第230話 命の重みは人によって変わる
交通事故で亡くなって、火葬後に別の場所で発見された。篠原 莉奈ちゃんの調査を進めていくうちに、彼女の体と魂は形成されて新しい事が分かった。仕事では無いが、誰がこんな真似をしたのかを調べるため、一人で調査をし始めた。
会社にも、麻友にも協力が得られないため、一人で今後の動きを病院の待合室で考えていると、
「紫音ちゃん、杏奈から聞いたよ。例の騒動を調査してるんだね。」
声も聞きたくない奴、警察のエリート岡崎さんに声を掛けられた。
「岡崎さん、前に話しましたよね?私に話し掛けないで下さいって…。」
会えば、いつも通りに拒絶すると、
「聞いたろ?もう杏奈以外の女性には興味ないって。」
JKと婚約するエロ親父の左手薬指には例の指輪が付いていた。
そのあと、杏奈ちゃんとのノロケ話を聞かされて、改めて違う不快感を覚えた俺は、
「いい加減にしないと、私も彼女とのノロケ話を話しますよ?」
そこまで言うと、彼は杏奈自慢からようやく本題に入り、話をしてくれた。
「莉奈ちゃんの事だけど、恵令奈ちゃんの能力はもちろんだが、俺の能力に似てないか?例えば、赤ちゃんの魂を抜いて、新たに作った莉奈ちゃんの体に打ち込んだみたいな、感じに…。」
岡崎さんの能力は拳銃の弾に生きた霊体を閉じ込めて、外へ放出する。
「医療関係者の誰が体の死んだか、もしくは生まれたての赤ちゃんの魂を予め用意して作った、莉奈ちゃんの体に入れたって事?それなら…、最低、二名の能力者か悪霊が関わっているって事だよね?」
岡崎さんの理論なら、生まれたての赤子の魂を手に入れた奴と莉奈ちゃんの体を作った奴は別って事になる。
「そうだよ。どの道、一人の能力では、無機物からは人間は作れない。作るには魂の調達と魂が無くて健康な空の人間が必要になる。でも、魂を抜くとその生物は基本的に死滅するはずだよ。」
岡崎さんはかなり調べたみたいだ。
「もしくは、魂の記憶を初期化する能力者がいるのかもしれないよ。あとは人間の組織を変える能力者。例えば、赤ちゃんに篠原 莉奈の情報を与えてその姿に変身させる奴がいれば、一人で人間を蘇らせる事ができるよ?」
岡崎さんに俺の見解を話すと、
「どちらにしても生きた人間を犠牲にしている事は間違い無い…。警察はそっちの面で行方不明者の届け出が出ていないかの調査は済んでいるんだが、居ないんだよ、該当しそうな子供が…。」
大好きな杏奈のために警察権力を使って調べたようだ。
「なるほど…、住所不定の人間や行方不明の届けが出ていない単身者が被害に遭っている可能性が高いですね。あとは、アレですね。」
恐らくの答えを話す事にした。
「アレって何なの?紫音ちゃん。」
「SNSで自殺を呟く人を集めて、近々に死んだ人間の戸籍を与えて、魂を初期化させて与えている。」
元凶が命の大切さに重きを置いている奴なら、自殺して命を散らすような、無駄に失う命を利用するはずだから…だ。
「閃きの天才だよね、紫音ちゃんは。能力者の心理を読んで考えて、大人では思い付かない事を閃くんだから…。」
岡崎さんでは、思い付かなかったみたいだ。
「だって…、魂を初期化しないと別の戸籍を与えた所で、不満を漏らしてまた、死んじゃうからね。現状不満を言うような人間は別人になろうが、魂が一緒だか、同じ運命を辿る事になるよ。」
私は、今を打開出来ない人間が環境を変えても、変われない事を言うと、
「だね。じゃあ、俺は自殺などのSNSに反応する人間を調べて見るよ。」
情報を聞いた彼がそう言うと、すぐに病院から立ち去って行った。
「今日は帰ろっかな。これ以上は運が無い限り、進展しなさそう。」
これは正式な依頼でも無いから、帰る事にした。
家に帰ると、マリアが橘の母さんと仲良く喋っていた。
(二人は私のいない所では仲良しだもん。橘のお母さんは私には話してくれないけど…。)
「お帰りなさい、紫音…。」
お母さんはそう言うと自分の部屋に戻って行った。
(相変わらず、娘との会話を避けるんだね…。)
「今日の晩めしはなんなん?たまには紫音ママにも作ったれや。」
マリアが尻尾を振りながら、甘えて来たので、撫でながら…、
「お母さんは私の料理を食べてくれないよ?」
そう告げると、今の紫音ならいけると後押ししてくれたため、いつものように料理を作ることにした。
夕食を作り終えて、お母さんの部屋の前まで行って、
「お母さん、夕食を作ったの…、良かったら食べて欲しい。」
と告げると、いつもは断られるのに、部屋から出てきてくれて席に着いてくれた。
(私には四人のお母さんがいる。光の生みの親の神里の母さん、紫音の同僚で母親のように接してくれる未央お母さん、恵令奈の時に出会った上本のお母さん。そして、今の体の親で一緒に住んでいるのに会話もしない橘のお母さん…。)
紫音と恵令奈の入れ替わりの事を告げて、本当の紫音では無くなり、さらに関係は気まずくなっていた…。
無言で座るお母さんだったが、
「本当はあなたに会わす顔が無いのよ。変な事ばかり言う紫音を私は、突き放した。そして、何も理解しないまま…。本物の紫音は別人になっちゃったし、その後は私たちに会いにも来ないし、本当に嫌われてしまったから、あなたの顔を見ると辛くなるの…。」
そう言って、ずっと避けてきた事を語ってくれた。
「ゴメン、お母さん。私は紫音として生きると決めたから、別人のような娘かもしれないけど、それでも良かったら、私のお母さんでいて欲しい。」
今の私を見て欲しいし、ご飯を食べて欲しいと料理を出すと、
お母さんは私の作った料理を食べ始めて、
「美味しい…、ウチの娘は料理が上手いのね、知らなかった。」
何かを言いたそうなお母さんだったが、眠っていた恵麻が起きてきてテーブルの料理を見たあと、
「しおんままといっしょ」
食事をしていたお母さんに抱っこを求めてよじ登り、食べ物を要求したため、ちょっと困るお母さんに恵麻が、
「おいしいよ、しおんまま」そう言って、娘のように甘え出した。
普段なら行儀が良くないと言って無理矢理、下ろして叱るのだが、お母さんの手前で怒れずにいると、
「ダメよ、恵麻ちゃん。何かを食べる時は手を洗わないと…。」
代わりに叱ってくれて、抱っこをして洗面台まで連れていってくれた。
(こうやって、徐々に親子のわだかまりが溶けるといいな。)
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