恵令奈の周りの人は若すぎる

序章 恵令奈の家はJKの溜まり場

 あれから一ヶ月くらいたった。俺は一人暮らしを再開して、紫音は橘の家に帰って関係を修復できたそうだ。未央はあっという間に本郷くんと結婚した。今は妊活を励んでいるらしい。


 上本 恵令奈 24歳女性として完全に生きる事になった俺の家にはなぜか…。


「恵令奈さん、お帰り~。お邪魔しています。」と紫音の先輩の朱里ちゃん。


「恵令奈パパ、恋人に振られてフリーなんでしょ?デートしようよ。」

 と言ってくる、紫音のクラスメイトの芽愛ちゃん。


「芽愛ちゃん。恵令奈お姉ちゃんの恋愛対象は男性なの。誘わないで。」

 と親友を止めている、娘で妹の紫音。


 俺が家に帰るとほぼ毎日この三人の誰かがやって来るのだ。紫音に合鍵を渡した影響でその三人で勝手に合鍵をシェアし始めたのだ。


どうして俺の家にいるのか聞くと、

「恵令奈お姉ちゃんの家族だからだよ?」と紫音。


「パパ活、年上の癒しが欲しいから。」と芽愛ちゃん。


「家に帰っても一人だし、親友だから。」と朱里ちゃん。


もし、35歳の男に戻ったらどうするつもり?って聞いたら、

「お父さんと結婚する。」と紫音。


「私はパパ活で養ってもらう。」と芽愛ちゃん。


「私は変わらないです。親友のままです。」と朱里ちゃん。


 朱里ちゃんは仕方ないけど、紫音と芽愛ちゃんは家に帰ろうよ?と思っていたら、家のチャイムが鳴った。


「お姉ちゃん、私が出るね。」

 紫音が応対してくれるそうだが、おかしいだろ?俺の家だから…。


「あの、恵令奈先生はいますか?」若い女の子が俺を訪ねてきたらしい。


「恵令奈お姉ちゃ~ん。女子高生っぽい女の子が来たよ~。」紫音が叫んだ。

 俺の知り合いにもうこれ以上、女子高生はいないぞ…。


「あなたが紫音ちゃん?」その子が紫音に向かって言ったのでピンと来た。


 野々宮 朝日さんそうだ、彼女は関東の探偵の…。

 彼女は俺の顔を見た瞬間。


「恵令奈先生~!」泣きながら、思いっきり抱き付いてきた。

 どうしたの?探偵の仕事は?


 それから、泣いている彼女を慰めながら事情を聞いていた。どうやら、相棒の慶介くんと本気で愛し合う関係になり、契約不履行で会社を解雇されたらしい…。この子は恵令奈と同い年の24歳。不倫をしてどん底をみた、不倫仲間。見た目の幼さでJK探偵をしていたのだが、また男でクビになったのか…。


(探偵が相方と本気で恋愛関係になっちゃダメだろう。恵令奈の俺も本郷くんに引っ付いていたから人の事をあまり言えないけど…。)


本物の女子高生の三人に挨拶をしていた。

「野々宮 日向ひなたと言います。潜入していた時は朝日と名乗っていましたが、日向が本当の名前です。」


「本当に24歳なの?どう見ても、10代にしか見えないけど…。」

 芽愛ちゃんは疑っているが、免許証を見て納得していた。


「大人の会話になるから今日は帰ってもらえるかな?」

 俺は朱里ちゃんと芽愛ちゃんには帰ってもらった。


「私は帰らなくていいの?」紫音が聞くので、


「紫音は家族だろ?それに仕事の話をするつもりだった。俺はこの子に未央の代わりを頼もうと思っていたんだ。」

 俺はこの子の能力を買っていた、ただ、霊は見えないからね。


「なんの話ですか?」俺は何も知らない彼女にすべて話すことにした。


しかし彼女はまったく驚かなかった、

「玲奈ちゃんが言っていた事はすべて本当だったんですね。納得しました。恵令奈先生が異常に大人っぽい所とか、勘が鋭い所とか…。」

(玲奈から聞いていたのか。あの妹は嘘つかないからな~。)


「君さえ良ければ、俺と紫音のサポート要員として働かないか?」

 スカウトしてみたら、


「恵令奈先生と働けるなら、喜んで!」彼女は目をキラキラさせていた。

 まっすぐな性格だから、未央との相性も良いだろうな。


「お二人は私をひなちゃんって呼んでくださいね。」

 人間性の柔らかな物腰はさすが、だね。ひなちゃん。


「会社全体が若返っているね。心機一転って感じ。」

 (未央に聞かれたら怒られるぞ、紫音。)


 そうだな、社長は本郷くんに会社を継がせるつもりだろうし、現場は引き続き、俺が中心になるな。でも、紫音のお陰で体力も筋力もそこそこ付いたから、かなりパワーアップしたよ、恵令奈先生は。


 社長に連絡して見ると、一発OKが出たみたいだ。どうやら、

「ひなちゃん、浅野さんに感謝しなよ?推薦してくれてたみたいだし。」

 彼女は前の探偵事務所の社長にも一目置かれていたみたいだ。


「そうだったんだ…。私の頑張りは無駄じゃ無かったんですね!」

 この子は人懐っこく、底抜けに明るい。未央の代わりは勤まるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る