第318話 浮気される事にも問題がある
「二人とも、聞いて欲しいの。お父さんと離婚する事になったんだ。」
薄々気付いている、長女と次女にそう話すと、
「ふ~ん。意外と早かったね。帰国をしてからはずっと、ギクシャクしてたもん。ああ、もう無理だな…この二人って感じ?」
瑠奈はそんなに気にしていないようだった。
「お母さんって、仕事の事以外は素直に言うこと聞くし、性格がネチネチしていないから、かなりつまんない女なんだよ。それにお母さんは忙しく働きながら私たちを育てて充実していたけど、お父さんは日本で仕事をしてて時間だけ食ってしまうだけで、物足りなかった。おまけに瑠奈たちと触れあう時間も減って、お母さんとも過ごす時間が少なくなったから、浮気しちゃったんだ。」
恵麻は擦れ違い生活の話をしたあと、気になるワードの浮気を示唆した。
「浮気?」私が首を傾げると、
「出来る男はすぐに浮気するの。イイ女が寄ってくるからね。いつまでも妻に気持ちがあると思ってる時点で、お母さんは自惚れてるし、子供に気を取られて夫を蔑ろにした時点で、浮気したお父さんよりも、浮気させたお母さんがかなり悪いよ。だから、家事が得意なお母さんみたいな女は専業主婦にならないと幸せになれないタイプなの。」
恵麻は夫への愛が足りない私の事を悪いと言ってきた。
「でもさ、お父さんも玲奈ちゃんと浮気する事無いのにね~。年も近いし、もしかしたらって、思っていたけどね~。」
衝撃の事実を聞いた私は思わず…、
「玲奈って何!さっき、親身に優しく相談に乗ってくれたよ?アレはなんだったの!」
優しく、接してくれていた玲奈の事を話すと、
「高校生の頃、恵令奈さんが玲奈ちゃんの彼氏を寝とった事があったんでしょ?それを10年越しにやり返されたんだよ。何年も恨みを忘れない女って、本当に怖いよね~。」
玲奈がやった復習劇は蓮を私から奪う事だと言い出した。
「それ、私じゃ無いよ!あの時の恵令奈さんが冷たく玲奈に言い放ったからでしょ?」
なんで、関係ない私にそんな事するのかと言うと、
「だって…、玲奈さん、お母さんを本当の姉のように慕ってたでしょ?なら、昔の恨みもお母さんにぶつけて当然って言ったら、当然の事だよ。」
恵麻が玲奈は私に尊敬も恨みも持って、当然だと言ってきた。
「玲奈に問い質してくる!」そう言って、私が部屋を出ようとすると、
「無駄だよ、玲奈さんなら…もう、お父さんと飛行機に乗ってるから…。」
冷静な恵麻はそう話して、私を静止させた。
(玲奈と蓮さんに浮気されて…、逃避行されたの?玲奈の子供たちは?)
私はその事を知り、慌てて神里の母さんの所へ向かうと、
「あら、紫音。良かったわね、これであなたの子供は倍に増えたわよ?」
完全に頭がオカシイこの母親はかなり楽しそうな顔をして玲奈の子供、孫たちと遊んでいた。
(嵌められた…。すべて、このイカれている母親のせいだ。きっと、蓮と玲奈の組み合わせでどんな子が産まれるのかが見たいから、二人を浮気させて、二人きりでアメリカへ旅立たせた。鬼だ、悪魔だ、夫を捨てて、小さな子供たちを置いていく玲奈はかなり悪いが、この母親公認となれば、すべてが正当化される。)
「紫音ちゃんがお母さんって本当?」
玲奈の長女、紫織ちゃんに聞かれたので、それは違うと話そうとすると、
「お婆ちゃんの言ってた通り、紫音ちゃんがお母さんだから、紫織と花音って私たちに付けてくれたんだよね?」
目をキラキラさせながら、玲奈の次女の花音が聞いてきた。
(この、母親が孫の名付け親だったんだな!考え方のすべてが狂ってるよ!)
神里 桜子は完全に狂っている人だった。最終的に玲奈の産んだ子供たちを私の娘にさせる事が目的で、似せた名前を付けたんだ。お陰で完全にこの5歳児と4歳児の姉妹は私が本当の母親だと信じきっている。
紫織ちゃんたちの前で母さんを怒鳴るわけにもいかず、本当の母親説を適当にはぐらかした私は急いでもう一人の被害者へ会いに行くと、
「玲奈…、どうして…。」妻に逃避行されて、マジでへこんでいた。
(もう、どうするの?どうしたいの?)
掛ける言葉も見つからない私は、「大丈夫ですか?」と言うと、
「もう、嫌だ!こんな家、出ていってやる!」
なんか、見たことある光景を思い出してしまった。
(うん、私が光だった時に、母親のスピリチュアル攻撃にキレて、こうして家を飛び出したんだったよ…。)
約20年前に私がやった事をまた繰り返そうとしている事実にデジャヴを感じていたが、私は子供たちのために残って欲しいと説得する事にした。
(あなたは一応、四人の親なんだから…、しっかりしなよ。)
へこんで話にならない彼を落ち着かせたあと、再び、母さんの所へ行って話があると伝えて、部屋で今回の話をする事にした。
「あなたは昔から、ダメな人間ね。人を蝕む悪意の根源を知らなさすぎるのよ。人は寂しい生き物、当然、けしかければ…今回のような事が起こりうるわ。」
そう言って、悪びれもしない態度を取っていた。
「私は構わない!でも、周りを巻き込むのを止めて!」
数十年に渡る親子の争いに人を巻き込むなと責め立てると、
「紫音、あなたは何も分かってない。人間は愚かな生き物なの。非現実な出来事を何度も体感して、まだ、目を背けるつもり?いい加減になさい!選ばれし者が愚かな人間を管理する世の中こそが、理想の形だと言う事がまだ分からないの?」
昔から私へ持論を押し付けてくる。
「知ってるよ、そんな事は…、あなたは本当の紫音を揺さぶり、私にこの体を与えた。それは、私にあなたの跡を継がせるからだって、知ってた。でも、私はあなたの思い通りにはならない!そのためにこの人格を植え付けて、変わったんだから!」
あくまで反抗する態度を取り続けると宣言すると、
「安心なさい。光には玲奈ちゃんよりも最適な相手を用意するつもりよ。なんなら、私はあなたでも構わないけど…。あなたの体はあのオジサンが好きでしょ?」
紫音の体が光に好意を持っている事を話したので、
「私が彼に持っている好意は憧れる気持ち…。光は私を娘だと思っているし、お互いが好きになる事は無いわ。」
キッパリと光と結ばれる事は無いと否定すると、
「そう、残念。あなたはまだ若いんだから、仕事ばかりしてないで、恋愛を楽しみなさい。」
話にならない母親に嫌気が差した私は、その顔も見たくないため、部屋を出ていき、そのまま自分の部屋に戻り眠る事にした。
(今の私は冷静さを失ってる…。だからこそ、ちゃんと眠って明日に備えなきゃ。)
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