第141話 そろそろ、家に帰りたい

神里家で夕食を食べ終えると恵麻が眠気でウトウトし出したので、

「今日は突然の訪問を対応して、食事まで頂いてありがとうございました。恵麻が眠そうなので、そろそろ失礼しますね…。」


 体は他人のため、帰ろうとすると…、


「えっ?恵令奈…、なんで帰るの?お母さんと一緒に寝るのよね?」

 母さんが止めて来たのだが、一緒に寝るって、おかしくないか?


「ダメだよ!お婆ちゃん!恵令奈ちゃんは私たちの部屋で寝るの!」

 小鈴がそう言うと、妹の鈴音もウンウンと頷いている。


(それもオカシイぞ?小鈴。)


そして…、母さんは、

「光と玲奈ちゃんは客間に二人で泊まりなさい。玲奈ちゃん…、頑張ってね!期待しているわ。」


 そう言って、二人の事を応援している…。


(どんだけ、孫が欲しいんだ…。プレッシャーを与えすぎだよ~。)


義理の母に応援された玲奈は、

「はい!体力には自信があるので、お任せください!義母さま!」

 そう言うと、妹が神里家に泊まる気満々で答えたので…、


「玲奈…、この事はお父さんたちに話したの?もし、何も話していないなら…、お姉ちゃんは玲奈を連れて帰るわよ?」

 玲奈は家族に報告しない癖がある。いつも、事後報告だ。


姉に問い詰められた玲奈は、

「お姉ちゃんの所に行くって、ちゃんと言ったもん。だから、京都に行く事は知っているよ?」


 どうやら…、神里家に行く事は伝えていないらしい…。


その言い訳染みた答えに、

「じゃあ、お姉ちゃんの家に帰ろうか?ここに来る前に言ったよね?家族に嘘を付いて、取り返しの付かない事になったら、どうするつもりなの?」

 神里家の面子がいる中で、妹に説教を始めると、


冷静に見ていた鈴花姉さんが、

「二人は本当に仲が良いのね…。でも、ダメよ。私たちが見ているんだから…。」

 姉さんに他人の家で説教をするのは良くない事を指摘されてしまった。


その指摘に俺は、

「ごめんなさい…。でも、家族に相談しない妹は連れて帰らないといけないので、失礼します。さっ!帰るよ、玲奈。」


 そう言って、妹の手を引こうとすると、鈴花姉さんが俺の耳元で…、


「相変わらず…、お堅いわね。恋愛した事が無いの?恵令奈さん。」


 俺の手を持って、成人なんだから、妹の好きにさせたら…どうなの?と諭された。


その言葉を言われたので、

「玲奈、小鈴たちの部屋で寝るのなら…、泊まってもいいよ。」

 渋々、姪たちの部屋なら…、と言って、お泊まりを認めた。


それを聞いた玲奈が、

「ほんと!やった~。」そう言って、小鈴たちにお泊まりする事を告げると、


 小鈴は恵令奈の方が良さそうだったが、妹の鈴音ちゃんはどっちでも嬉しいみたいだ。


(能力無しで、人に好かれて喜ばれてる…、玲奈の人柄だよ。)


「話も終えたし、そろそろ帰りますね。」

 帰る支度をしようとすると、誰かに後ろからハグされて捕まってしまった。


「ひゃ!」思わず声を上げて振り返ると、母さんが捕まえてきたのだ。


俺を捕まえた母さんは、

「逃がさないよ?恵令奈。一緒にお風呂に入ろうね…。」

 えっ?風呂?何をいってんだよ…、母さんは…。


 この母はずっと、オカシイぞ。恵令奈への愛情がスゴい。魂が自分の息子だからなのかな?本当に実の親みたいな感じになっている。しかも、力が強すぎて、振りほどけないし、困ったぞ。


「玲奈!助けて。」妹に助けを求めると、


「お姉ちゃんは良いな~。義母さんにあんなに好かれて、あっ、魂は実のお母さんだから、親も同然だし、当たり前だよね。」


 玲奈には、じゃれている感じに見えるみたいだ。


「母さん、私は帰るの!泊まりの準備もしてないし!」

 恵麻や自分の着替えが無いことを話すと、


それを聞いた母さんが、

「恵麻には鈴音たちのお古もあるし、恵令奈は私の下着と服で大丈夫よ。」

 と言ってきた。


(確かに母さんの体型は恵令奈そっくりだし、着ている服も少し若い。とても60歳とは思えない、20代体型のプロポーションをしているけど…。問題はそこでは無いよ。)


「あっ、下着は穿かない主義だから…、イラナイのよね。」

 母さんにさっきの恵麻との会話を聞かれていた…。


それを聞いた玲奈が、

「お姉ちゃんは本当に変わらないよね、10代の時から夏はムレるし、下着は穿かないって宣言して、学校でメチャクチャ叱られてたじゃん。あの時はさすがの私も妹として超、恥ずかしかったよ?」


 妹にみんなの前で恵令奈の起こした、ノーパンで制服を着て学校へ行っていた過去をバラされた。


(やったの俺じゃないけど、なんか…、恥ずかしい…。)


「恵令奈ちゃんがやってるなら私もしよっかな…。」

 小鈴が真似をしようかと言った瞬間、


いつも優しいはずの鈴花姉さんが、

「ダメよ真似しちゃ!恵令奈さん!娘が真似するし、今後は絶対禁止よ!」


 年頃の娘を持つ姉にメチャクチャ怒られた。


 結局、姉さんに怒られたあと、サイズがほぼ同じの母さんの下着と寝間着を手渡され、恵麻と玲奈とお風呂に入る事になった…。

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