尊厳死とシングルマザー生活
序章 不倫はされても大ダメージ
8月になり、私と蓮は正式に離婚した。残された家族で話し合った結果、私は名字を元に戻して再び、名前が橘 紫音になった。恵麻は蓮の娘として神里家に残り、瑠奈と小春は私が引き取る事になった。蓮と玲奈の不倫逃避行の影響は私や光にはもちろん、玲奈の姉の恵令奈にも飛び火して、大炎上してしまう事になり、恵令奈は芸能活動を引退した。
(例え、妹の勝手に行った事でも、世間の目は冷たいもんだ。彼女は周囲に謝罪していたけど、それだけで引退を決めた訳じゃ無さそうだった。)
そんな恵令奈は、京都で玲奈の子供たちの母親代わりとして神里家にいるらしい…。恵令奈がいるなら、私が母親代わりをしなくていい。要らないと判断した私は、橘の実家に戻って、人生をやり直す事にした。
世間は私にも冷たかった。働かなくてもやっていけるのに、欲張って働くから、旦那を寝とられたんだとか、可愛い完璧な見た目でも捨てられるって事はかなり性格が悪い悪女だったんだとか、メチャクチャ言われた。
「ね、あの二人ってデキていたでしょ?恵麻お姉ちゃん。」
仕事場に来た瑠奈は姉の恵麻に光と恵令奈の関係を話していた。
「あの姉妹は捻れているんだよ。姉や妹の男をすぐに欲しがるし、結局、前々から好きだった光伯父さんが玲奈さんに捨てられて、恵令奈は後釜に入れて得をしたし、玲奈は同年代のお父さんをお母さんから寝とって、悠々自適にアメリカで専業主婦。結局、損したのは素直で従順な可愛いお母さんだけだって…事だよ。」
恵麻は女の戦いで上手くやれてないのは私だけだと言ってきた。
「二人とも、私の前で私をあれこれ言うのは止めて欲しいんだけど…。」
職場まで来て、私の事で話をしないで欲しいと頼むと、
「でも、小春はお母さんLOVEだから、お母さんさえいれば、機嫌が良いし、こうやって、白河家に来れば、恵麻お姉ちゃんとも会えるから瑠奈たち姉妹はあんまり変わらないね。」
瑠奈は雑談をしながら、私の作ったケーキを美味しそうに食べていた。
「あんた、幼稚園から帰ったからって、大人の姿になって、上から目線で私を見下ろさないでよ!」
恵麻は自分よりも背が高い瑠奈にキレていた。
恵麻がクラゲから抽出して作った抗生物質は富川さんを元の姿に戻した。彼女は子供になった時、私に甘えまくっていた記憶が残っていて、恥を晒してしまった、覚えていろと言いながら、速攻で東京へ帰って行った。余った分を瑠奈に使うと、瑠奈が4歳児の姿に戻ったのだが、超天才と豪語するうちの娘は自在に大人の姿と4歳児の姿を使い分けられる人間に進化した。
「瑠奈はスライムみたいにぐい~んと伸び縮みできるの~。大きい姿の方が手足が長いし、便利なの。ただ、赤ちゃんは作れないみたい。早くお母さんに孫を見せてあげたいんだけど…。」
増せた4歳児に大人の体を与えるとこう言う事をすぐに言ってくる。
「あんたの力で変化できるのは外見の見た目だけで、中身はまだ4歳児なのよ。実際に調べてみたら、子宮も大きくなっただけで、卵巣の機能は成長してなかったし、能力の副作用があるはずだし、あんまり多用しちゃダメよ。それから、大人の時はお母さんに似た姿をしてるし、下着姿で歩かないで!」
恵麻は大人の姿の瑠奈に精密検査して、臓器などの機能を確かめたらしい。副作用が心配なのと家の中とはいえ、大人の姿で下着徘徊をするなとキレていた。
大人の瑠奈は私に似てはいるが、胸やお尻は本人希望通りの標準サイズ。可愛い美少女と言うよりかは、私よりも背や手足が長い、モデル体型のキレイな女性って感じだ。
「この間、この姿でお母さんと親子デートしてたら、姉と間違われてショックだったよ…。本家お母さんの方が背が小さくてオッパイ大きいし可愛いし、お母さんとお出掛けする時は大人しく子供の可愛い瑠奈ちゃんでいるよ。」
自分の将来の姿で並ぶと母より可愛くない事が判明して、少しショックを受けているようだった。
(美人だと私は思うけどな~、瑠奈の将来は顔より、背が高いのがコンプレックスになるのかな?)
「ほんと、バカでワガママね。前はお母さんみたいに胸が大きくなるのは嫌だって言ってたのに…。あんたと話してると疲れるから、仕事に戻るわ。」
アレコレ言って、満足しない瑠奈に呆れた恵麻は事務所に戻って行った。
「やっぱり、恵麻お姉ちゃんは私と喋るのが好きだよね~。また、お母さんの代わりに抱っこしてあげよう。」
こう言って、姉が嫌がりそうな事を平気でやってしまう。
私の娘たちはそんなに変化が無いのだが、鬼母の未央は私を罵った。
「紫音…、名字を戻したら、名刺を作り替えないとダメになるじゃない。」
と言われて、少しでも仕事が遅くなると、
「仕事もダメ、夫には不倫されて逃げられる…。あなたは家事だけしか取り柄が無いのかしら?そんな娘を持って、お母さんは恥ずかしいわ。」
と元夫たちの逃避行をネタにされ、嫌味を言われる。挙げ句には、
「紫音、あなた…見た目だけは良いから、悲しそうな顔をして圭司くんが怒らせた本部の職員に謝罪してきなさい。」
と言って、圭司くんや陽葵ちゃんのミスが発生すると、後始末役として現場に駆り出される。
「自分たちは紫音先輩って言うから、いいですけど、橘 紫音って、先方に前の神里の名字が浸透してて、謝罪にパンチが足りないですね。」
謝罪しに言った本部で、今の名字を名乗ってしまい、変な空気にした結果、圭司くんに謝罪のパンチが無いとツッコミを入れられてしまった。
(名字戻すと、仕事、やり辛い。)
とどめは、
「私は紫音お姉さまを尊敬しています。でも、取り巻きの殿方が私のブランドが下がってしまうので、瑠奈ちゃんたちとの付き合いは程々した方が良いと言って、アドバイスをして下さるのです。実際に瑠奈ちゃんはかなり人気を下げてしまわれたみたいなので、小春ちゃんも含めて、それが原因でイジメられないかが、心配になって来ました。」
美空ちゃんが瑠奈と小春の名字変更で幼稚園での空気が変わって、イジメが起きないかを心配してくれた。
(多方面で影響が出てる…。ママ友からは旦那を寝とられて、神里家を追い出された可哀想な人、扱いだもん…。)
夫に不倫されて、神里の家を追い出された私たちに、周囲の風が徐々に冷たくなって来たことを実感していた。
(小春は心配だけど、瑠奈はバカな子だから、逆に橘の名字を喜んでいたし、言い触らしたんだろう…。それで、ウワサが爆発的に増えてあること無いことが広がったんだ…。なんか、色々とマズいね。)
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