第142話 結局…お泊まりするはめに…
結局、神里家のメンツに押し切られて泊まる事になった。
眠たくて辛そうな恵麻に、「寝る前にお風呂、入ろうね?恵麻。」
そう言っていつも通り、恵麻の服を脱がせて、二人でお風呂に入っていると玲奈も入ってきた。
風呂場で恵麻の体を洗いながら、
「ねぇ、なんで玲奈はお泊まりの準備万端なの?最初から泊まるつもりだったの?」と聞くと、
妹は、
「どのみち、ダメでも、今日はお姉ちゃんの家に泊まるつもりだったし、それに結果として、お姉ちゃんは昔と変わらないままのお姉ちゃんだって分かったし、今日は来て、良かったよ。」
最近の恵令奈の考えや行動は、昔みたいになって来たらしい。
(恵令奈の体に記憶が浸透し始めてるのか…。本物の恵令奈になる日も近いのかもな…。)
そう言えば、玲奈とお風呂に入るのは初めてかもしれないな。恵令奈は太ってはいないものの、筋力が無いため、お腹や腰付近が少しふっくらしている。対して、妹の玲奈は見事な腹筋をしていて理想の女性の体と言える美しさだ。
「玲奈の体は努力の塊だよ…、本当に偉いね。」
その美しい体を褒めると、
「前のお姉ちゃんとは、そこだけが違うんだよね。体や普段からの動きは一緒なのに…、そこだけが違うの…。」
玲奈は恵令奈が変わってしまった所に首を傾げていた。
「どこが違うの?」前の恵令奈と何が違うのか?聞いてみた。
「前のお姉ちゃんは私の事を褒めてくれなかったよ?いつも正義感で溢れていて、私には、無駄が多いとか、玲奈ちゃんはそんな簡単な事も分からないの?とか、いっつも、叱られていたな…。でも、間違った事は言っていなかったし、腹が立って距離を取っていたけど、会えなくなったら、急に会いたくなるんだ…。」
玲奈が少しだけ…、寂しそうにするので、
「ゴメンね。玲奈、私、玲奈を見るとちゃんとさせないといけない気持ちが先行するみたいで…、どうしても、仲良し姉妹にはなれないの…。本当はね。玲奈ちゃんが大好きなのに…。」
と言いながら、今の気持ちを素直に話すと、
「なるほど…、今のお姉ちゃんは隠し事が出来ないお姉ちゃんなんだね…。良いことも悪いことも、つい、何でも相手に話しちゃう…。素直なお姉ちゃんも私は好きだよ。ありがとう、いつも本音で接してくれて…。」
玲奈は嘘を付けなくなった姉になって、距離が近くなり、嬉しいみたいだ。
恵麻がお風呂で寝そうなので、体を洗うだけで手早く済ませて脱衣所にある着替えに袖を通すと、
「母さんの服を着る事になるなんて…ね。考えもしなかったよ…。」
体型がほぼ同じだったので、下着もピッタリだし、寝間着もサイズが合っていた。
恵麻には何故か捨てずに置いてあった鈴音ちゃんのお古を着せて、リビングに行くと、鈴花姉さんがテーブルや床をキレイにしていた。
「姉さん、先にお風呂に入ってゴメンね。」そう謝ると、
「私はいつも最後だし、恵麻ちゃんが眠そう…、気にしないで。」
姉さんは笑顔で答えてくれた。
俺はため息を付きながら、
「母さんの部屋で寝るのか、変な感じだな…。」
恵令奈への愛が強すぎる母の事が不安だと言うと、
「恵令奈さんはほぼ、母さんの娘だからね…、もちろん、私の妹でもあるのよ?」鈴花姉さんは早くも恵令奈の姿の弟に慣れたようだ。
もう少し、話したかったが、恵麻が立ってるのも限界になりそうなので、
「ほら、恵麻、鈴花姉さんにおやすみの挨拶をしなさい。」と言うと、
その言葉に恵麻は、
「おやすみなさい、ねえさん」と言ったので、
少し違うと思った俺は、
「恵麻のねえさんじゃ無いよ?私の真似をしちゃったのね…。この場合はなんて言うのかな…。」
ねえさん…、伯母さんになるのかな?そんな事を考えていたら、
「良いのよそれで、おばさんと呼ばれて、喜ぶ女はいないわよ。変に細かいわね、恵令奈さんは…。」
真面目な恵令奈はきちんと呼ばせたいが、そこは言い方に気を使えと鈴花姉さんが指摘されてしまった。
(こう言う、言葉使いをちゃんとしたがる所も恵令奈さんの癖みたいだな…。鈴花姉さんにおばさん呼ばわりは禁止だ。)
俺は笑顔で
「これからは姉さんともっと仲良くなれそうだよ、おやすみ、姉さん…。」
そう、姉さんに挨拶をしてリビングをあとにした。
母さんの部屋に行って引いてある布団に寝かせるとすぐに恵麻は眠ってしまった。その姿を見ていた母さんは、
「霊力量が体と合っていない事がすぐに寝ちゃう原因ね…。同じく見合わない能力、二人分の力を持つ恵令奈の側が心地良いのよ。きっと…。」
そう言いながら、恵麻の事を優しい目で見ていた。
恵麻が寝てくれたので、俺は母さんにどこまで知っているのかを聞きたかった。白河社長との関係、俺が霊の仕事を始めて、そして恵令奈の姿になった経緯など、母とこう言うまともな会話をして来なかった俺は、息子として、恵令奈として色々聞きたかったのだ…。
「母さん、話があるんだ…。」俺は無意識にそう、切り出していた。
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