第138話 母が子を想う気持ち
神里 光の姪、神里 小鈴は子供の頃から、光が大好きだった…。俺はそれが何でなのかも分からないまま、過ごしていたのだが、小鈴には不思議な力があり、人の魂の色が見える人間だったと言う事実を知り、俺はすべてを悟った。光が好きなのでは無くて、光が持つ、魂の輝きが大好きだった事に…。
そして今、小鈴の好意は恵令奈と移っていた。
「恵令奈ちゃんって、テレビよりも可愛いよ~。全部が、好き…。」
そう言って、引っ付いてきて離さない。
(まあ、同性なら、万が一が無いから、安心か…。)
恵令奈になったから、同性で血の繋がりも無い、小鈴と仲良くしていても問題はなくなった。
「小鈴、いつから俺だって気付いていたの?」
気になるので、聞いてみると、
「う~ん、恵令奈ちゃんの姿で叔父さんが、テレビに出てたからビックリしたよ。しかも、前よりも輝いているんだから、その体との相性が良いんだね。」
たとえ、テレビ越しでも、魂の色は誤魔化せないらしい…。
(前よりも輝いている?ああ、たぶん、二人分の霊能力を保持しているからだろうな…。)
「今は、恵令奈だから、叔父さんと呼ぶなよ?」
小鈴に釘を刺したら、
「大丈夫だよ。知っているのは、お婆ちゃんと私だけだから…。」
小鈴は母さんも知っていると答えてくれた。
(えっ?母さんって霊が見えるの?知らなかったけど…。)
「小鈴、母さんはなんで気付いているんだ?」これも聞いてみる。
すると、溜め息を付いた小鈴は、
「叔父さん、恵令奈ちゃんは霊が見える人の見分けも付かないの?お婆ちゃんから、何も聞いていないの?」
自分のお母さんだった人の事を知らない、恵令奈に呆れていた。
母さんは霊の事を秘密にしていた…。理由は簡単だ。霊の察知能力が低い俺を普通の子供として育てようとしていた…、からだ。霊なんて見えないに越したこと無い。少数派だからな。紫音も、星良なんかはこの体質で苦しんだ。きっと…、小鈴も周りに理解者が少なくて苦しんだだろう。
「母さんはこの姿を見て、何か…行っていたか?」
小鈴に女性になった息子について、母さんがどう言っていたのか?反応を聞いた。
「お婆ちゃんは、間違った道に進んでいない事が分かって安心したって言っていたし、私たちみたいな力を持っている、血の繋がっていない恵麻ちゃんを育てている事を話した動画を見て、スゴく嬉しそうだったよ?」
そう言いながら、小鈴は恵麻とじゃれ合っていた。
(良かった。母さんが知ってくれていて…。)
それを見ていた小鈴は俺に、
「それよりも、あの偽者と言うか、あの叔父さんは…、誰?」
神里 光を指して言ってきたので、すべての経緯を彼女に話すと…、
「ふ~ん。まあ、体も死ななくて良かったね。まあ、偽者には興味無いけど…。」彼女は冷たくそう言っていた。
(ねぇ、小鈴、体だけが光だったら、それは偽者になるの?むしろ…、血の繋がりを考えたら、あっちが本物だよ?)
俺はそう言いたかったけど、答えが論争に発展しそうだから、言うのを止めた。
そして、神里家に到着し、玄関に入ると…、
「お母さん、お帰りなさい。」
姉の次女、鈴音ちゃんが出迎えて来たが、光叔父さんの隣に知らない女性が居たため、慌てて…、隠れてしまった…。
(相変わらず、人見知りだよな…。俺も昔は逃げられたよ。)
それを見た姉の小鈴が、
「鈴音!見てよ。恵令奈ちゃんがウチに来てくれたよ~。」
そう言った、姉の隣に恵令奈を見つけると、
「本当だ、恵令奈ちゃん…だ。」
隠れてしまった、鈴音ちゃんは顔を出して恵令奈の側に来て、
「恵令奈ちゃん、カッコいい。」鈴音ちゃんが呟いていた。
(姉の評価は可愛いだったのだが、妹の鈴音ちゃんは恵令奈をカッコいいと思っているのか…。人の見方はそれぞれだよね。)
そのあと、鈴音ちゃんに引っ張られ、連れて行かれそうになったので、
「ちょっと…待ってね、鈴音ちゃん。恵麻!家に入る前は。」
うちの娘に家へ帰った時、最初にする事は何かを聞いたら、
「てあらい、うがいをする!」恵麻はハッキリとそう答えた。
「よろしい!さっ、恵麻、洗面所に行くよ。」
そう言って、俺は恵麻を連れて洗面所に向かって歩いて行った。
恵令奈の教育ママぶりを見た、全員がぽか~んとしていたのだが、
「恵令奈さん…なんでウチの洗面所を知っているのかしら…?」
初めての家の間取りを知っていた恵令奈を見て、鈴花が呟くと、
「お母さん、聞かれたから、私がさっき、教えといた。」と小鈴が答えた。
それを聞いた玲奈が小鈴の耳元で、
「ナイスフォローだよ、小鈴ちゃん。ゴメンね、お姉ちゃんは天然なんだ。」
姉の不手際を謝罪すると、
「玲奈さんとは仲良く出来そうだね。あの叔父さんの事をよろしく!」
そう言って、俺の知らぬ間に霊が見える者同士…、意気投合していた。
そんな会話があった事を知らずに、洗面所で恵麻に手洗いとうがいをさせていると、
「光、随分と良い母親をしているわね…。」
その声を聞いて振り返ると、母さんが後ろに立っていた。
「あっ、母さん…、ただいま…、俺、若い女性になっちゃった。しかも、今はこの子の母親をしているんだ。」
久々の再会で産んでくれた母に、変な挨拶をすると、
「知っているわ…。それから、白河さんの所で働いている事も…。」
母さんにはすべて、お見通しみたいだった。
「ゴメン…黙っていて…、でも、今は後悔していないよ?この子、恵麻のお母さんになれたし、それに…、これも、運命だ…、ってある人が言ってくれたから…。」
俺は母さんにそう話すと、
「お母さんの方こそ…、ゴメンね。光に何も話さなかった。霊の事や母さんの不思議な力の事を…。鈴花にはその力を引き継がなかったのに、光には不完全な形で引き継いでしまった。普通の子供みたいに育ててしまった。こうなったのは、きっと…、あなたが言っている、運命と言うやつ…なのね。」
そう言うと、母さんは血の繋がらない人間になってしまった俺を優しく抱き締めてくれた。
「おばあちゃん、すき」恵麻は優しい母さんの事も気に入ってくれた。
「あらあら、もう一人孫が出来たのね…。嬉しいわ。」
母さんは恵麻を優しく撫でて、抱えて洗面所を出ていった。
(ありがとう、母さん。今の俺と恵麻を家族として迎え入れてくれて…。)
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