第311話 失踪する人の条件
昨日の女性にファストフード店で再会出来たが、警察関係者?らしいので、何も情報を得られる事は無く、瑠奈にハンバーガーをねだられるだけで終わってしまった。
(まあ、ここは東京だし、いつもの感じで警察が協力してくれるわけないよね…。)
逃走する可能性のあった暴走娘の瑠奈は機嫌が良いのか、小春をトイレに連れて行って帰って来ても、大人しく待っててくれた。まあ、ハンバーガーのセットにあるフライドポテトを食べた手でスマホを弄られたりもしたが、逃げられるよりはマシだ。
「瑠奈、お母さんのスマホ…油でギトギトになっているけど、何を調べてたの?」
そう言って、尋ねてみると、
「いなくなった人はそんなに可愛くないの~。やっぱり、お母さんは可愛いよね。」
そう言って、家出して帰って来た人のSNSを観覧して、その容姿に辛口コメントを言いながら、特徴の共通点を探っていたらしい。ウエットティッシュを差し出しても、手のギトギト状態をそのままにしてしまう少しズボらな瑠奈の手を拭いたあと、自分のスマホを拭きながら、
「例えば、この人、柔道のオリンピック強化選手。一週間も所在不明後になに食わぬ顔で現れて、前よりもパフォーマンスが上がったらしいよ。」
重量級の女性選手も行方不明になっていたため、人拐いの可能性がほぼ、無くなった。
「不気味だね…。いなくなって急に強くなる事があるのかな?」
結構な人数の女性が家出しちゃうのに、確かな目撃情報がまったく存在していない。誰かに見られる事なく、家出し続ける事など…本当に可能なのか?やっぱり、自分の意思で動いてとしか…考えられない。
(自らの意思、家出した人の共通点が無い。どうりで警察が真剣に動かないわけだ…。)
そんな事を考えていると、瑠奈が突然、
「お母さん、トイレに行ってくるね。」
トイレに行くと言ったので、付いていこうかと聞くと、「瑠奈はそんな子供じゃないし、一人で大丈夫。」と言って席を立った。
(瑠奈は成長が早いとはいえ、まだ、4歳だよね…。小春なら、まだ拭いてあげないといけないし、母親の私が付いていくんだけど…。)
トイレの後の事を自分で処理出来てしまう成長に喜んではいるが、小さくて短い手でトイレの後を自分で拭いていると考えると、瑠奈はとことん器用だなと思ってしまう。
(女の人は大変だもん…。衛生上、キレイに保たないとダメだし。)
私はこうして、子供へ常に気を配り、子育てに時間を取られながら、いつも仕事をしている。
しかし、いつまで経っても…戻って来ないため、心配になり、トイレに行ったら、そこに瑠奈の姿は無かった。
「何が起こって、どこに行ったんだろ…?」
また、失踪した瑠奈の事で私が悩んでしまうと、
「ママ、ルーちゃんがまたいなくなったの?」
小春は私ほどでは無いが、突如起こった事に理解出来ず、首を傾げている。
私は早速、小春を店員に見せて、こんな顔の子を見ていないか聞いて回ったのだが、目撃情報が無かった。まさに家出人の女性たちと類似していたため、神隠しだと察した私はSNSを見て、瑠奈の見ていた失踪者関連を検索すると、目を離した隙に突然、姉がいなくなったとか、娘がいなくなったとかの投稿が見られた。でも、内容が何かオカシイ…。
「これ…姉妹の妹が姉を探していたんだよね?明らかに…姉の方が若くない?」
五日後に姉が戻って来たと言って、姉妹の写真を撮ってるけど…、28歳の姉が22歳の妹よりも若く見える。それにこっちの25歳の娘がいなくなったって言う40代後半の母親が、四日後に娘が帰って来たと話しているけど、帰って来た娘さんの見た目…、いなくなる前よりも若くない?
(若見えのひなちゃんの件もあるし、一概には言えないけど、失踪者の年齢が合っていない気がする。二人とも見た目はまだ、学生みたいだ…。)
「小春、瑠奈は今、どこで何をしているか分かる?」
双子なので、何かを感じたりしないかを聞くと、
「ルーちゃん、どこにもいないの~。」
小春は分からないと答えたあと、母親の役に立てず、耳をペタんとさせてへこんでしまった。
(あっ、私の質問に答えられず、へこんでる…。)
へこんでしまった小春を抱き締めてあやしながら、数日間失踪する条件、この姉妹のそれぞれの違う点と私との違いを考えていた。
(瑠奈は失踪者の年齢の条件を満たしていない。なのに、こうして消えてしまった。年齢では無い条件が満たしているって事だよね…。瑠奈と他の行方不明者の条件って何?)
行方不明者の家族関係も良好な場合も多いし、昨日の瑠奈も呼ばれたと言っていた。でも、呼ばれた瑠奈は行方不明に至らなかった。それはなぜなのか?
(条件を満たす人しか聞こえない声か音で誘った奴が、瑠奈の姿を見て、解放したって事?それとも、すぐに富川さんが来たから…拐えなかった?)
女性ばかりがプチ家出して、いなくなる理由ってなんだろ…。
それに今の所、小春の探知能力は働いていないため、瑠奈が眠っているか、目隠しをされて視界が遮られている事を予測をした。
(小春は瑠奈が視界に捉えた世界を見て、どこにいるかを言い当てているらしいし、その瑠奈の視界が真っ暗だから、今の小春は分からないんだろう。私に無くて、瑠奈にある特徴…。)
(それを知っていそうなのは、マリアか、恵麻しかいないよね。マリアは連絡する手段が無いし、恵麻は忙しそうだし…。そう言えば、富川さんってあの現場にいたよね、聞いてみよう。)
私が富川さんの名刺にある番号に連絡すると、「もしもし…」あれ?この声は…、
「あっ、紫音ちゃんっすね。俺と喋りたくて連絡してくれたの?」
さっきの俊と呼ばれていた男性が電話に出た。
「いいえ、違います。富川さんに尋ねたい事があったので、連絡しました。」
既婚者の私は男のそう言う冗談にも応じず、バッサリ切り捨て、彼女がいるなら、電話を代わって欲しいと彼に尋ねると、
「そうっす!富川さんが署に呼ばれたのに、どっかに行っちゃたんっす。紫音ちゃん、何か知らないっすか?」
聞きたい事があって電話したのに、こっちに彼女の居場所を聞いてきた。
(あっ、この人…、絶対に仕事出来ないタイプの人だよ。)
警察の富川さんまで失踪してしまい、私は早速、行き詰まってしまった。
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