終章 見た目はアドバンテージにはならない
結局、ほぼ麻友一人ででこなした今回の依頼だったが、依頼報告は俺がちゃんとしないといけないため、白河家に向かった。
「紫音ちゃ~ん、お疲れ~。ほんまに仕事が出来るし、アタシがおらんでもイケるやん。」
ほぼ、お飾り社長となる感じだった絢美さんは三宅さんに告白されて以来、仕事のパフォーマンスも上がったらしい。
「絢美社長がしっかりと事務をこなしてくれるからですよ。前社長より真面目だし、本当に助かっています。」
やはり、狙い通りの男の有無でハイパフォーマンスになる女性だった彼女は未央に匹敵する仕事ぶりで社長の仕事をこなしてくれていた。
「涼ちゃんが毎日優しくしてくれるし、難しい事もこなしてくれる。もし、困っても二人ならなんでも出来るから最高やねん。紫音ちゃんもおるし、二人の婚約指輪も用意してくれてありがとうな。」
彼女は右手の薬指にある指輪を見てうっとりしていた。
(あの指輪はスゴい利き目だからな…。お互いの指に嵌めると相手の同調意識が高まって強制的に相思相愛になる指輪。麻友が言うには、好きな気持ちを増幅させるだけだから…、相手にその想いが無いと、逆効果になるらしい…。)
どうやら、両方に嵌めるとお互いを想い合う気持ちが冷めなくなって、永遠の愛を誓うと死ぬまで添い遂げる危険なアイテムで、反対に嫌いな相手へプレゼントすると、嫌いな気持ちが増幅されて、大喧嘩を始めるらしい…。取り扱い注意アイテムだと説明を受けた。
「しかし、イケメンなって、女とヤりまくりたいみたいなドストレートな願望もあるんやな…。普通はこんな霊はすぐに成仏するんやけど…、なんでやろ?」
絢美さんも依頼の内容に呆れていた。
(やはり、今回の依頼は変なのか…。この程度の依頼ばかりなら、霊体が溢れかえるだろうし。今、考えても仕方ない…か。)
「まあ、楽してお金を稼ぎたいって言ってるのと一緒ですよ。三日天下に似ていますよ。ズルしたり、楽して得たものなんて…、一瞬で無くなるんですよ。イケメンになって、女性を下に見て生きていたら、あっという間に転げ落ちる。そんなことも彼は知らないんですよ…。」
見た目はアドバンテージ程度にしかならない事を伝えると、
「そやな~、実際に紫音ちゃんはその美人の容姿を一度も利用してへんもんな、まあ、アタシの知らん間にモテる女性の条件が変わってしもてたけど。」
山に籠っていた絢美さんも驚くくらいに、モテ女子の条件が変わっていた。
「そうですよ…。美少女はアドバンテージじゃあ、無くなったんです。見た目は平凡で地味。頭が男性より良くて、リーダーシップあるクールビューティーです。私の近くだと麻友が該当するかな…。」
今の世の男性は恵令奈効果で美人と呼ばれている女性はモテなくなった。
(今年の流行語は程よく可愛い…、だろうな…。)
「JKで言うと、メガネの勉強ばっかしてる学級委員長がモテるん?」
女子高校生の実情を聞かれたので、
「そうですね…。子供っぽいや明るい女性はまったくモテません。口数が少なくて、ボッチでも平気みたいな強い女性が人気ですね。友達が少ないは女性のステータスみたいになってます。見た目が可愛すぎると男性は引いてしまうらしいです。JKの趣味ランキング一位は勉強ってテレビが言ってました。あとは…ドS女子が良いそうですよ。」
歪んだ女性の常識に俺たちが作り出した上本 恵令奈という女性の人気を改めて思い知らされた。書籍は恵令奈の写真集がバカ売れしているし、テレビも恵令奈が視聴率女王、CMも恵令奈、ラジオも恵令奈。
美少女の魂のスゴさを思い知ったよ、紫音…。
「まあ…世の中、見た目じゃないって事ですよ。」
絢美さんに報告を終えた俺は恵麻を預けていた未央の所へ行くと、三宅さんと未央が喋っている所に遭遇していた。
「涼介は白河姓になったのよね…。私は本郷姓にしよっかなって思うの…。白河は前の夫の姓だし、良昭さんを白河姓にするのも気が引けるもん。」
絢美さんが家業を継いだため、白河の名前を名乗る必要が無くなった未央夫妻は同級生に相談していた。
「俺は婿養子みたいなモノだし、構わないけど、絢美は姉でいて欲しいはずだよ?それに俺と絢美に子供が出来なかったら、次の家業を継ぐのは、未央のお腹の子になるだろうから、そのまま…白河姓にしておいた方が都合が良いだろ?」
彼は絢美さんの結婚が遅れた事と今の白河家には次の跡取りがいない事を話して、未央が白河家を離れる事を止めていた。
「未央お母さん、恵麻をありがとう。帰ろっか?恵麻。」
白河家の事のため、口を出さずに恵麻を抱っこして帰ろうとすると、
「紫音先輩はどう思いますか?」
涼介さんは年下の先輩の俺に意見を求めてきた。
(巻き込まれたが、彼を巻き込んだのは私だし、答えてあげないと…。)
「う~ん、すぐに答えを出さなくて良いんじゃないのかな?未央お母さんはまず、お腹の子を無事に産む、涼介さんは絢美社長の意思を尊重する。これでどうかな?」
そう答えると、未央が無言で迫ってきて、お尻を思いっきり叩いてきた。
「痛い!」と叫んだあと、未央を見ると鬼の形相で、
「紫音、未成年で私の娘なのに、大人の話に首を突っ込んじゃダメよ!何様のつもりなの?また、お母さんをバカにして!」
やっぱり、鬼母に怒られた。
「ごめんなさい…、未央お母さん。私、恵麻を連れて帰るよ。」
左手で恵麻を抱えて、右手で叩かれたお尻を擦りながら部屋を出ていった。
(未成年って辛いな。大人の相談された事の答えを言っただけで、この仕打ちを受けるんだから…。)
紫音になって気付いたが、未央は女性に対して自分の思い通りになる年下が好きで、年下女性から意見を言われるのが大嫌いみたいだ。
紫音という従順な人形は好きだけど、意思を持つ人形は嫌いなのか…。容姿と若さへの嫉妬も含まれているから、一層厄介な女性になっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます