第225話 本当の意味での親ガチャ

 一人っ子で親に距離を置かれている紫音の体は孤独に弱い。だからこそ俺は麻友の異常すぎる愛に答えた。一緒に居てくれる人、愛してくれる人は男性でも女性でもどちらでも良い。確かに紫音のポテンシャルは高いが、恵令奈のような安定感はまったく無いため、誰かにすがる事で力を発揮できるタイプの人間。


「紫音様、子供はやはり神里家の光さんに種を貰いますね。紫音様はご自分で自分の遺伝子の子供をお産みになられますか?」

 麻友は好きな人から告白されて相当、嬉しかったんだろう…。もう、将来の話をしていた。


「小鈴も言っていたけど…、なんで光の体の子供が欲しいの?」

 神里 光の子供がなんで良いのかを聞いてみると、


「お義母さまの子供で、紫音様の元の体にある遺伝子だからです。人間は本来は好きな人の子供を産むのでは無くて、優秀な精子を手に入れて産んで育てる方が良いんです。結婚は一般男性でも構いませんが、自分の子供は優秀な遺伝子を取り込んだ方が良いんです。」

 彼女は結婚相手と自分が産む子供は優秀な遺伝子の方が良いと言った。


「それは、一般人に止まりの男性の遺伝子は要らないと言うことなの?」

 なかなか興味深い話をしてきたため、詳しく聞くと、


「はい、労働力程度にしかならない一般の男性の遺伝子などはこの世には必要ありません。そんな劣悪な子供を産んでしまってはその子供は生まれながらに劣化しているため、不幸になってしまいます。」

 彼女は世の中の大半の男性の遺伝子は必要無いと言いきってしまった。


「親ガチャと言う、言葉は生まれた家庭環境の悪さを指すのではありません。例え、貧乏でろくでもない親に当たっても、父親の精神耐性の遺伝子が優秀なら、競争社会に勝ち抜けるのです。優秀な遺伝子なら、努力しなくても世の中の流れに乗れますし、光様みたいに選ばれた遺伝子や、スポーツアスリートみたいに恵まれた体格を持つ遺伝子以外の男性は残す必要はありません。」

 麻友は世の中のほとんどの男性の遺伝子は必要無いと言っていた。


「なるほど、女に生まれたからには、優秀な遺伝子の子供を残したい。だからこそ、父親は優秀じゃないとダメなんだね…。」

 元男性の俺は納得したが、それを聞いて神里の母さんの目的が分かった。


「はい、神里家の、光様の遺伝子を持つ子供を妊娠した女性はもう、5人ほどおられます。融通の利かない光様を女性の体に追いやったのは、自分の血を受け継ぐ孫をたくさん欲しいからですよ。まあ、お義母さまはお優しいから、美人で若く美しい体を元息子さんに用意してくださいましたから…。」


 麻友はそう告げて、俺の頭を撫でてきて、慰めてきた。


それを聞いた俺は、

「麻友、私が好きなら…、神里家から縁を切りなさい。恵令奈の能力や今までの事がすべて神里の母さんの仕業なら、あの人はもう私に用は無いはず。麻友は私か、母さんのどちらかを選んで…。」


 母さんが欲しかったのは、言うことを聞く霊力を持たない俺の体。紫音の俺を愛でているのは、俺の遺伝子を持つ子供を俺に産ませて育てさせて、後継者にする事。そんな手には乗らないよ。


「大丈夫です。私は紫音様の味方です。だからこそ、お義母さまの企みを報告したのです。それに…心を同調させる指輪を付けて頂いたので、あなたが私を嫌わない限り、絶対に裏切れません。」

 彼女は俺が付けた指輪を指して、心から誓いますと告げた。


(彼女は私が指輪を付けた事で、母さんの忠実な義娘から、私の恋人になったのか…。好きだと言う思いを持ち続ける事で、彼女を捉える事が出来る。でも…。)

 俺は彼女の指に着けた指輪を外した。


「麻友を信じるよ。だから…、渡す指輪は私の給料で本物を買ってあげる。」

 そう言って彼女を信じると告げると、


「紫音様はバカな人ですね。あのまま、私の心を捕らえていたら、裏切られる心配も無いのに…。」

 彼女は私のやり方の甘さを指摘すると、


「でも、そんなあなたを守りたいです。だから、神里家とは縁を切らないです。私は紫音様が好きだから、お義母さんの側にいます。」

 彼女には、彼女のやり方があるらしいので、信じる事にした。


(でも、光の子供をそんなに作って、どうするつもりなんだろ…。子孫繁栄にもほどがあるだろう…。)


 確かに体格や顔は遺伝子に左右される。でも頭脳は環境の方が大きいはず…、だとしたら、母さんは生まれた子達を自分の所で英才教育をするつもりなのかな。あとは霊が見える女性を相手にして用意する事でその中からまた選別するのか…。


(金持ちの考える事だよ…。小鈴の英才教育を急に辞めたのはこれが理由だったのか。)


 母さんの裏の顔を聞かされたが、いつものように依頼人の所へ行くと、若い男性の依頼人を見つけたので、声を掛けると、

 

「僕の願いはイケメンになって女の子にモテまくりたい。」

 フツメンの彼は堂々と願いを言い切ったが、俺は…、

 

(くだらねぇ~。容姿が良ければ確かにモテるだろうけど、幸せとは限らないよ…。)

 

 男性の重みも何も感じない依頼に呆れてしまったが、麻友を見ると、引き受けてくださいと目で合図されて、

 

「あなたの依頼を引き受けます。ちょっとお待ちください。」

 引き受けたものの、「どうするのよ麻友。」と彼女に言うと、

 

「私にお任せください。」

 そう言うと麻友は彼にあれこれ聞いたあと、前みたいに彼の霊体を自分の体に取り込んでしまった。

 

「では、今からたくさんの女性を抱いてきますね。紫音様も処女を卒業されますか?」

 

 麻友は彼の霊体情報から発生させた男性器を前みたいに私のお尻に擦り付けて来たため、

 

「麻友の顔でも、よく分からない男性のモノは受け入れたく無いよ。」

 

 丁重に断ると、「残念です。」と言って、繁華街でナンパしてくると告げて彼女は去って行った。

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