第227話 男も女もシンプルが良い

 俺は二年の松崎先輩の幼馴染みの妹が生き返ったと言う、うわさを確かめるため、学校の授業が終わったその足で、その子が住んでいる家に向かうため、彼女の家の近くを歩いていた。


「で、引き受けた小鈴がおらへんのは何でなん?」

 マリアは勝手に引き受けた小鈴がここにいないことにキレていた。


「小鈴、中間テストが主要五教科の合計点が500点満点中460点で学年5位だったでしょ?だから、勉強分野での活躍は諦めて、武道の道を極める、私は美少女剣士を目指すって言ってたよ。」

 小鈴が部活があるから忙しいと言っていた。


「なんやそれ、猫のウチに勉強で負ける小鈴って考え方もアホなんやな…。しかし、ほぼ満点のウチもビックリしたで~、親子揃って、全教科満点って…。」

 負けたマリアは悔しがる事をせずに、激ムズテストで満点の俺や恵麻を褒めてくれた。


「恵麻は半分以下しか時間を使わないし、実質、私の負けだよ。」

 時間いっぱいの俺と、2歳児との差はまだまだあるが、母親の面目は保てた。


「天才児のお母さんで、秀才の彼女持ちは大変やろ。麻友との相性はかなり良さそうやけど、麻友はババアの刺客やからな…、信用すんなとまでは言わんけど、警戒に越した事はあらへん。」

 神里の母さんは信用できないから、その息が掛かる麻友には気を付けろとマリアは注意してきた。


「うん、だから…、麻友を彼女にした。悪事に加担されそうになったら、すぐに分かるようにしたんだよ。」

 頭の良い人がタイプの紫音の体は麻友が好きになっていた。


 分かってるならエエと言った、彼女は恵麻を抱っこし始めて、子守りはしとくから、調査は安心してやれと言ってくれた。


 生き返った少女がいる家はすぐに分かった。動画でバズりたい野次馬やネタにしたい週刊誌記者がいたから…だ。


(嫌な時代になったよな~、素人みたいな奴が再生数稼ぎでプライバシーを平然と侵害しているんだから…。)


呆れて彼らを見ていると、

「これだから、人間の男は…、のかしたろ。」


 幼稚な男が嫌いなマリアは彼らを魅了し、二度とここに近寄るなと釘を刺してから、帰れと言ってどこかへ追いやってしまった。


「マリアは人間の男が嫌いだよね…。」そう言うと、


「オス猫の方がシンプルやし、一緒に居て不快感が無いだけや。人間の男もシンプルにHしたいと、話をしたい、一緒にいたいってハッキリ言うたらエエねん。一緒にいて、話をしたあと、Hしたいって欲張り過ぎやねん!どれかにせえや!」

 マリアは複雑な人間の感情が嫌いなようだ。体が人間なので、発情期には人間の男と愛の無い性行為している。


「女も女や!そんなにイケメンが好きなんやったら、あなた似の子供が欲しいので、精子下さいって言えばエエねん。一緒にいたい奴には一緒に居てください、でも、性行為はしないで下さいってちゃんと言えばエエねん!」

 マリアはハッキリしない、人間の女にもキレていた。


(理屈で言うと、理に叶ってるけど…、みんながそう言い出すと、一部の人間に人が集中するような…。)


 ウチの猫にも色々あるとは感じたが、邪魔な野次馬を退かした事で、騒動を聞き付けた家の人が家から出てきてくれた。


「あの~、あなたは…。」

 家の母親らしき人物が出てきて、野次馬たちが居なくなり、知らない女子高校生だけが立っていたため、思わず聞かれてしまった。


「はい、私はこう言う者です。」会社の名刺を渡すと、


「霊の悩みを引き受けるですか…、霊感商法?新手の詐欺?」

 当然、知らない人や霊が見えない人にはそうなってしまう。


「おばちゃん、安心せえ、ウチらはあんたの娘の事で相談されてきただけやし、金は取らへん。」

 猫耳をピクピク動かして女子高校生の制服を着こなすマリアが言うと、


「あら、可愛い。芸能関係の方かしら?」

 同じ学校の制服を着ている美少女の紫音と猫耳ハーフ美女のマリア、そして2歳児の恵麻を見て、次は芸能関係者と勘違いされた。


(まったく話が進まないな~。女子高校生が社会人をしているのも不思議だろうし、猫耳や2歳児JKは見たこと無いだろう。)


家の人と不毛なやり取りが続くなか、後ろから声を掛けられた。

「お母さん、その人はあっ君の学校の人たちよ。中に入れてあげても問題ないわ。」


 違う学校の制服を着た女子高校生があっ君の知り合いだから、家の中に入って良いと告げたため、その子の母親は、

「あっ君の高校の制服なのね、どうりで…見たことあるような気がしたわ。」


 そう告げて、ようやく家の中に入れてもらった。


家の中に入る瞬間、松崎先輩の幼馴染みの彼女が、

「ようやく見つけたわ、私からあっ君を奪った憎き女を。」

 と耳元で囁くと、家の中に案内された。


(待って!松崎先輩の彼女にされてるよ!私!)


彼女の部屋に入った瞬間、

「この!泥棒猫!私の大好きなあっ君を返して!」

 なぜか、メチャクチャ責められたのだが、マリアが、


「嬢ちゃん、紫音はソイツとちゃうで、コイツの恋人は女であの小さい子は紫音の子供やねん。子持ちの女やから男にモテへんねん。」

 マリアが彼女に説明しながら、恵麻を呼んで紫音オレに甘えさせた。


 しばらくして、恵麻を膝に乗せて引っ付く俺、恵麻を尻尾で遊んであげるマリア、浮気相手が乗り込んで来たと勘違いした彼女が座った。


(松崎先輩。幼馴染みと付き合っているなら、そう話してよ!むしろ、幼馴染みが女だって言うのも聞いていなかったし、勘違いされたよ~。)


 言葉が足りない先輩にキレていたが、彼女持ちだと相談を断られると無意識で判断したのかは分からないが、男のこう言う所が嫌われるだよ…って考えていた。

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