第9話 変身した姿と調査結果を報告

いつもの依頼の進捗状況報告を社長に行うと、


「えらいケッタイな事になってしもとるな。」と社長が言った。


「紫音の霊を六道に導く、旅先案内の力は知っとったけど、光くんの霊体を取り入れて実体化する力は聞いた事が無いからな。」

 社長はそう話したが、少し能力が違う気もする…。


「紫音の方のデメリットは無さそうですが、俺の力は乱用しない方が良さそうです。自分が霊体に取り込まれて、自我を失いそうなので。」

 とにかく、生まれてからずっと、女性であるような感覚なのだ…。


「そうか。霊体の本人になってまう、ちゅう事か。」

 社長が言っている事は恐らく…正しい…。


「今回は亡くなって直前の記憶を失った弱い霊体の女性でした。力が弱い霊体みたいですが、怨念や未練が強い霊体に使うと俺の自我は無くなりそうです。」

 すでに上本さんの感覚に変化しているし、一番の問題は、


「それに事件を解決しても戻れるか分からないのが一番の不安な点です。」

 このままだった時にこれから、どうするのか…だ。


「一生、そのままの可能性があるっちゅう事か…。」

 社長も気難しい顔をしていた…。


「このままなら戸籍も彼女の物を使わないといけなくなります。それに遺体が見つかると二重に存在する事になるのでもっとヤバい状態になるんです。」

 俺は何もかもを失う可能性があるのだ。


懸念点をまだ続ける、

「さらに長いことその姿でいるとたぶん、元の姿と記憶を忘れるんです。」

(それくらい危ない状態なんだ。今の俺は。)


「……最悪の場合は上に相談するわ」と社長が言って、話を終えた。

(上という存在は気になるが、俺の体はそれどころでは無いのだ。)



夜に未央さんにも進捗状況を報告することにした。


「光さん。女性の姿での活動はどうでしたか?」未央さんが聞いてきた。


「問題はほぼ無いんだ。霊体が覚えているらしく、しぐさや歩く歩幅、呼吸、嗜好、生活活動まで、24歳のOLの上本 恵令奈なんだ。かなり自分でも恐いよ。ほぼすべてが女性っぽくなっているんだから。」

 違和感が無いし、別に困ってはいないのだが、


「最悪の場合、明日には記憶が書き変わっているかもしれない。だから、強く自我を保っているよ。」

 これだけを俺は恐れている。


「光さん。辛そうですね。私に出来ることは無いですか?」

 彼女は優しく寄り添ってくれるし、やっぱり…俺は彼女のそこが好きだ。


未央さんに聞かれた俺は、

「光の俺の事を強く思って欲しい。」と答えた。


「夫を思う妻の強い思いが必要なんですね。頑張ります。」

 そう言うと、そっと俺を抱き締めた。


しばらく経ったあと未央さんは、

「やっぱり、そんな女の子の体じゃあ、私の欲求は満足できません。」


「何としてでも、元に戻ってもらいます。」と言った。


「ありがとう。未央。」

 抱き締められた俺に性的な感情の高ぶりは起きなかったが、未央さんにキスして強引に男の感情を思い起こした。

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