第139話 恵麻と母さんは知り合い?

 恵令奈の姿で神里の実家に帰った俺は、母さんと母さんに抱えられた恵麻、そして、恵令奈としてここに帰ってきた俺、三人で母さんの部屋に向かった。

部屋に行く途中で、鈴花姉さんに会ったのだが、先に恵令奈と個人的な話がある事を母さんが言った。そして、玲奈たちは恵令奈との話が終わるまで、待って欲しいと母さんは娘に伝えていた。


恵麻を軽々と抱えている母さんを見て、

「母さん、恵麻って重くない?抱えるのを代わるけど…。」

 60歳の体では、腰に負担が掛からないか?を聞くと、


「恵令奈、霊能力が高い女性の特徴は?」母さんに聞かれたので、


「恵令奈以外はみな、身体能力が高いです。」と答えたら、


俺の答えに母さんは、

「不正解よ。恵令奈さんも本当は高いわ…。問題は動かしている、あなたの魂にあるの。さっきも話したけど…、あなたの力は不完全なの。本来は女性に宿る力が男性の魂に宿ったから、不完全なの。この力はね。男性よりも弱い女性が身を守るために身に付けた力で、男性に遺伝すると必ず、不完全な状態で体に宿るの…。」

 と解答の補足をしてくれた。


 それは初めて聞いたぞ?でも…、


「でも母さん、妹の玲奈は昔から恵令奈は運動オンチですぐにバテる女の子って、言っていたよ?」

 妹の玲奈が認めるくらいの運動苦手女性だった事を話すと、


顔をしかめた母さんは、

「こら、光!防衛手段のために、女は自分の手の内を誰にも明かさないモノなの…。恵令奈ちゃんの体、女になったのに、そんな事も分からないの?すべての女性は基本的には暴力に弱い。だからこそ、より鋭いツメは隠すの。女になったんだから、それくらいは実践しなさい!」

 俺は母さんに女の心得がなっていないと叱られてしまった。


(これが、愛華の言っていた、女として成っていないって事なのかな~。バカ正直な女にはなるなって言いたいみたいだ…。)


(女の世界は広いな。下着を身に付けない件も愛華に騙された所だし。色々と経験不足なんだよな…、俺は…。)


母さんに叱られ、へこんでいた俺を見た娘の恵麻が、

「そのくらいにしてやれ…、桜子。恵令奈はこれでも…我が母君だ。」


(ん?桜子って…なんで恵麻が母さんの名前を知っているんだ?)


それを聞いた母さんは、

「まさか、御前様が…、私の孫になるとは思わなかったですけどね。今は私の方が目上だし、あなたのお婆ちゃんですから、それをお忘れなく…。」

 とマウントを取り、言い返すと、


「分かっておる…。我はお主のダメ息子を守るために、ここにおるのだぞ?」

 恵麻がそう言うと、最後に俺へ、


「だから…、下着は身に付けよと申したであろう?我が母君よ。なぜ所以、我の助言を無視するのじゃ…。ったく、お前の教育がなっていないからじゃぞ?桜子。」


 恵麻は俺の母さんに嫌味を言ったあと、いつもの感じに戻り、


「おかあさん、だいすき」そう言いながら、俺に抱き付いてきた。


(いやいやいや、さすがにお母さんが大好きと言われても、騙されないよ?恵麻。母さんが御前って言っていた時点で、恵麻の魂って、かなりの目上の人じゃん。何者なの?恵麻は…。)

 そう言う風に考えていると、


「光。今は恵令奈と言う一人の女性なんだから、もっとしっかりなさい!」

 母さんに思いっきり、背中を叩かれた。


「痛いよ!母さん!俺はか弱い女性の体なんだよ?加減してよ。」

 60代の女性がなんて力をしているんだよ、霊が見える女はみんな怖いよ。


 そう思いながら、へこむ俺に猫を被る恵麻は、


「おかあさん、がんばれ」笑顔でそう言って…、俺に甘えてきた。


(女…、みんな…、怖いよ~。)


 男を上回る、腕力や基礎体力。みんな怪物に見えてきたよ…。この世界で恵令奈として生きる自信が無くなってしまったよ…。



 へこんだ俺が、玲奈たちの所に戻ると、小鈴と鈴音、楽しそうに若者同士、三人で盛り上がっていた。戻ってきた俺と母さんの姿を見た玲奈が、


「あの!私は、上本 玲奈と申します。」と恐縮して自己紹介をすると、


「あら、ご丁寧にどうも…、光の母で神里 桜子と申します。玲奈ちゃんはまだまだ若いし、良い孫を産んで頂戴ね?」


 母さんが自己紹介を受けて、どうも~って手を振りながら、玲奈に子を産んでと言う、義母ならではのプレッシャーを掛けると、


「はい!交際を開始した、初夜から、ずっとがんばっています!来春には必ず、良い子供を産みますので、よろしくお願いします!」


 体育会系の挨拶でハキハキと話していた。


(おい、玲奈…、交際を開始した初夜からお前は何をしているんだ?来春には…って、お前は就職内定を棒に振る気なのか?それとも、デキ婚をして、神里家の一員になるつもりなのか?)


 デキ婚を狙う、妹の猪突猛進ぶりに呆れていた。


跡取りが安泰になりそうな、発言を聞いて安心した、母さんは、

「あとは、恵令奈よね。恵令奈は交際相手はいるの?恵麻の弟は作らないの?」


 母さんはなぜか…、俺にまで、義母プレッシャーを掛けてきた。


(しかも、俺には男の子を所望してきたよ…。)


その勢いに思わず…、

「二つ年下の男の子に交際して欲しいって言われたんですけど、その親にメチャクチャ、反対されてて…。」と勢い余って、真実を話してしまった…。


それを聞いた母さんが、

「今すぐ、その母親を連れて来なさい。うちのかわいい娘を認めないなんて…私が、その女に喝を入れて、間違いを正してあげます。」

 突然、キレながら、物騒な事を言い出した。


すると小鈴が、

「お婆ちゃんは恵令奈ちゃんの大大大ファンだもんね。恵令奈を認めない輩は成敗しないと…。って、いつも言ってたし。」


 母さんは小鈴と鈴音の若い姉妹を越える。度の過ぎたファンらしい。


(おいおいおい、母さん、親バカが過ぎるよ。どんだけ、自分の子供を…、恵令奈の事が好きなんだよ。この母親は娘を認めない奴、全員殺る勢いだ。)


 もしかして、母さん…、恵令奈の魅了する能力に掛かってるの?

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