ってくれたの。」
そう言って、瑠奈が今、読んでいる本を見せてくれた。
「資本主義と社会主義。え~っと、これは近代世界の歴史本?」
天才少女恵麻はとんでもない物を妹に買って読ませていた。
「前の本は六法全書って書いてあったよ~。ページ数だけ多くて読むの大変だったけど、中身を全部覚えたってお姉ちゃんに言ったら、お母さんの娘で私の妹なら、当然よ。覚えた事をアウトプット出来ないままじゃ、あんたは二流よって言ってた。お母さんもお姉ちゃんもアレを駆使しているなんて、スゴいなって思ったよ。」
恵麻は4歳児の妹に六法全書を買って、勉強しろと言ったらしい…。
(恵麻が一流で、瑠奈が二流だったら、六法全書の中身を知らない母親の私は三流以下よ?)
正直に言うとこの体はあんまり勉強に向かない。運動能力が桁外れのため、勉強をしなくても問題無いと思っている所があるみたいだ。瑠奈は親の良いところだけを受け継いだ才能に溢れた子供のため、性格以外は優等生。そんな優等生の娘を前に、
「瑠奈は高齢者を邪魔だと思う人間が何かをしているって言いたいの?」
言葉をそのまま受けとるとそうなってしまう。瑠奈にそう尋ねると、
「少し違うと思う、きっと、本人が強く願ったんじゃ無いのかな…。相当な負の思いを持たないと、死を手助けする人や悪霊は寄って来ないもん。」
瑠奈は本人の強い願いで行方不明になったのではないのか?と言った。
「認知機能の低下で自我が完全に失われるのを恐れて自ら死を選ぶ、日本では安楽死を認められていないから、残りの寿命を悪霊に捧げたってところかしら?」
可能性がある事を色々と話していた所に恵麻からのメールが届いて、その特別老人ホームでの失踪者が多い事について調べた結果を送ってきた。
「う~ん、性別年齢、家族構成、認知症の進行状態もバラバラだし、共通点は無いとなると…、瑠奈の言うとおり、本人の希望で命を捧げた可能性が高いのかな?」
このデータだけでは、確証には至らないため、私は、
「他の場所でもいなくなった人がいるらしいし、調べたいんだけど、瑠奈は付いてきてくれる?」
まだ、調査が必要だと言って他の場所に行くと瑠奈に伝えた。
「行く場所はお母さんに任せるよ。瑠奈は雇われの身だもん。」
お金が発生している以上はなんでも仕事をすると言ってくれた。
(なんか、いつもと違って、素直だよね…。何か大きな悪意を感じているって事かな?)
どちらにしても、魂があの世へ行っていない事は確実だから、現場の瑠奈も事務をしながらサポートしてくれている恵麻も私より有能なら、事の重大性に気付いているはず。
その後、単身者で行方不明らしい高齢者がいる事を聞いて、情報を得るため、元警察幹部の岡崎さんを呼びつけた。
「紫音ちゃん、僕はもう、警察じゃないの知ってるでしょ?それに君たち親子は怖いし、トラウマなの!」
弟の犯罪行為により、警察を依願退職した岡崎さんは稼業を継いでいた。私の存在は彼にとって、恐怖の存在かつ、命の恩人のため、こうして呼んだらすぐに来る。
「おじさん、大人になった正義の瑠奈ちゃんパンチはブッ飛んで骨折だけじゃ済まないかもよ?」
瑠奈は黙って協力しないと正義の鉄拳をお見舞いすると脅していた。
「分かったよ、本部の役職は辞めていないから、裏に手を回して、家宅捜査をさせるよ。でも、安楽死を選んでいるなら、身辺整理をしてから行動するものだと思うけど…。」
部屋を処分してから死ぬものでは無いのか?と聞いてくるので、
「うん、それもそうだと思うし、少なからず…自分の意思以外で発生する事象なのかもしれないね。例えば、突然、目の前に現れて死にたいかどうかを尋ねてくるタイプの悪霊がいたり、悪意に取り憑かれた人間が現れるとか?」
私はその手の準備する前に命を絶たせるパターンも考えている事を話した。
「僕の所の仕事は減ったよ?それは他者に奪われる命よりも、自ら選んで死ぬ命の方が増えたからだと思う。自殺などの案件で転生を待つ場合は白河家の管轄の仕事だろ?」
岡崎さんは自分の仕事は減ったと話していた。
「おじさんは瑠奈の部下に任命してあげるよ。こんなに可愛い子と仕事が出来るなんて、幸せだよね~。」
瑠奈は岡崎さんの肩を叩いたあと、「親愛なる我がしもべよ、さぁ~、大好きな瑠奈ちゃんのために調査へ行ってこい。」とアゴで使い出した。そんな彼は立ち去る時に、「君の血を引くこの子は将来、ロクな大人にならないよ。」と告げて去って行った。
(それはあなたも同類だよ。あんな家庭崩壊をほったらかしにしているんだから…。)
私は家庭に入らないからと言う理由で夫に捨てられて、娘の瑠奈は自意識過剰で非常識、この仕事をしている関係者にまともな奴はいないと考えていて、
「岡崎さん、手伝ってくれてありがとう~、がんばって~。」
と手伝ってくれそうな彼を笑顔で見送っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます