第224話 恋愛が必ず上手く行く魔法
女子高校生になった俺はウチの会社でどうしても、中年の男性社員が欲しかった。理由は、女だけではこの会社組織が回せない事を理解したからだ。本郷くんは若すぎるのと判断能力に優れていないため、ハッキリいって、役に立たない。その点、クソ真面目が災いして…社会的な価値観がずれて嫌気が差した三宅さんなら、扱い方によっては何とか戦力になるが、それでも、この仕事ではまだ足りない。
昼休みに依頼の連絡を受けたため、授業中、俺は仕事の事を考えていた。そして、隣の席で授業を真剣に聞いている麻友をふと見ると…、
(麻友ってカッコいいな~。麻友が恋人だったら良いのに…。はっ!まただ…、気付いたら私…、麻友の事ばかり考えているよ…。)
最近、麻友が気になって仕方ない。授業中も気付いたら、彼女を見ちゃっている。
(どうしちゃったんだろ?私…。)
この間から、麻友への好意の気持ちが止まらない…。そんな事もあったが、授業を終えてからすぐ、依頼をこなすため、東福寺の参道を歩いていた。
「やはり、恵麻お嬢様には高校生の授業の負担が大きいようですね。ここの所は体力が夕方まで、持たないようですね…。」
同行してくれている麻友は恵麻の体力を心配していた。
いつも依頼に連れていく恵麻だったが、2歳児の体では、高校の拘束される時間が長すぎるため、放課後にはすぐ眠ってしまう。今日もマリアに頼んで家に連れて帰って貰う事になった。
「恵麻は私と一緒に居たくて真面目だから…。つい、頑張りすぎてしまうのよ。結局、マリアがいないと私も眠っている恵麻を連れ回しながら、依頼をこなさないといけないから、子を持つ親の仕事って大変だと言うことだよ。それに普通の子供はあそこまで知能も高くないから、本来なら、もっと子供の手が掛かるから…ね。」
子供を育てながら働く制度はまだまだ、日本では整っていない事を指摘すると、
「仕方がありませんよ、子育てを家庭の仕事として捉えていない日本では、子育てにはお金が発生しないし、未だに女性のみの仕事だと、捉えている節もありますから…。」
彼女は子育て制度に警鐘を鳴らしていた。
「私は紫音の体に申し訳無いと思っているの…。この体はもっと遊びたいだろうし、恋愛もしたいだろうに…。色欲を奪われた身とはいえ、好きな人を作って、恋をしたいと体は言ってるはずだもん。」
16歳の体で仕事ばかりする事に悩んでいた。
「私は今の紫音様が好きですよ。常に皆さんの事を考えていらっしゃるし、決断力があってカッコいい。本当に光様の魂を持っていたんだ…、って思います。出来れば、私はあなたが光様の体のままで出逢いたかったです。お義母さまに似ている、そのすべてが本当に大好きです。」
告白した彼女が抱き付いて来た。
(麻友は女性なのに…、ドキドキする。私、この子が好きなんだ…。)
その言葉を聞いて、
「ありがとう…、私はいつも尽くしてくれる麻友が好きだよ。」
ドキドキし過ぎて、モジモジしていると、
「紫音様、可愛い。自分の恋になると臆病なのですね…。」
そう言って、次は少し背の高い麻友に頭を撫でられた。
紫音の体は同性から嫌われていた分、同性と仲良くしたい気持ちがものすごく強い。同性恋愛を不快に思わない体のため、告白された事が、本当に嬉しくて麻友の事を好きになっていた。
「私、麻友が好き!麻友とずっと一緒にいたい!」
(自分で好きと言っておいてアレだけど…、これはちょっとオカシイぞ?)
少し、疑問に感じたので聞いてみた、
「ねぇ、麻友。私に何かした?麻友が好きで好きで四六時中、麻友の事ばかり考えちゃうんだけど…。」
彼女に何かをしたかどうかを尋ねると、
「私もですよ…、紫音様。相思相愛ですね。」再び、頭を撫でられた。
「じゃ・な・く・て!何したの?これはおかしいでしょ?」
彼女に詰め寄ったのだが、近付いたらまた勝手に、
「ゴメン、麻友。あなたの事が好きなのに…、許してね。」
彼女に近寄る度に好きな気持ちが溢れてくるため、勝手に謝ってしまう。
「好きな人が出来たら、人間はコントロール出来なくなるのです。それが愛ですよ、素直に受け入れましょう紫音様。」
彼女が腕を差し出して来たので、飛び付いてギュっとした。
(麻友が何かしたのは間違いない…。きっと、同調行動を促進させる何かを仕掛けたんだ。麻友の気持ちがそのまま、私の気持ちに反映させる何かを…。)
考えていた俺は、右手の指輪を見ていた。
(そう言えば、これは麻友に付けて貰って外せない指輪だ。私は外せないのなら…、何か細工されてるのかも。)
「麻友、これは付けた本人にしか外せない指輪なんだね。本人の気持ちを相手に同調させる、最強の惚れ薬。」
そう言って、右手を差し出して…外すように指示すると、
「まさか、効果がこんなにあるとは思いませんでしたよ。お義母さまもお人が悪いですね。」
麻友はすんなりと右手に付いていた指輪を外してくれた。
麻友への強すぎる想いが消えた俺は、指輪を預かってすぐに麻友の左の薬指に付けた。
「これが私の気持ちだよ。麻友…。私にはあなたが必要で大好きだよ。」
彼女にそう告げて、依頼人がいる場所に向かって歩いて行った。
「紫音様!プロポーズのお言葉、承りました!幸せにしてくださいね。」
彼女は俺に飛び付いて喜んでいた。
(麻友の気持ちは無視できない。それに彼女の有能さを今さら手放すことも出来ないし、元男なんだから…、やっぱり女性と恋愛をしたい…。)
恵令奈の時には考えもしなかったし、感じもしなかった女性への恋愛感情を思い出し、再び、この麻友という女性を好きになった事に後悔は無かった。ただ、男性の体になりたいと思う気持ちが再び、出始めた事に紫音の体で気付いてしまった。
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