第66話 変わっていく職場に重くなる責任
白河家の事務所に戻った私たちは朝に来たとき、日向はまだ挨拶をしていなかった社長が帰宅していたので、未央に大原さんを預け、社長室に向かった。
社長に依頼内容を説明すると、
「すまんな~。朝からおらんくて、依頼内容は分かった。しかし、かなり早い仕事っぷりやな。野々宮さん…やったっけ?」
彼女の迅速な行動力に驚いていた。
「社長さん、これからは私をひなちゃんって呼んでくださいね。」
(そのひなちゃん呼びを人にさせてるけど…二十歳を越えているのに、ちゃん付けって…恥ずかしく無いのかな?この子…。)
「なるほどな~、この無鉄砲な若さが、行動力の早さに繋がるんやな。光くん、ちゃんとこの子の手綱を持っといてな?」
さすがは社長。暴走をきちんと予期しているみたいだ。
「ひなちゃん、今日…依頼の現場を離れたよね?いつも上手く行くとは限らないよ?結果オーライだけじゃ、ダメだよ!」
仕事の力は評価するが、組織人としての振る舞いがダメだと叱っていた。
「ごめんなさい、恵令奈先生。」彼女はしょんぼりしていた。
(かわいく謝る姿はわざとらしくて、女同士だと…ちょっと腹立つな。)
恵令奈は若い男性には甘いけど、同性への教育は向いているみたいだ。
「まあ、年が同じでも、それだけの力関係の差があったら心配あらへんな。」
社長は機動力ある彼女と俺の相性の良さを感じたらしい。
「光くん。相手は若い女性やし、今回は君のやり方に全部まかせるわ、好きにしぃ。」
社長の許可も得られたので、大原さんを家に連れて帰ることにした。
「ワシはしばらく本郷くんに色々な仕事を教えなあかんから、現場の統括は頼んだで、光くん。」
本郷くんが一人前になったら、社長は引退するつもりだろう…。
リビングにいる大原さんと未央はのんびりと話をしていた。
「未央、ありがとう。彼女の相手をしてくれていて。」
「いいのよ。若い子と話をすると若返った気分でいられるから。」
彼女は本郷くんと結婚して若さに嫉妬しなくなり、かなり若い女性が好きになっている。恵令奈の影響も少なからずあるみたいだけど…。
「未央、ひなちゃんを頼んだよ?」後輩の育成を頼むと、
「ひなちゃんはすでに私と同じくらい活躍できるはずです。あとは経験と恵令奈の教育方法だけ…ですよ?」笑顔で俺に話して、
未央は情報収集は日向にまかせて、事務職だけをするらしい…。
(アラフォー手前の未央は高齢出産に備えてのあらゆる事に専念したいんだろう。今は俺も女だから分かるよ、その気持ち…。)
だから、元気な精子が欲しくて20代半ばの若い本郷くんを相手に選んだ。
(未央は恋愛の策士だよ。女性は逞しいな…。)
未央に世話になったお礼を言い、俺たちは家に帰ることにした。
そして家に帰るといつもの、
「恵令奈お姉ちゃん、お帰り~。」紫音が玄関に近寄ってきた。
「恵令奈さん、お邪魔しています。」朱里ちゃんもいた。
今や女子の溜まり場と化した俺の家。ただ、俺は恵令奈の体だからこの子たちにまったく興味が無い。
「ただいま~、紫音ちゃんに朱里ちゃん。元気だった?」
家主の俺よりJKたちに溶け込む、日向のこの、人懐っこさ。
俺は大原さんを自宅に招いたのだが、この若さ集団に圧倒されていた。
「気にしないで、うちではいつもの事だから…。」彼女に説明をした。
ひなちゃんも見た目が幼いからほぼ、女子高生。
「こんばんは、お邪魔します。」大原さんが挨拶する。
大人気だった若手女優の登場だったが、この二人は、
「こんばんは。恵令奈お姉ちゃん、誰?その人。」
世間に疎そうな紫音は当然、知らない。
「こんばんは、私もお客の一人なんで、気にしないで、寛いでください。」
朱里ちゃんも家庭問題の影響もあって彼女を知らなかった。
俺はとっさに日向を呼んで、
「二人は彼女を知らないみたいだし、そのままにしよう。」
察した、彼女は黙って頷いていた。
俺は話し相手を女子高生にまかせて夕食の準備に取りかかった。調理を開始し始めてしばらくしたときに、日向がやって来た。
「恵令奈先生、手伝います。」と言われたが、
「ひなちゃんは大原さんの相手を務めて情報収集をお願い。紫音を呼んできて、手伝わせるから。」(紫音にも家事をさせて覚えさせないと…。)
と指示を出すと、
「カッコいいよ、恵令奈先生。……分かりました、お任せください!」
(命令されるのが好きなのかな…ひなちゃん。)
料理を手伝いにきた、紫音(家事が少し苦手)に料理を教えながら、無事に夕食作りを終えて五人で仲良く食べてあと、朱里ちゃんは家に帰って行った。
そして、仕事関係の四人になり本題に入ることにした。
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