第64話 恵令奈と日向は同い年の親友
俺と日向は京都市北部の岩倉に来ていた。京都市の南北を走る地下鉄、北の終点国際会館駅を出た俺たちは夏も近付いていたのに、涼しさを感じていた。
「もう夏なのにこの辺はまだ、涼しく感じますね。」
日向は涼やかな空気を受けて、軽く伸びて気持ち良さそうにしていた。
(この辺まで来ると建物も少なく穏やかな雰囲気の土地だからな。彼女には新鮮さや心の落ち着きを今、感じているだろう。)
岩倉は静かで夏に来るにはとてもオススメの地域だ。
目的地と少し違う道を進んだ先に、幕末から明治の時代に活躍した「岩倉 具視」が
「ちょっと寄り道しようか?ひなちゃん。」
俺は実相院の床みどりを観に行く事にした。ひなちゃんもきっと京都を好きになる…そんなキッカケが欲しかったからだ。
見頃になっていた景色に、
「感動しました~。また、良いところがあったら教えてください。先生。」
(ひなちゃんの心の癒しになった…みたいだな。)
気持ちを切り替えて目的地に向かう事にした。
その歩いている道中ではやはりこの話になる、
「恵令奈先生はモテるし、大人だし、羨ましいです。私なんか未だに夜一人で歩いていると補導されますから…。」
見た目が未成年者の日向は職質では無くて補導されるらしい…。
(着ている服にも問題があるよ?ひなちゃん…。)
見た目に合っていると言えば聞こえはいいが、見た目が幼めの恵令奈ですらそんなティーンモデルが着ていそうな服は着ないよ?と言いたいが、中身がおじさんの俺に指摘されると彼女は傷付くだろうから、そっとしておこう。
日向がJK探偵で潜入できた一番の要因はこれなんだよ。底抜けの明るさ、心が若いんだ。同じ年下キラーでも、憧れの先生的な恵令奈に対して、華やかさのある友達として魅了するのが日向、なんだ。
「今の恵令奈先生だから、私は仲良くなれた気がします。」
日向がこう話してくれたので、
「確かに恵令奈は若い女の子にまったく興味が無かった。恵令奈になってから、若手女優の見分けがつかなくなったからね。男の時はテレビを見てても若手女優の演技に感心してたのに、恵令奈の今は20代後半くらいの俳優ばかり見てるもん。この人…カッコいいとか、こう言うセリフを言われたら嬉しいな~って思って見てるよ。」
俺はテレビを見てても歩いている時でも、
若い男性を目で追っていた事実を話すと、
「恵令奈先生…モテるのに、かなり男に飢えてますね。今度、一緒に合コンにでも行きます?」
同性友達の少ない恵令奈に、すぐに人と友達になれる日向が言った。
(ひなちゃんは軽すぎだから、男性トラブルが多いんだよ。きっと…。)
でも、今なら紫音も男性と会うのを許してくれるし、合コンに行って、優しい男性ともっと話したいな~。体の恵令奈が寂しがっているから…。
「いっその事、京都にいるし、二人とも年下の大学生彼氏を作りますか?」
今のひなちゃんはかなり積極的になっている。そんなに変態イケメン高校生の慶介くんと別れたのがショックだったのか?それとも、高校生に異常にモテる自分を知って、年下路線に切り替えたのか?
恵令奈より男に飢えて病んでるよ?日向さん…。
現場に行く途中で、一人の若い女性が献花の花に手を合わせる光景が目に入った。
(もしかすると、今回の依頼に関わる案件なのかな?)
「あっ、
「誰?大原…愛奈って?」知り合いなのかな?
「恵令奈先生は本当に女の子に疎いんですね。注目だった、若手の女優ですよ~。でも、今は休養しちゃったって報道で言ってたけど…。」
(知らないよ。恵令奈の視界は基本、若い女性が目に入らないし。)
「触れないであげようよ。休養って事は精神的な療養か、なにかでしょ?」
話し掛けたそうな日向を制止する。
「愛奈ちゃんが出演していた映画の撮影中にスタッフが亡くなったらしいよ。撮影は中断中らしいし、あっ、京都。ここがロケ地だったんだ…。」
どうやら来年に公開予定だった映画があったらしい。そんな事件のニュース、俺は知らないよ?
「報道では他の事件の影響でほぼされなかったけど、ファンの周辺ではざわついていたんだ。だから、事件後にすぐ休養した彼女を私も心配していて…。」
情報量は未央さんみたいに詳しいな。日向の好奇心がそうさせるのか…。
「今度の依頼に関係するかもしれないな。確定では無いしどうしようか…。」
俺が関わるべきか悩んでいたら、
「私、聞いてくるよ。恵令奈先生は依頼人に会ってきてよ?どのみち、私には霊が見えないんだよね?」彼女はそう言うと走り出した。
「あっ、こら、待って!ひなちゃん!」
彼女の行動力は俺の予想を越えていた。そして、制止する前に行ってしまった。(日向は暴走気味か、今後の課題だな…。)
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