終章 依頼完了報告とこれからの事
俺は社長に依頼完了報告をしていた。
「高齢化と晩婚化がもたらす、今どきの問題ちゅうことやな。」
社長は複雑に絡み合う現代社会を言っていた。
「そうですね。高齢出産で孫との年齢が離れたり、子との年齢が離れたりして、子供が成人を迎える前に親が年を取って動けなくなる。母子家庭なら尚更です。女は40歳を過ぎると体に急激な変化が起きます。体力の衰えが男より顕著なんです。人によっては働くことすら、困難になる人もいます。」
更年期障害の話を俺はしていた。
「そうか、光くんも若い女性の体やもんな。未央を通じて、将来の不安を感じとっとるんやな。」
社長が未央さんの話を出してきたので、
「未央の事のだから一ヶ月くらいで本郷くんと結婚するって言うと思います。だから、社長。義理の娘のワガママを許して認めてやって下さい。」
俺は未央さんの事を持ち出した。
「ワシはかまへん。未央に苦労させたんは亡くなったワシの息子や。全力で応援するわ、でも、光くんはエエんか?」
社長は俺の心配をしてくる。でも俺は、
「未央はもう一度、好きな男性との子供が欲しいんです。女になった俺は未央との子供を作れません。それに、彼女の年齢を考えると、早くしないと彼女は子供の産めない体に変化してしまいます。」
未央の願いは女性の体である俺でも娘の紫音でも叶えられない。
「ほんまに未央の事が好きなんやな、光くんは。」
核心を突かれたので、素直に、
「好きだから、身を引くんです。それから今月中にこの家を出ます。いずれ、紫音も本当の両親の家に帰ると思います。」
紫音もあるべき姿に戻るべきだと話をした。
「そうか、さみしなるな。仕事はどないするんや?」
この仕事を続けるかを聞かれたので、
「俺がいないとこの会社は潰れるでしょ?大丈夫ですよ。俺は続けますし、当然、紫音も続けていくと思います。」
俺と紫音にしか出来ない貴重な才能だからな。
「未央の代わりができる子も探さないとあかんな~。いずれ妊娠、出産に育児が待ってるんやから、尚更、今のうちに育てとかなあかんわ。」
新体制になっていくんだなこの会社も…。
「当てはあります。本人が乗ってくれるかは別ですけど…。」
俺はあの人しかいないと思っていた。
「その件は互いに候補を探しとこうか。」
社長に取っても死活問題なのだろう。
そのあと、俺は未央と紫音の三人で話をしていた、
「未央。俺は数日中に神里 光の時に住んでいた、自分の家に帰るよ。紫音はどうする?」俺は紫音にも変わるときだと話した。
「私も家を出るよ。本当の両親と向き合う時が来たんだよ。でも、私たちは離れていても、親子だよ。」
紫音も現実と向き合う覚悟を決めたようだ。
「全部、私のワガママだよね、勝手に紫音を娘にして束縛して…。」
未央さんは自分を責めていたので、
「でも、その思いきった行動があったから、俺と未央と紫音は親子三人になれたんだよ?この仕事を通じて、家族を越えた絆ができた。」
俺は笑顔で二人に微笑むと、
「そうだよ、お母さん。お父さんが繋いでくれた、絆を守るために今は離れて暮らすんだよ?仕事を通じて、また繋がれるだよ、私たちは。」
紫音も笑顔で答えてくれた。
「ありがとう、二人とも。私もがんばるね。」
未央さんも笑顔になってくれた。
もうこの二人は大丈夫だろう。この三人の中で一番の問題は恵令奈として生きていかないといけない俺だ。上本家の両親や玲奈のためにも、彼氏を作らないとダメだよな~。
「なあ、紫音。」俺が声を掛けると、
「なぁに、恵令奈お姉ちゃん。」
…早速、お父さんとは呼ばないのか、変わるときなんだな、紫音よ。
「護身術を教えてくれ。」こう話すと、俺の願いを汲んだ紫音は、
「そうだね。これが知れると変態さんが動くよね。あれには絶対、恵令奈お姉ちゃんは渡さない。鍛えてあげるよ。お姉ちゃん。」
そう、我が家の敵、チャラ男の岡崎さんをどうにかしないといけないのだ。
俺は完全に24歳の恵令奈になったとしても、あの男を好きになる事は無いだろう。未央さん、紫音、恵令奈の三人はああいう自意識過剰タイプの男性が大嫌いなんだ。
「やっぱり私たちは親子ですね。嫌いな男性のタイプは一致しているんですから…。」未央さんも恵令奈(俺)を変態から守ってくれるそうだ。
それから、俺と紫音は白河家を出て、俺は元々いた家に、紫音は橘の本当の両親の元へ帰って行った。やがて京都霊能社は新体制になり活動していった。
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